「可搬式速度違反自動取締装置の運用状況(令和3年中)」と「可搬式速度違反自動取締装置の整備状況(令和3年度末)」をゲットした! 警察庁作成の、都道府県別の一覧表だ。これは発表ものではない。
情報公開法に定められた手続きを踏み、収入印紙で手数料を支払い、ゲットしたのだ。速報しよう。

【あなたの住む街は】都道府県別台数と取り締まり件数一覧「移動式(可搬式)オービス」

■全国の可搬式、99台から117台へ

「可搬式速度違反自動取締装置」を「可搬式オービス」または単に「可搬式」と略す。本体部を三脚に載せて使う、持ち運びできるタイプのオービスだ。 ※ネットでいう「移動式オービス」はこの可搬式を含む。

まずは「整備状況」から見てみよう。「令和3年度末」つまり2022年3月末現在、可搬式オービスは全国に117台だ。私はこの一覧表を毎年ゲットしている。2021年3月末は99台だった。18台しか増えていない。「通学路の安全を守る切り札」だとかテレビ・新聞がよく宣伝しているのに、たった18台増。なぜ?

可搬式オービスは、2社が競合する形になっている。
日本のオービスの老舗企業、東京航空計器(TKK)と、スウェーデンに本社を置く世界的企業、Sensys Gatso Group(SGG)だ。ところが、どうやらややこしいことになっているらしいのだ。

TKKの可搬式は取り締まりに向かないのに、TKKばかりを全国の警察に購入させようとする一派が警察庁内にいる。しかし地方は、取り締まりに向かない装置を、なるべく購入したくない。それで台数が伸びないのだろう、と私は読む。

■可搬式の取り締まりは2.3倍増

次に「撮影枚数」である。これ、2019年分までは主に「取締り件数」という標記だった。2020年から突然、撮影枚数になった。標記が変わっただけで中身は同じだという。でも、同じならなぜ変えた? うーん、やっぱりTKKの可搬式が取り締まりに向かないことが影響しているのかなぁ、と私は見ている。本稿では、昔の呼び方、取り締まり件数でいく。

2021年の取り締まりは2万6508件。
2020年の1万1568件から約2.3倍に増えた。全国トップは千葉で5316件だ。千葉は2020年は1076件、だから約4.9倍に増えた。すごい。

■千葉は約4.9倍増、なぜっ?

千葉の台数は、2020年度は3台。2021年は10台だ。7台も増えたから? いや、そうじゃない。2022年1月30日付けの毎日新聞が「2021年の可搬式オービスでの摘発、前年の5倍 3台運用、5316件」と報じている。2021年は2020年と同じく3台態勢なのだ。7台は、2021年度末までに、つまり2022年の1~3月に購入したんだね。

3台態勢のまま、なぜ5倍近くにも増えたのか。おかしいでしょ。
千葉の3台は(その後の7台も)SGG製だ。SGGの可搬式は超高性能なのに、TKK製をゴリ押しする一派に遠慮して、2020年は取り締まりを抑えていた。が、警察庁内でどんな“暗闘”があったのか、ゴリ押し派とは別の方面から2021年、ゴーサインが出た、ゆえに取り締まりが爆発的に増えたんじゃないかと、これも私の独自の見方だ。

■新潟、可搬式がないのに71件を取り締まり?

可搬式のマニアにとって新潟は重要な県だ。そのディープな話はまたの機会として、今回の一覧表をよくご覧いただきたい。2022年3月末現在、新潟に可搬式はない。ゼロだ。なのに取り締まりが71件もある。えっ、どゆことっ? 幽霊オービス?

あちこち当たってわかった。「可搬型オービス 新潟市で13日から 県警 3カ月の試験運用」と2021年9月7日付けの、「可搬型オービス速度順守6~7割に効果 新潟県警が試験運用を検証」と2022年3月13日付けの、いずれも新潟日報。それらによると、新潟県警は2021年9~12月、TKKの可搬式1台を140万円でレンタルし、試験運用を行った。その際、しっかり違反切符を切ったという。
それが71件として計上されてたんだね~。ああ、びっくりした(笑)。

速報はとりあえず以上としよう。最後にひとつだけ言っておくと、SGG製の可搬式を10台もそろえた千葉は、ヤバイですぞ。3台で全国トップの5316件も取り締まり、2022年3月末から10台態勢なのだ。快適に高速度が出る高級車で、千葉のゴルフ場へ向かう社長さんとか、ぼろぼろ捕まりそう。というか、速度が上がると危険の発見が遅れ、対処が遅れ、事故ったときの被害が甚大になる。そのことは、可搬式がどうとかに関係ない。ご注意を。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。
2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。
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