イリジウムとは、白金族元素の一種であり、周期表における原子番号77の金属元素である。自然界においては極めて稀少で、通常は白金鉱石やニッケル鉱の副産物として回収される。
その最大の特徴は、金属元素の中でも最も高い耐腐食性と高温耐性を有している点にある。空気中や酸、さらには王水にすら侵されにくい特性を持ち、極限環境下でも安定した化学的・機械的性質を保つ。これにより、電極材料、高温合金、航空宇宙用途、科学機器、医療機器、触媒担体など幅広い産業分野で用いられている。また、近年では燃料電池や水電解装置などの次世代エネルギー技術の中核素材としても期待されており、エネルギー転換や脱炭素社会への貢献という観点から注目度が急速に高まっている。

イリジウム業界の特徴として第一に挙げられるのは、その機能的独自性と供給制約の両立である。イリジウムは、物性面で代替困難な性能を有しているがゆえに、特定の先端技術分野では不可欠な素材とされている。とりわけ高温・高腐食環境下での安定性は他の金属に比類なく、産業機器の高寿命化や高効率化を支える要素となっている。一方で、その資源分布は地理的に偏在し、採掘・精製には高度な技術とコストが伴うため、供給量が極めて限定的である。したがって、価格変動リスクや資源ナショナリズムの影響を受けやすく、長期安定供給の確保が業界全体の戦略課題となっている。また、再資源化技術の進展や代替材料の研究開発も同時に進められており、技術依存とリスクマネジメントの間でバランスが求められる市場環境にある。

市場成長を牽引する主要因として、まずグリーンテクノロジーの進展が挙げられる。特に水素経済に関連する技術、すなわち燃料電池車(FCV)やグリーン水素製造における電解セルの触媒として、イリジウムの高い電気化学的安定性が評価されている。
また、排ガス浄化や二酸化炭素回収(CCUS)技術にも関連しており、環境負荷低減を求める政策的圧力と産業界の技術革新ニーズが相まって、用途の多様化が進んでいる。さらに、航空宇宙、電子部品、医療デバイスなど、超精密かつ信頼性を要求される分野においても、イリジウムの導入が着実に広がっている。こうした多面的需要は、単なる貴金属資源としての価値を超え、機能性素材としてのポジショニングを確立する原動力となっている。

LP Information調査チームの最新レポートである「グローバルイリジウム市場の成長2025-2031」によると、2025年から2031年の予測期間中のCAGRが1.3%で、2031年までにグローバルイリジウム市場規模は17.2億米ドルに達すると予測されている。

図. イリジウム世界総市場規模

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図. 世界のイリジウム市場におけるトップ8企業のランキングと市場シェア(2024年の調査データに基づく;最新のデータは、当社の最新調査データに基づいている)

LP Informationのトップ企業研究センターによると、イリジウムの世界的な主要製造業者には、Anglo American、Impala Platinum Holdings Limited、Sibanye-Stillwaterなどが含まれている。2024年、世界のトップ3企業は売上の観点から約65.0%の市場シェアを持っていた。

イリジウム業界の将来展望は、高機能材料としての価値維持とサステナビリティとの両立にかかっている。今後の技術革新では、ナノ構造化、複合化、薄膜化といった材料工学の進展と、イリジウムの特性を掛け合わせることで、従来にはなかった応用領域の開拓が期待される。と同時に、資源の有限性と高価格性を背景に、リサイクル率の向上、精製プロセスの省エネルギー化、代替技術との競合回避といった「持続可能な利用体制」の構築が求められる。グローバルな資源戦略や環境政策とも密接に結びつくため、単なる素材産業ではなく、戦略的素材産業としての視点が必要である。今後は技術、供給、安全保障、環境の四軸で動向を見極めることが、企業および投資家にとって不可欠な姿勢となるであろう。

レポート概要
タイプ別セグメント:
Mineral Source
Recycling Source
用途別セグメント:
Catalyst
Chemical Manufacturing
Electricals and Electronics
Jewellery
Others

会社概要
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