小学校の家庭科でかつて習ったソレは「カロチン」だった。でも、近年、テレビで聞くのも、新聞や雑誌で見るのも、「カロテン」に変わっている。


これっていつからなんだろう。なぜ「カロチン」じゃダメで、「カロテン」なら良いのか。

「カロチン」が、時と場合、言語や方言の都合で、どことなく卑猥、あるいは滑稽な響きに聞こえるとか、そんなことじゃないですよね? 念のため。

調べてみると、NHK放送文化研究所のサイト内で、『五訂日本食品標準成文表』で「カロチン」が「カロテン」に改訂されたと書かれていた。
五訂日本食品標準成分表が改訂されたのは、2000年11月。つまり、ここから「カロテン」になったようなのだが、では、なぜ変わったのか。
その理由について、『五訂日本食品標準成文表』を発行する文部科学省に問い合わせると……。
「カロチンがカロテンに変わった理由は、読み方の関係ですね。実際には、委員会の会議の中で、委員の先生方が話し合った結果なのですが、その会議の詳しい記録は残っていないため、当時の先生お一人お一人に聞いてみないと、正確な理由はわかりません」

ただし、「英語で書かれたものの発音として、『カロチン』と『カロテン』と、どちらが正しいか」という感覚的なものが論点だったようで、
「海外の人が発音するのと、日本人が発音するのとの違いがあり、よりネイティブな表現になったということだと思います」とのこと。

ちなみに、「カロチン OR カロテン」問題のほかに、これまで改定されたものはありますか。
「正確に全体を調べたわけではありませんが、こうした例はないと思います」
では、現時点で、どちらの発音にするか検討中のもの、話題にのぼっているものは?
「それはありません(笑)」

前例がなければ、これからも当分あらわれそうにない「カロチン→カロテン」の変更。
小さな小さな変化に見えて、大の大人が集まって、会議で真面目に話し合われた末に出された「結論」は、栄養界においては、かなり歴史的な変化だったのかもしれません。

(田幸和歌子)