薄膜リチウムナイオベート(TFLN)ウェハーとは、リチウムナイオベート(LiNbO?)のナノスケール薄膜を酸化シリコンなどの絶縁体層上に接合し、その下にシリコン基板を備えたエンジニアリング基板である。TFLNはバルクリチウムナイオベートが持つ優れた光学的・電気光学的・非線形光学特性を維持しながらも、スケーラビリティや集積性、性能の均一性において大きな利点を持つことから、フォトニックデバイスの基盤材料として注目を集めている。
TFLNウェハーは、高速光変調器(位相・強度)、周波数変換器、量子フォトニクス素子など、次世代の光学部品製造の根幹を成す。従来のバルクLiNbO?基板と比較して、TFLNは低損失な光伝搬、光の高密度閉じ込め、およびフォトニック集積回路(PIC)との高い互換性を実現する。また、プロセス制御性の高さも量産向きの特長である。
TFLNウェハー市場は現在も発展途上にあり、世界的には少数のサプライヤーによって4インチ、6インチ、そして今後8インチの製品が供給されている。これらは、光通信、LiDAR、量子技術といった先端分野での研究開発および商業応用に向けて需要が高まっており、今後の成長が期待される。
なぜTFLNウエハーがフォトニクスの未来を変えるのか?
TFLNウエハー(薄膜リチウムナイオベート)は、光通信、LiDAR、量子コンピューティングといった先端分野において、これまでの材料では実現が難しかった性能と集積性を両立する、革新的な基板材料である。バルクのリチウムナイオベートが持つ非線形光学性や電気光学性といった特性はそのままに、薄膜化によって低損失伝送やナノスケールでの集積を可能にするTFLNは、既に次世代フォトニックデバイスの基盤として世界の研究開発現場で急速に採用が進んでいる。特に、シリコンフォトニクスとのハイブリッド化が現実味を帯びてきたことで、これまで分断されていた光・電気の世界が一つの集積基板上で融合しようとしている。
この技術の進化を加速しているのは、単なる材料革新ではなく、情報社会の基盤を担う光技術への構造的なシフトである。データセンターの帯域拡張、光通信の低遅延化、さらには量子情報処理に至るまで、あらゆる次世代インフラに共通して求められるのは、高速・低損失・高信頼性の光処理である。TFLNウエハーはこのニーズを最前線で捉え、その製造工程も従来に比べてスケーラブルかつCMOSプロセスとの親和性を持つため、サプライチェーンの構築にも好影響をもたらしている。欧米や東アジアでは主要プレイヤーがすでに4インチ・6インチに加え、8インチ対応のロードマップを発表しており、製造装置・評価系との連携強化も進む。
サプライヤーが限られる市場、そのことが意味するビジネスチャンスとは?
TFLN市場はまだ黎明期にあり、全世界で品質安定かつ量産対応できるサプライヤーは非常に限られている。これは、技術的に高難度なエピタキシャル成長や接合プロセス、加工技術が必要とされるためであり、一方でこの技術参入障壁の高さこそが、先行企業にとっては強力な競争優位となっている。特に特定波長帯における低損失設計や、量子アプリケーションに求められる位相制御の精密性においては、材料の均質性と欠陥密度の低さが要求されるため、製造技術そのものがビジネス価値に直結する。
さらに注目すべきは、ユーザー企業の要求が「研究用途」から「量産用途」へと急速に移行していることである。つまり、少量サンプル供給から安定供給へのシフトが始まっており、これに応えるには単にウエハーを製造するだけではなく、製造プロセス全体の垂直統合や、デバイスメーカーとの協業が鍵となる。市場が成長を始めた今こそ、材料企業と光電子機器メーカーが戦略的連携を図り、標準化と量産性を武器にグローバル市場を席巻する絶好のタイミングである。
LP Information調査チームの最新レポートである「グローバルTFLNウエハー市場の成長2025-2031」によると、2025年から2031年の予測期間中のCAGRが40.5%で、2031年までにグローバルTFLNウエハー市場規模は13.15億米ドルに達すると予測されている。
図. TFLNウエハー世界総市場規模
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図. 世界のTFLNウエハー市場におけるトップ7企業のランキングと市場シェア(2024年の調査データに基づく;最新のデータは、当社の最新調査データに基づいている)
LP Informationのトップ企業研究センターによると、TFLNウエハーの世界的な主要製造業者には、Jinan Jingzheng Electronics、Shanghai Novel Si Integration Technology、IOPTEEなどが含まれている。2024年、世界のトップ3企業は売上の観点から約92.0%の市場シェアを持っていた。
光の集積が進めば進むほど、TFLNの存在感は増していく
光集積回路(PIC)がCMOSのように高集積・大量生産のフェーズに入るにつれ、そこで使われる材料にもかつてないレベルの性能均一性と加工精度が求められるようになる。TFLNウエハーは、その結晶特性・加工性・成膜精度において、現在のPIC技術の進化を下支えしており、特にシリコンフォトニクスとの異種材料接合による複合機能化の実現には不可欠である。デバイスはもはや単機能では生き残れず、通信・計測・センシング・量子機能が一体化されたハイブリッド光集積へと移行していく。
量子技術時代を見据えた中長期成長軸としてのポジションが確立しつつある
量子通信や量子センシングといった応用分野では、ナノ秒単位の時間制御や高精度な位相変調が不可欠であり、その性能を実現する材料としてTFLNの評価が高まっている。とりわけ、TFLNの光非線形性を活かした周波数変換デバイスや、量子ドットとの組み合わせによる量子光源の開発が進行中であり、次世代通信網における基幹部品としての存在感はさらに強まっていく。また、大学や研究機関に加え、国策として量子分野に巨額投資を行う国が増えている点も、長期的な需要を後押ししている。
グローバル連携と差別化技術が企業価値の中核となる時代へ
TFLN業界のリーダー企業に求められるのは、単なる材料供給者としてではなく、顧客の製品開発サイクルを共に支える「共創パートナー」への進化である。高周波対応設計、表面粗さ制御、接合プロセス、検査技術までを含めたソリューションを包括的に提供することで、顧客の開発スピードと信頼性を高め、結果的に市場導入期間を大幅に短縮することができる。こうした“材料×プロセス×アプリケーション”の連携こそが、TFLN分野における企業競争力の源泉であり、今後10年の成長を左右する最重要ファクターとなる。
レポート概要
タイプ別セグメント:
4 Inches
6 Inches
Others
用途別セグメント:
Surface Acoustic Wave
Electro-Optical
Other
会社概要
LP Informationは、専門的な市場調査レポートの出版社です。高品質の市場調査レポートを提供することで、意思決定者が十分な情報を得た上で意思決定を行い、戦略的な行動を取ることを支援し、新製品市場の開拓という研究成果を達成することに注力しています。何百もの技術を網羅する膨大なレポートデータベースにより、産業市場調査、産業チェーン分析、市場規模分析、業界動向調査、政策分析、技術調査など、さまざまな調査業務のご依頼に対応可能です。
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