強化熱可塑性パイプ(RTP)および熱可塑性複合パイプ(TCP)は、石油・ガス、注入ライン、海底パイプラインなどの分野で注目される新世代の複合管材である。名称は似ているが、構造および用途において明確な違いが存在する。
RTPは、熱可塑性プラスチックの内管、補強層(通常はアラミド繊維、鋼線またはガラス繊維)、および外側の熱可塑性樹脂シースで構成される柔軟性の高い複合パイプである。金属管の強度とプラスチック管の柔軟性を兼ね備え、中~高圧の流体輸送ラインに広く使用されている。
一方、TCPは連続繊維強化熱可塑性複合材料を全体的に巻き付けて成形されたオールプラスチック構造のパイプである。通常は金属を含まず、より軽量であることが特徴である。熱融着による接合が可能であり、耐老化性、強度、施工性に優れるなど、現場での利便性も高い。
柔軟性と耐久性を両立した次世代パイプがインフラを変える
RTP(強化熱可塑性パイプ)およびTCP(熱可塑性複合パイプ)は、従来の金属管や硬質プラスチック管が抱える課題を解決する次世代の複合パイプとして注目を集めている。RTPは、内外層に熱可塑性樹脂を使用し、補強材にはアラミド繊維や鋼線、ガラス繊維などを用いることで、中高圧環境にも対応する高い機械的強度を確保する。一方、TCPは連続繊維強化樹脂による一体構造を持ち、金属を使用しない軽量かつ高耐久なパイプとして、海底パイプラインや油井ライザーに最適である。両者に共通するのは、施工性・柔軟性・耐薬品性などの性能を高次元で融合している点にあり、エネルギー輸送インフラの最適解として脚光を浴びている。
成長を加速する用途拡大と地域需要の広がり
市場は現在、エネルギー分野から上下水道、化学プラント、海洋施設まで、幅広い産業でTCPおよびRTPの導入が進展している。LP Informationが2025年に公開した最新調査によると、特に中東、アジア太平洋、北米での新規導管敷設および老朽インフラの更新需要により、市場規模の拡大が顕著である。また、洋上風力発電やCCS(炭素回収・貯留)など、新興インフラとの相性の良さも後押ししており、複雑な環境下における安定したパフォーマンスが採用の決め手となっている。
技術革新と政策支援が市場成長の原動力に
TCPとRTPの市場拡大を支えるのは、素材工学の進展と環境対応ニーズの高まりである。熱可塑性樹脂の改質や高強度連続繊維の加工技術は、かつてないほどの軽量・高圧対応を可能にし、従来は不可能とされていた用途領域にも進出しつつある。加えて、カーボンニュートラル政策に沿った非金属構造への転換が、官民双方からの導入促進を後押ししている。特に欧州や日本では、脱鉛・非腐食対応を含むインフラ補修支援制度が整備され、RTP/TCPの普及に有利な市場環境が形成されつつある。持続可能性と経済合理性の両立という時代の要請が、これらパイプ技術を次の標準へと押し上げている。
LP Information調査チームの最新レポートである「グローバルTCPおよびRTPパイプ市場の成長2025-2031」(https://www.lpinformation.jp/reports/137280/tcp-and-rtp-pipe)によると、2025年から2031年の予測期間中のCAGRが4.7%で、2031年までにグローバルTCPおよびRTPパイプ市場規模は73.6億米ドルに達すると予測されている。
図. TCPおよびRTPパイプ世界総市場規模
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図. 世界のTCPおよびRTPパイプ市場におけるトップ17企業のランキングと市場シェア(2024年の調査データに基づく;最新のデータは、当社の最新調査データに基づいている)
LP Informationのトップ企業研究センターによると、TCPおよびRTPパイプの世界的な主要製造業者には、TechnipFMC、Baker Hughes、National Oilwell Varco、Pipelife、Flexpipe Systems、FlexSteel(FibronPipe)、GF Piping Systems、Airborne Oil & Gas (Strohm)、VICTREX PEEK、ZYfire Hose Corporationなどが含まれている。2024年、世界のトップ10企業は売上の観点から約64.0%の市場シェアを持っていた。
「設計自由度 × 実装スピード」でプロジェクト成功を支える
TCPおよびRTPパイプは、設計から敷設までの柔軟性が非常に高く、現場ニーズに応じた迅速な対応が可能である。軽量性によりクレーン設備を必要とせず、敷設コスト・時間の大幅削減が見込まれる点は、投資回収期間の短縮を重視するプロジェクトにおいて大きな魅力となる。また、曲げ半径の小ささや現地での融着接続などにより、地形や施設条件に応じた最適な配管計画が実現できる。
「脱金属化」トレンドが新たな市場機会を創出する
特にTCPは、金属を一切使用しないオールプラスチック構造であることから、腐食や金属疲労のリスクを排除できる。この特性は、海洋や塩害地域、化学薬品の多用されるプラント設備において、運用コスト削減と安全性向上を同時に実現する強力な訴求点となる。すでに欧州の大手エネルギー企業では、油田再開発やFPSO更新プロジェクトにおいてTCPの全面採用が始まっており、適用範囲は今後さらに広がると見られる。現場の声を捉えた製品戦略を構築できる企業にとっては、この脱金属化の流れは、単なる素材選定以上のビジネス拡張機会となる。
複合材料技術の中核企業が「標準化」フェーズで主導権を握る時代へ
現在の市場は、製品技術の成熟とともに、規格化・標準化への移行が進みつつある。このタイミングで重要となるのは、単なるパイプ製造にとどまらず、素材選定、設計支援、施工教育、長期運用支援までを一貫して提供できるトータルソリューション型企業の存在である。特に熱可塑性樹脂や連続繊維加工に独自技術を持つ企業は、今後、規格主導権の確保と系列化されたサプライチェーン構築を通じて、市場における優位性を強めていくことが想定される。選ばれる企業とは、単なるスペック競争を超え、顧客との共創価値を提供できる存在である。
レポート概要
タイプ別セグメント:
Reinforced Thermoplastic Pipes (RTP)
Thermoplastic Composite Pipe (TCP)
用途別セグメント:
Oil and Gas
Mining
Renewable Energy
Other
会社概要
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