その第1回配本は、第4巻『別れる理由I』だ。

小島信夫ってどんな人?
小島信夫(1915-2006)といえば、まずはドライなトホホ感に溢れるドタバタ短篇小説「アメリカン・スクール」(新潮文庫/Kindle)で芥川賞を受賞し、「第三の新人」のひとりとして遠藤周作や庄野潤三、吉行淳之介、安岡章太郎、阿川弘之、曽野綾子らとともに注目された作家だ。

その後、新居の建造から妻の米国人との不倫と病死、という私小説的題材をあつかった長篇小説『抱擁家族』で谷崎賞を受賞した。

ついで、この『別れる理由』あたりから、前衛的というかメタフィクションというかたんにぶっ壊れてるんじゃないかというようなヘンテコな小説を延々と書き続けた。
彼はまた明治大学の英語教師を定年まで勤め上げつつ、英米文学者として翻訳も少々やりながら、併行して小説や俳句や劇や美術を論じるこれまた膨大な量の評論を書き、戯曲にも手を染め、一時は雑誌で人生相談欄まで担当していたという。
恐るべきタフさと、ゲラすらチェックしてないのではないかと言われる「戦略的ずさんさ」で、この作家は91歳で亡くなるまで現役でありつづけ、膨大な仕事量をこなした。
その問題作『別れる理由』(1982年刊)が、33年の時を超えて、あらたに刊行されることになった。33年前と同じ3分冊で。