第70回「グッドデザイン賞」を審査する新体制と、2026年度の活動概要も発表
2026年3月12日
公益財団法人日本デザイン振興会
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公益財団法人日本デザイン振興会(所在地:東京都港区、会長:内藤廣)は、「2026年度グッドデザイン賞 新正副審査委員長発表会」を開催し、新たな正副審査委員長と2026年度の活動概要を発表しました。審査委員長には、株式会社中川政七商店 元会長・中川 淳 氏が就任しました。
2026年度のグッドデザイン賞は、1957年の創設から数えて第70回の節目にあたります。近年のグッドデザイン賞では、成果物だけでなく、それが生まれるまでの背景やプロセス、さらには社会への広がりまでを含めて評価することで、デザインが担う役割を拡張してきました。
2025年度においては「はじめの一歩から ひろがるデザイン」をテーマに掲げ、個の意思や熱量から始まった取り組みが、組織や社会へと実装されていく力に光を当ててきました。こうした流れを継承しながら、2026年度は新体制による事業運営を行っていきます。
■2026年度グッドデザイン賞 新正副審査委員長選出の背景
近年、デザインがより一層社会のあらゆる領域に浸透し、自らの活動や取り組みが「デザイン」であることが認識されてきています。デザインと経済活動・社会活動の併せ持った視点を持つ中川 淳氏を審査委員長に、各領域における専門分野のプロフェッショナルである川上 典李子氏、鈴木 元氏、原田 祐馬氏の3名が審査副委員長に就任いたします。
グッドデザイン賞70回に向け、これまでになかった視点やデザインの可能性を広げる活動にご期待ください。
■2026年度グッドデザイン賞 審査委員(敬称略)
審査委員長
中川 淳(VISION to STRUCTURE 代表)
審査副委員長
川上 典李子(ジャーナリスト | 21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクター)
鈴木 元(プロダクトデザイナー | GEN SUZUKI STUDIO 代表)
原田 祐馬(デザイナー | UMA/design farm 代表)
<審査委員長 就任コメント>
2026 年度グッドデザイン賞 審査委員長 中川 淳
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-ビジョンに資するデザイン-
グッドデザイン賞審査委員長の任を受けるにあたり、改めて「いいデザインとは何か?」について考えてみました。私なりに整理すると、まず二つの要件が挙げられると思います。
一つ目の要件は、本能的に美しいと感じるかどうか。人が直感的に惹かれる造形や佇まい、使い心地。それは単なる装飾ではなく、機能や合理性を含んだ「美しさ」である必要があります。
二つ目の要件は、社会性があるかどうか。環境への配慮にとどまらず、人権、労働、物流、産業構造など、そのデザインが社会とどのように関わっているのか。デザインは常に社会の一部であり、社会への態度を内包しています。
ここまでが、現時点で共有されている「いいデザイン」の主な要件ではないでしょうか。しかし私は、この二つだけでは不十分なのではないかと感じています。
三つ目の要件は、ビジョンに資するものであるかどうか。それは企業や組織の存在意義と、具体的な事業活動をつなぐ力のことです。前提となるビジョンが異なれば、あるべきデザインは違うのではないか。デザインはビジョン・世界観・プロダクトを整合性の取れた形につなぎ合わせるものであり、ユーザーに対して深い理解を促すコミュニケーションの役割をも担っています。
この視点が、これまでのデザイン評価において十分に共有されてこなかったのではないでしょうか。そしてこの問題は、デザインだけの力では解決できません。そもそもビジネスサイドが明確かつ解像度の高いビジョンを描いていなければなりません。
グッドデザイン賞が、デザインに関わる人だけの場ではなく、ビジネスサイドとクリエイティブサイドが対話し、協働する場となれるよう、力を尽くしていきたいと思います。
応募される皆さまもグッドデザイン賞という機会を使って、自社のあるべき姿=ビジョンを再考するきっかけにしていただけると嬉しいです。
<経歴>
1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、2000年に富士通株式会社へ入社。2002年に株式会社中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長、2018年に会長に就任。「日本の工芸を元気にする!」を掲げ、工芸業界初のSPA業態を確立するとともに、経営コンサルティング・教育事業を展開。2025年に会長を退任。現在は、志ある企業の共同体PARaDEや、ビジョンを起点とした経営コンサルティングを行うVISION to STRUCTUREの代表として、世の中に「いい会社」を増やす活動に取り組んでいる。「ポーター賞」「日本イノベーター大賞優秀賞」などを受賞。「カンブリア宮殿」「SWITCH」など、テレビをはじめとする多くのメディアに出演。経営・デザイン分野での講演や執筆活動を行い、著書に『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP社)、『ビジョンとともに働くということ』(祥伝社)などがある。
<審査副委員長 就任コメント>
2026 年度グッドデザイン賞 審査副委員長 川上 典李子
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- 探究とともにかたちづくる -
私たちが生きる現在は、過去と未来とをつなぐ連続のなかにあります。これまでに重ねられてきた多くの探究のうえで、私たちはいかにしてさらなる創造の営みを継続していけるのでしょうか。デザインが担う役割がより広く、深くなっている現在、この先に向けた提案もまた丁寧かつ積極的に行われていくことの重要性を改めて感じています。
近年、さまざまな経験の蓄積によって課題に対する解決への道筋が速やかに示される場面も増えてきました。しかし、人や社会のための創造的な思考や活動とは、固定された枠組みに容易に収まるものではなく、即時的な解を求めにくい状況のなかにこそ見落としてはならない示唆が潜んでいることを感じます。だからこそ、各社、各人が自らの立ち位置や専門性を強みとして身近な対象からより広い状況へと洞察を広げていく、その力強く継続的な歩みによってもたらされる環境や事業のあり方にも注目したいと考えています。
また、個々の状況や異なる領域を柔軟に結びつけることもデザインが担う重要な役割の一つです。プロジェクトに関わる多くの関係者が対話を重ね、私たちを取りまく環境をいかに統合的な視点でかたちづくっていけるのか。さらには、そうした試みを支える背景や過程を広く伝えていく情熱と勇気も、忘れてはなりません。
社会のこの先に向けたビジョンをはじめ、想いを推し進める論理的な思考と現代の生活者としての感性、そして事業としての視点を併せもった躍動的な活動を通じて、デザインの幅広い可能性が浮かびあがることを期待しています。本年度のグッドデザイン賞を通じて、多くの皆さんと出会えることを願っています。
<経歴>
1986年に株式会社アクシス入社、「AXIS」編集室を経て1994年独立。
2026 年度グッドデザイン賞 審査副委員長 鈴木 元
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-美しいかたち-
デザインは、混沌とした社会に「美しいかたち」をつくる営みです。ここでいう「かたち」とは、もちろん物理的な形に限ったものではありません。地域のかたち、事業のかたち、暮らしのかたちなど、分散していた要素を結び、輪郭を与え、私たちが手触りをもって実感できる一つの確かな秩序として立ち上げられた状態のことです。
いま、社会が直面している課題の多くは、皮肉にも合理性や効率性といった、個々の立場での正しさを信じて進めてきた、局所最適の積み重ねの結果でもあります。正しさは強力な基準ですが、「合成の誤謬」として知られるように、個別の正しさを足し合わせても、全体としてはむしろ問題を引き起こすことが多くあります。環境問題や社会の分断も、誰かの悪意によるものではなく、善意ある人々の正しい選択の集積が生み出していることもまた現実なのです。
一方で美しさとは、要素同士の関係性が整い、全体として無理なく機能している状態に宿る性質です。色や形の均衡だけでなく、個人の情熱や組織のビジョンと事業性、現場の切実さと地球規模の課題といった、相反する価値を引き受け、たとえ不完全な部分があっても、なお破綻せずに均衡を保つ、その全体性や調和に、人は本能的に美しさを感じるのではないでしょうか。
数値で測れる正しさにとどまらず、計測を超えた先にある調和の質、つまり美しさに向き合うことが、いま私たちには求められています。美しさと聞くと、感覚的なものだと反発を覚えるかもしれません。しかし「美しいかたち」をつくろうとする姿勢は、単なる審美的な志向ではなく、矛盾を包み込みながら、社会の中にしなやかな秩序を丁寧に編み上げようとする態度そのものです。それはモノのデザインにも、コトのデザインにも共通しています。バラバラになった正しさを、再び統合する知性として、デザインの力が問われているのです。分野を超えて、手触りのある「美しいかたち」に出会えることを心から期待しています。
<経歴>
英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、デザインプロダクツ科修了。パナソニック株式会社、
IDEOロンドン、ボストンオフィスを経て GEN SUZUKI STUDIOを設立。スタジオを自宅に併設し、生活とデザインを隔てないアプローチで、Herman Miller、無印良品、Omron など国内外の企業と協業している。米IDEA賞金賞、GERMAN DESIGN AWARD金賞、クーパーヒューイット国立デザイン美術館永久収蔵など受賞多数。金沢美術工芸大学客員教授、多摩美術大学、武蔵野美術大学非常勤講師。2023英D&AD 賞プロダクトデザイン部門審査委員長。
2026 年度グッドデザイン賞 審査副委員長 原田 祐馬
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-想像力を灯すデザイン-
静かに存在してきた、もの。ゆっくりと人を繋いできた、しくみ。それらは分けて語ることができるのでしょうか。私たちの社会を見渡すと、ものとしくみは絡み合いながら「デザイン」されています。ものがあるからしくみが生まれ、しくみがあるから、ものが生まれているとも言えるでしょう。そして、そのデザインが立ち上がるまでには、仕事に携わる人たちや企業が、そのものに触れる誰かを想い、多くの時間をかけてきました。積み重ねた試行錯誤が、私たちの社会生活を静かに支えてきたのだと思います。
これまでグッドデザイン賞は、70年にわたり、日本で暮らす人々の経済活動とともに歩み、応募者の皆さまとデザインとはどのようなものなのかを考え、伝えてきました。しかし、急速に変化する社会の中で、見落としているものや、見えなくなっているものはないでしょうか。私は、見過ごされがちな小さな配慮から生まれたものや、静かに人をつなぐしくみにも目を向けたいと考えています。近年、大賞を受賞したプロジェクトには、その本質である「誰かのために」という視点が、より鮮明に現れているように感じています。分断や不安が広がる時代だからこそ、目の前の隣人だけでなく、まだ見ぬ誰かのことを想像することが大切です。これは、デザインという仕事に関わる人たちの職能とも言えます。
そのうえで、これからのグッドデザイン賞の役割は、いまデザインができること、できないことを立ち止まって見渡し、応募者同士のつながりを育む場となること、そして互いを結び直す橋であることだと考えています。そうした新しい挑戦を重ねながら、これからの社会を見つめ、すでに芽吹きはじめている新しい経済活動の小さな兆しと出会えることを期待しています。人と人のあいだに、新しい想像力を灯すデザインを、審査委員一同、お待ちしています。
<経歴>
1979年大阪生まれ。京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻卒業。UMA/design farm代表。名古屋芸術大学特別客員教授。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「ともに考え、ともにつくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。著書に『One Day Esquisse:考える「視点」がみつかるデザインの教室』。
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(掲載写真はすべて有本怜生撮影)
■グッドデザイン賞70周年に向けた活動について
グッドデザイン賞は、2027年度には70 周年を迎えます。近年デザインの領域が拡⼤し、デザインに関わる⼈々も多様化しています。グッドデザイン賞事業のさまざまな側⾯で「70 周年」のコミュニケーションを2026年度から開始します。グッドデザイン賞の場を通じて70年間共に歩んできたステークホルダーの皆様に感謝をお伝えするとともに、未来に向けて、グッドデザイン賞が目指すべきことを企画や活動を通じて発信していきます。
・70周年ロゴ・タグラインの制定
(グラフィックデザイン:株式会社6D-K 木住野 彰悟、コピー:株式会社上田家 小山 佳奈)
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■2026年度グッドデザイン賞
4月1日(水)13:00~5月︎21日(木)13:00の期間にグッドデザイン賞のエントリーサイトからご応募いただけます。応募対象は、2027年3月31日(水)までにユーザーが購入または利用できる「もの」「こと」で、2026年10月15日(木)の受賞発表日に公表できるものとなります。
<参考資料>
グッドデザイン賞について
グッドデザイン賞は1957年から続く日本を代表する世界的なデザイン賞として、シンボルマークの「G マーク」を通じて広く知られています。グッドデザイン賞を受賞したデザインは、良いデザインとして多くのユーザーやプロフェッショナルたちから信頼されるとともに、受賞者のビジネスチャンスを広げ、イメージやブランド力を高めることにも貢献しています。
本件に関するお問合わせ先
公益財団法人日本デザイン振興会 広報窓口
E-mail:press@jidp.or.jp
関連リンク
グッドデザイン賞サイト
https://www.g-mark.org/
日本デザイン振興会(JDP)
https://www.jidp.or.jp/