限定ゴモラも付いてくる! ウルトラ怪獣への溢れる愛をPOLYSICS・ハヤシが語り尽くす(2)

■New Mini Album『HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~』インタビュー2

――インタビュー1より

「うわ、なんかブッ飛んでんなー」「キテるなー」って思わせたいわけじゃん

――「忘れていないガビシェール」ですね(笑)。なんか怪獣の話ばっかりになっちゃったけど(笑)、『HEN愛シリーズ』という大きなテーマがある中で、今回の作品では、どんな目標を定めていましたか?

ハヤシ:怪獣にまつわるストーリーは後づけだね。これをきっかけにウルトラ怪獣の世界を好きになってくれればいいなってことで。音楽に落とし込んでいく上では、他のメンバーが俺ほど怪獣のこと大好きなわけじゃないでしょ? だから、みんなで「これ、いいでしょ?」って提示するっていうのとは違って。バンドとして、とにかく「振り切ったものにしよう」ってテーマはあったかな。で、俺が好きなものを、好きなように。

――ハヤシ君から怪獣へのラブレター、みたいなものだったんですか?

ハヤシ:ラブレターではないかな。「だから好きだよ」って意味のことは最後にはつくんだけど(笑)。でも、ここが強い、ここがカッコいい、この怪獣の必殺技はこういうので、体重は何トンだ、とか、そういうものにはしたくなかったんだよね。

――通常、この手の音楽は、怪獣のテーマソング的な曲調のものになりがちですよね。校歌のようにフォーマットが決まってるタイプの曲。そういうんじゃなく、ちゃんとポリシックスの音楽になっているのが凄いと思いました。

ハヤシ:そう! 体重何トンとかそういうんでもないし、戦隊ものの主題歌でもないもの。そこは決めてたかな。特撮なんだけど、そこのフォーマットに入れるのはつまんないと思ってね。それこそ、振り切ったものにならないじゃん。型にはまったら。そん中で俺が真夏竜(ウルトラマンレオの主演俳優)みたいに歌い上げちゃったら、それはそれで面白いだろうけどさ(笑)。でもそうなったらフミとヤノ、関係なくなっちゃうから(笑)。そういう振り切り方じゃなく、ちゃんと音楽的に振り切ったものにしたかったんですよね。

――ええ。これだけ好きなものに対しても、そっちの世界に寄っていなかいってとこはポリシックスらしいと思ったところです。

ハヤシ:うん、そこはね。そういうのは作る気しなかった。ウルトラ怪獣好きじゃないポリシックスのファンもいるわけだからね(笑)。そういう人たちにも「うわ、なんかブッ飛んでんなー」「キテるなー」って思わせたいわけじゃん。

――ブッ飛んでるといえば、私、一番好きなのがクレージーゴンの曲で。この曲聴くとポリシックスだなぁって思うんです。ホント、最高。

ハヤシ:ああ、素晴らしい。っていうのは、実はこの曲が“裏キー曲”なんですよ。表がゴモラだとしたらね。この曲をどこに持ってくるかは考えたよ。もし7曲目とかに入れてたらアルバムの印象もだいぶ変わると思うんですよね。これを中盤に持って来たことによって突き抜けた感がより伝わるものになったと思うんだよね。最後、倒されたクレージーゴンが夕陽をバックに横たわるシーンがあるんだけど、あの切ないところは口笛で表現したんです。

――切ない? 口笛のフレーズはなんかコミカルに感じましたけどね(笑)。

ハヤシ:あははは(笑)。これって、元々は「Aメロ、Bメロ、サビ、口笛」みたいな構成の曲だったの。でも、果たしてこれでいいのかなって思って。クレージーゴンの何が好きかって、やっぱりあのとんでもないバランス(を欠いた姿)じゃない。これを曲にするときに、Aメロ、Bメロっているかな?と。曲として普通のものでクレージーゴンを表現するってことが合ってんのかなって思ったときに、狂ったシーケンス・フレーズと口笛でいいんじゃねーかなって(笑)。クレージーゴンのいびつさがそれで表わせるんじゃないかなって思って。

――なんたって「きちがいロボット」(注:クレージーゴンの当初のキャッチフレーズ。“きちがい”が差別用語にあたるため、すぐに“ロボット怪獣”に改められた)ですもんね(笑)。

ハヤシ:あははは。でもさ、“きちがいロボット“って、雑誌とかに載ってた紹介文で、実際の放送では使われてないんだよね。

――ええ。ちなみに“クレージーゴン”って名前自体も、実は本編では誰も言ってないんですよね。

ハヤシ:そうそうそう、そうなんだよね!

――『ウルトラマンコスモス』では“クレバーゴン”って、これのオマージュが出てましたけど。

ハヤシ:ああ、あったねぇ。カオスヘッダーでしょ。

――ああ、また脱線していく(笑)。ウルトラマン・シリーズはとにかくファンが多いですから、ポリシックスのことを知らないウルトラ・ファンが今回の試みを聴いてどう思うかな?なんてことは考えましたか?

ハヤシ:うん、考えたけど、だからと言ってみんなに気に入られるようなものを作ってもなぁってのはあった。自分の本当に好きなものを自分なりに伝えようと思う気持ちの方が強かったからね。そこは意識しましたね。だってウルトラ・ファンだって、全シリーズ見てる人がどれくらいいるかわからないしさ。

――そうですね。一般的なウルトラ・ファンって、マンが好きでセブンが好きで。でも平成になってからのは見たことないって人が多いですし。

ハヤシ:うん、意外とそういうもんだと思うし。で、それを全部見てる人たちがこれ聴いて、歌詞読んで、ちゃんと伝わるものにしたいなとは思ったけどね。伝わる人には「こいつはホントに好きなんだな」というのが。

――そうそう。歌詞がまたね、読み上げると「これはなんの怪獣でしょう?」ってクイズにもなるぐらい、ストーリーの芯を捉えたものなんですよねぇ。

ハヤシ:その歌詞の書き方は結構大変でした。最初にバキシムの曲を作ったのよ。それを円谷プロの方に聴いてもらって「どうでしょう?」と。バキシムでタタキができたのも、自分の中で今回みたいなタイプの歌詞を書くきっかけになったんですよね。で、円谷プロの色んな部署の方にも聴いてもらって良いリアクションが得られて嬉しかった。バキシムのストーリーでさ、南夕子(ウルトラマンAに変身する隊員)がバキシムを見て「あそこで怪獣を見たんです!」って言うんだけど、他の隊員が誰も信じないでしょ? あれって、なんなんだろうね、ウルトラ・シリーズ! 「おまえ、ちょっと疲れてるんじゃないか?」って言われちゃうんだよ、こんだけ怪獣が街に出て来てるのに(笑)。

――(笑)日々怪獣と接する仕事に携わってるにもかかわらず、ね。バキシムの造形はハヤシ君、どストライクですよね。

ハヤシ:好きだねぇ。俺は「バキシム推しな人」だね(笑)。

――どういう人ですか(笑)。

ハヤシ:背中と手はトゲトゲしてるのに、前から見るとまんまるっていうのがいいよね。そしてあの色、顔のロボット感! 名前もいい。昔、ポリの曲で「バキシム」って仮タイトルつけて曲作ったことあったんだけど、それぐらいバキシムの曲、作りたかったんだよ。で、今回最初に作った曲もバキシムの曲だったと。

――『HEN愛LET’S GO!』2作に共通するのは、昭和感だと思うんですね。ガラキングでフィーチャーされたバレーボールしかり、石油をエネルギー源にするオイル怪獣しかり。前作、食べ物編のラスポテトとか魚肉ソーセージも昭和っぽいし、それは一種のノスタルジーなのかな。

ハヤシ:そうですね。アートワークもそうなってる。ジャケはこういうものにしたかったんですよ。自分が子供の頃に見てた怪獣大図鑑のタッチ。この頃の絵って、もちろん平面なんだけど、勢いがあるんだよね。

――自分がこの絵のモチーフになるって、超テンション上がったんじゃないですか?

ハヤシ:もう、それは(笑)。夢あるでしょ? (中ジャケに描かれている怪獣たちを指して)怪獣たちもコーラスに参加してるからね。これは「ウィー・アー・ザ・ワールド」のイメージなんだけど(笑)。

――そういえば、曲に怪獣の声が入ってましたね。ナメゴンとか、古いのによくありましたねぇ。これは円谷プロに借りたんですか?

ハヤシ:そう。でも、円谷プロのライブラリーにもないのが多くて。だから、相当マニアックだったんだな、俺のチョイスって(笑)。ゴモラとバキシムはすぐにありましたけどね。昔も今も、鳴き声の流用はしてるじゃない? それをちょっと加工したり、回転数とかピッチ上げたり。で、その怪獣の鳴き声の元となってる音声を、さかのぼってライブラリの中から探すのよ。超大変でしたよ。「あ、これとこれって鳴き声一緒なんだ!」って発見があったりもしたけど。

――それはマニアのハヤシ君としては楽しい作業だったんでしょうね。

ハヤシ:今振り返ってみると楽しかったけど、そのときは超大変で(笑)。大丈夫かな?と思っていましたよ。

――怪獣の鳴き声って、マルチテープに保存されてるんですか?

ハヤシ:いや、WAVファイルだよ。アーカイブ室があって、そこに入って探すの。嬉しいながらも浮き足だっていられないからさ。だから敢えてクールに(笑)。

――ウルトラマンと怪獣の関係って、人間の勝手な正義で怪獣を退治する腑に落ちない話も多いけど、ウルトラ怪獣は怪獣のキャラクターやバックグラウンドがとても魅力的なので、怪獣にも肩入れしちゃいますよね。話によっては「ん? この怪獣、倒していいの?」って思わされたりもする。

ハヤシ:うん。ウルトラマンはもちろん好きだけど、自分としてはやっぱり怪獣派なんだよね。次はどんな怪獣が出るんだろう?ってワクワクする感じ。「すげー!」って、デザインも含めて興奮してた。タッコングとかホント凄いでしょ。新マン(『帰って来たウルトラマン』のこと)の怪獣は特に斬新で、ビーコンとか、凄い宇宙怪獣感があるでしょ。グドンみたいに手がムチになってるとか、ツインテールも足下に顔がついてるじゃん。「えっ、ここが顔!?」って驚いちゃうよね。ホント、スゲエなって思うもん。そういう自由な発想が。レッドキングもさ、強さを表わすために普通は顔を大きくするところだけど、わざと顔を小ちゃくしてカラダを大きく見せるって逆の発想なんだよね。そのセンスが凄いなあって思うしね。

――ほかに何か手をつけていた怪獣の曲はなかったんですか?

ハヤシ:ガヴァドンの曲は作ってたね。ガヴァドンもすごい好きだったんだけど、これはラブソングみたいになったからボツにした(笑)。「7月7日に会いたいな」みたいな歌詞になっちゃって、ちょっとこれどうなんだろう?って(笑)。(注:ガヴァドンは悪い怪獣ではないので、子供達が「ガヴァドンを倒さないで!」と嘆願、ウルトラマンはそれにこたえて七夕の日に会えるよう、ガヴァドンを宇宙の星にするべく地球から連れ出した)

――あははは。

ハヤシ:俺、あの話すっごい好きでさ。ウルトラマンが子供達にとって“悪”になる話でしょ。「帰れ! ウルトラマン」って話なんだよ。そんな発想なかなかないでしょ? シリーズの後になってそういう話が出てくるならわかるけど、最初のシリーズでそういうひねった話もやっちゃってるのがまた凄くて。子供が主役で怪獣が主役なんだけど、大人が見ても素晴らしい作品になってる。いろんなメッセージを子供番組の中で伝えようとしたんだなぁと。

――ホントですよね。今回の作品は、ポリシックスの中では純然たる企画ものと捉えているんですか。それとも、何か今後の重要な布石になりそうな部分があったりしたのでしょうか。

ハヤシ:うん、布石になる部分はあるよ。それはどの作品でもそうなんだけどね。でも『HEN愛LET’S GO!』という企画はこれで完結ですね。これはこれでやりきったし、振り切った作品が出来たと思うし。次のアルバムも思い切ってやりたいことやっていいんだなって、自分自身が思えるきっかけになったし。それがポリシックスだよなって改めて思ったし。

――今、どういうところにシフトしてるんですか?

ハヤシ:企画ものはひとまず完結したので、次はポリシックスの新しいオリジナル・アルバムですかね。それは結構シンプルな思考で作ってるよ。

――秋には【ウルトラチャレンジ OR DIE!!!~燃えろ!クアトロ地獄!2日で100曲カブリ無し!!!~】という超絶企画ライブも控えています。

ハヤシ:そう、その仕込みもしなくちゃいけないんだよ。

――ポリシックスの楽曲は250曲近くあるので、100曲やってもまだ半分以上は残るわけです。選曲がまず大変ですよね。

ハヤシ:ツアー中ずっと移動中に、ミドルテンポの曲、アップテンポの曲、アバンギャルドな曲って曲を分けて、でっかい紙に書いてにらめっこしてたの(笑)。2日やるけど、ちゃんと1日1日完全燃焼するライヴにしたいんだよね。やっぱ、いっぱい汗かいて騒ぎたいじゃん? だからピークが1日ごとにちゃんとあるようなものにしたいと思う。

――忘れてる曲とかもありそうですね。

ハヤシ:いっぱいあるよ(笑)。そういうのを思い出したりとか、しかもうちは同期ものだからシーケンスを発掘しなくちゃいけなくて……昔のデータはMO(90年代によく使用されていた記録媒体)に入ってるからね、そういうのを新たに落としたり……まあ、そういう面倒な作業も楽しみながらやってるよ。

――あと、夏には念願の【WORLD HAPPINESS】にも初参加。これも嬉しかったでしょう。

ハヤシ:そう、出演決まったときは「やったー!!!」ってジャンプしたよ。

――やっぱり意気込みも特別ですか?

ハヤシ:いや、でもいつも通りやるしかないでしょう。客層に合わせてニュー・ウェイヴっぽくやるとかじゃなく、自分たちの得意とするやり逃げパターン(笑)で燃え尽きようかな、と。

――今のバンドの推進力になっているもの、そういうチャレンジをさせるものって、何なんでしょう?

ハヤシ:アイディアかな。まだ実現していないアイディアがたくさんあるからね。ライブに関しても、今回の【ウルトラチャレンジ OR DIE!!!】みたいなのもひとつのアイディアだし。

――確かにこれ、凄いチャレンジでもありますよね。

ハヤシ:うん、ただの2デイズでもいいわけじゃん。でも、こういうリスク背負うと、お客さんも楽しんでくれるんだよね。そうなると自分たちも楽しいわけで。リスクがある中で一生懸命がんばって、なんらかの結果を残せると、それが自分たちの自信にもなって、さらにその先の原動力になるわけだから。この感覚は、常に研ぎ澄ませておきたいなと思うんだ。こういうライブやるよってことを発表して「ザワッ」てなる感じも楽しいし(笑)。

――あははは。

ハヤシ:そういうのをめんどくさがっちゃうとバンドのテンションも下がるから、常に挑戦する気持ちを持っていきたいんだよね。それが結局は自分たちにとっても、お客さんにとってもいいことになるから。

≪動画コメント≫


≪リリース情報≫
New Mini Album
『HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~』
2015.07.08リリース

【初回生産限定盤】(CD+ゴモラ”フィギュア)
KSCL-2584~5 / ¥3,241(税抜)
【通常盤】(CD)
KSCL-2586 / ¥2,000(税抜)

[収録曲]
1. 怪獣殿下
~古代怪獣ゴモラ登場~
2. 怪獣チャンネル
~電波怪獣ビーコン登場~
3. From バンダ星
~ロボット怪獣クレージーゴン登場~
4. 宇宙からの贈りもの
~火星怪獣ナメゴン登場~
5. We are Oil Lovers
~ペスター、タッコング、オイルドリンカー登場~
6. 怪獣サインはV
~球好き怪獣ガラキング登場~
7. 燃えろ!超獣地獄
~一角超獣バキシム登場~

≪関連リンク≫
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