社会の多様化にともない日本でも注目されつつあるハラール。ハラールとはアラビア語で「許された」という意味の、イスラムの教義に沿ったもののことを指す。
例えばイスラム教徒にとって、豚肉は禁忌であるため口にできないが、その他の食肉は一定の条件に基づいた処理が必要だ。豚肉とまったく関係ない製品に思えても、成分に豚肉由来のものが使われているとアウトになる。

イスラム教徒が多く暮らす地域では、それら多くの基準をクリアした製品にハラール認証のマークが付けられ、売り出されている。その範囲はシャンプーなど食品以外の製品にも適用されており、欧州でも様々なハラール製品にお目にかかれる。ハラールになじみのない日本人からすると、こんなものまでハラールなのかと発見できて面白い。

その1つが、世界的に有名なグミ「ハリボー」のハラールだ。
ハリボー社の公式サイトによれば、ハリボーのグミは、アラビアゴム(アラビアゴムノキという植物から取れる樹液)の代わりに豚から生産されたゼラチンが使われているという。そのため通常のハリボーは、イスラム教徒にとって口にできない。しかしハラール認証の一部ハリボーは、テングサなどの藻類をゼラチンの代替として使っているため、イスラム教徒はもちろん菜食主義者も食べられる。パッケージの裏にはハラール表示がある。

実際にハラールのハリボーとハラーム(イスラム教で禁止されているもののこと)のハリボーを買って味を比べてみたが、大きな違いはない。種類もクマの形をしたスタンダードな「ゴールドベア」だけでなく、コーラ味の「ハッピー・コーラ」などバリエーションも多い。


イスラム教徒にとって非イスラム圏での食品選びは大変だ。ハラール表示が付いているか探すだけならまだ良いが、そもそも表示が無い場合は、成分表や、さらにその向こう側の過程まで格闘しなければいけない。例えば欧州でもイスラム教徒が身近に暮らす国フランスでも(仏内務省によれば、フランスには500万人から600万人のイスラム教徒が暮らしている)、彼らにとって買物はまだ十分満足できるものではないという。

そこで近年、パリのイスラム教徒が多く集まる地区では、ハラール製品専門のスーパーマーケットがオープンしている。店内丸ごとハラール製品なので、1つ1つ確認する手間が省ける。ハラールのフォアグラなどフランスらしいものも置いてある。
多くの製品はイスラム教国から輸入されたもので、マレーシアなどが、その代表国なのだとか。店内にはハラールであることを示した証明書も掲げてある。

スーパーマーケット以外にも、ハラール表示されたお菓子だけ置いてある駄菓子屋もあり、そこではハリボーの他に、ハラールのチュッパチャプスなども売られていた。判断が難しい小さな子供でも安心に買物できるのだ。

イスラム文化に馴染みがない日本人からすれば、ハラールは遠い食文化だと考えがちだが、つまり自分たちがどのようなものを日々食べて、使っているかということ。食卓に上る食品の過程を知ることは、イスラム教に限らず大切だ。
ハラールの本質はそこにある。
(加藤亨延)