それは『マッチポンプ売りの少女 童話が教える本当に怖いお金のこと』(マネー・ヘッタ・チャン作 あさ出版刊)。
物語は、オムニバス形式で次々とうまい話にのってだまされる「ヘッテル」と「フエーテル」の2人に対して、マッチならぬ「マッチポンプ売りの少女」が、世の中にはびこっている“からくり”を見せて目を覚まさせてくれる。
「マッチポンプ」とは本書によると、「(和製語。マッチで火をつける一方、ポンプで消火する意)意図的に自分で問題を起こしておいて自分でもみ消すこと。またそうして不当な利益を得る人のこと」。
物語はそれぞれ、「出来レース」「もみ消し」「やらせ」「つくられた流行」「ぼったくり」「談合」などがテーマ。「100%フィクション」という設定になっているが、読んでいくと「これはあのことなのでは!?」となかなかきわどい内容になっている。
著者は、ビジネスサブカルチャー作家でもあり、本業はプロの投資家のマネー・ヘッタ・チャン(@hettachan)。前作の『ヘッテルとフエーテル本当に残酷なマネー版グリム童話』(経済界)は現在5万部売れている。
それにしても「マッチポンプ売りの少女」は何者なんだろう。どうしてわざわざ現実を見せつけるんだろう……。というわけで、“彼女”に直接聞いてみることに。教えて! マッチポンプ売りの少女。
「わたしの役割は~、幸福を運ぶエンジェル☆じゃなくて~、不幸な現実を運ぶ小悪魔★ってところかしらん♪ 幸せに向かっていると思っているけど、実際は自分から不幸の滝壺に向かって泳いでいる人達が引き返せるぎりぎりの所でね。そっちに幸せはないですよって教えてあげるの☆」
それでも不幸に終わってしまっているケースが……。
「せっかく教えてあげたのにぃ、その先に幸せがあると思って、頑張ってきた人はね~、私のこと全然信じてくれないの(><) だからいつも、私の忠告は受け入れられないのよ。まじかなぴーのです」
でも、小悪魔とは言いつつも結局、“現実”を教えてあげているので、ひょっとして「正義の味方」!?
「あたしね、物事をちゃんと考えないで、自分は幸せになれるって根拠もなく信じきってるひとも、そういう人をまんまとだましてる奴らもどっちもだ~いきらい! だから、どっちもいなくなってほしいから、わざわざ“現実”を突きつけてあげるの。だから自分のためにやってるっていえるわね」
コ、コワい。でも、たしかに本書を読むと、自分できちんと調べて、考えることがいかに大事かというのを気づかせてくれる。
それにしてもヘッテルやフエーテルを見ていると、ちょっとだけ自分のことを言われているようでもあり、いやな汗が出てくる……。ヘッテルやフエーテルのようにならないためにはどうしたらいいの?
「自分がヘッテルとフエーテルみたいに、欲や不安で目が曇ってないかをまず考えてほしいわ。その次は、だまそうとする人はどんなやり方でだましてきたかを知ったら、自分がヘッテルとフエーテルになったつもりで、モノガタリの中でわるい奴らをどうコテンパンにするか、あなた自身のモノガタリを頭の中で物語ってほしいわ。『マッチポンプ売りの少女』を『めでたくなし、めでたくなし』っていう結末にしているのはね。読んだあなた自身の手でヘッテルとフエーテルを『めでたし、めでたし』にしてほしいからなの」
だまさないようにするだけで完結してしまいそうになっていた……。
「大事なことは、だまされないようするだけじゃだめなの。
「マッチポンプ売りの少女」が“この世のからくり”を解き明かす『マッチポンプ売りの少女 童話が教える本当に怖いお金のこと』、ぜひご覧あれ。
(dskiwt)
*本書はYouTube動画での紹介も。井上みゆさんが歌うテーマソング「「自作!×自演!×乙!=マッチポンプガール!!」も!