1. 市場概況
日本市場においては実証事業などから次世代モビリティには一定のニーズが認められるものの、軽自動車や原付バイクなど魅力的な選択肢(移動手段)が数あるなかで、敢えて超小型モビリティや電動ミニカー(原動機付四輪)を選ぶ理由に乏しい現実がある。約10年の歳月をかけて規格が創設された超小型モビリティも、トヨタの「C+pod」が生産終了した今、市場は静かに終わっていくかと思われた。
しかし、2025年秋のKGモーターズ「mibot」投入を皮切りに変化に乏しかった市場に転機が訪れようとしている。それは単に競合製品との価格差ではなく、利用イメージが明確化された電動ミニカーが続々と市場に投入されることを意味している。
欧州市場では、炭素排出量の多い車両の通行を規制する低排出ゾーン(Low-Emission Zone :LEZ)や車道再配分(歩車分離/歩車共存)、モビリティハブの活用によるラストワンマイル配送といった欧州都市の再設計の動きが、ミニマムモビリティの普及を後押ししている。「Ami」の成功で地位を獲得したCitroën(シトロエン)に倣い、Renault(ルノー)やSEAT(セアト)といった大手欧州自動車メーカーだけでなく、中小メーカーも第二の「Ami」を狙った都市型EVのラインナップを拡充している。さらに、欧州トヨタや中国企業も欧州市場に参入を計画しており、欧州のQuadricycle(クワドリシクル:Lクラス四輪車)市場は新たな競争が始まっている。
2.注目トピック~芽吹こうとする次世代モビリティ市場と黒船(BYD)の襲来可能性
本調査では、次世代モビリティに求められる社会課題や背景を8項目ほど挙げて、欧州市場で起きているモビリティと都市インフラの共存戦略も対象としている。
経済合理性の伴う形でEVシフトを実現させるためには、収益性とユーザーベネフィットの最大化が不可欠である。収益率の低い価格設定故に、従来の売り切り型ビジネスでは収益性が望めない次世代モビリティこそ、サブスクリプションやモビリティサービスなどのバリューチェーンで稼ぐ方法が模索されている。
実用性とコスト負担のバランスがとれた次世代モビリティの登場が期待される中、業界関係者が一様に警戒するのが、BYDの軽自動車EVである。2026年後半の投入が予定されるBYD軽EVは破壊的な価格力と磨き上げられたBEV技術で、次世代モビリティの潜在需要を大きく侵食する可能性がある。
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3.将来展望
トヨタ「C+pod」が生産終了した影響もあり、国内の次世代モビリティ(電動トライク、電動ミニカー、超小型モビリティ)の新車販売台数は、2024年が1,280台と一時的に市場は縮小している。
警察庁の統計によると2024年の免許返納者数は5年振りに増加に転じており、路線バスなど地域交通空白エリアの拡大など潜在的な需要は明らかである。また、都市型MaaS(Mobility as a Service)の概念を取り入れた都市交通システムの拡大や、観光地周遊、訪問販売業務、ラストワンマイル物流といった様々な用途で、軽自動車では過剰スペックとなる領域において、日本においても用途を特化させた次世代モビリティの需要が広がると推測する。
国内の次世代モビリティ全体の新車販売台数では、2035年にAggressive予測(最大成長予測)で102,100台、Conservative予測(最小成長予測)で18,330台と予測する。
なお、Aggressive予測(最大成長予測)は実用性と価格(維持管理費用を含む)のバランスが取れた新型モデルが登場し、カーボンニュートラルの推進に向け自治体や企業を中心とした需要増加を想定している。Conservative予測(最小成長予測)では市場減速やユーザー需要抑制が大きな変動要因となることを前提に算出している。
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海外市場に目を向けるとカーシェアリングや短期カーリースといったサブスクリプション型などの多様な提供手法や、マイクロファイナンス(貧困層・低所得層向けの金融サービス)、使用済み製品を回収して再利用する再生専用工場といったエコシステム構築も、次世代モビリティの普及速度に影響を与えるとみられ、日本市場でも次世代モビリティの導入ハードルは下がっていくとみられる。
つまり、日本では真正面から軽自動車や二輪車と競合を避け、車両設計では低価格化と用途特化、事業モデルは継続収益ビジネスを実現することが次世代モビリティ市場の成否を分けると考える。
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調査要綱
1.調査期間:2025年7月~9月
2.調査対象:次世代モビリティメーカー、次世代モビリティ関連サービス事業者等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話ヒアリング調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2025年9月29日
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