
■平井堅/【Ken Hirai 20th Anniversary Ken's Bar X'mas Special !!】
2015.12.24(THU) at 横浜アリーナ
(※画像11点)
「僕は天才じゃないけれども、皆様に寄り添う、寄り添える歌を歌う歌手になるという覚悟は持っています」
ソウルミュージックと日本のポップスへの底知れぬ愛情を独自の音楽性と圧倒的な歌唱で魅了するシンガー、平井堅が恒例となっているクリスマスライブを横浜アリーナで開催。恒例とはいえ、この1年はデビュー20周年を祝うアニバーサリーでもあり、彼のライフワークともなっているアコースティック編成による大人の夜の楽しみ『Ken's Bar』スタイルという特別版だ。
通常、幾つかのブロックに分かれスタンディングで盛り上がるフロアには、大きな丸テーブルが整然と並べられ、その中央にはキャンドルが揺らめいていた。この日のためにドレスアップした紳士淑女たちが待ちわびるのは、もちろん平井堅、その人。会場が暗闇に包まれ、主役の登場……と、誰もがメインステージに目を向けていたところ、アリーナ中央付近のゲートが開かれ、平井堅がゆっくりと歩いてくるではないか。手を伸ばせば届きそうなほどの距離を、タキシード姿で決めたスターが歩いてくるのだから興奮しないわけがない!


フロア中央には、真っ赤なポインセチアや金色のオーナメントで美しく彩られた円形の小さなステージがしつらえてあり、中央に鎮座したグランドピアノが、今か今かと平井の着席を待っている。『Ken's Bar』のオープニング(→cut)テーマのようになっているヒットソング「even if」でしっとりと、聖なる夜は幕を開けた。
「『Ken's Bar』へようこそ」とゲストたちへ礼を述べた後、センターステージからメインステージにまっすぐに伸びるレッドカーペットを悠然と歩く姿はハリウッドスターのよう。決して派手ではなく、大仰でもないが、思わずため息をつきたくなるような“絵になるシーン”がこの夜、いくつも繰り広げられた。それもこれも、平井堅という特別な存在感を放つアーティストゆえに成立するものだろう。
そんな夢見るような時が味わえるとわかっているからこそ、『Ken's Bar』の人気はとても高い。ラッキーにも招待券を手に入れたゲストたちは、実にリラックスした雰囲気で存分に楽しみ尽くしていたようだ。


「今日は今年最後のライブなので、頑張ります。1年で一番ロマンチックな夜に、いろんな思いを抱えて来てくださりありがとうございます。
2015年にデビュー20周年を迎え、9月から久々の全国ツアーを回ってきた平井。観客からリクエストを募って即興で歌うというコーナーを設けたところ味をしめたそうで、この日も「クセになっちゃった! 恩返しリクエストコーナー」と銘打って、アリーナの客人たちから歌ってほしい曲を募集。なにしろ広い会場ゆえ、平井の手にはバズーカ砲が(!)。「思ったよりも遠くに飛びますが、球は柔らかいので“安心してください”。ふふふ、安心してください、履いてません! いや、履いてます(笑)」と、気取らないジョークも交えて場内を笑わせるなど、言葉のキャッチボールができるのもライブならではの醍醐味だ。
1組目の岐阜から来たご夫婦からリクエストされた、2004年の「キミはともだち」をジャジーでスウィングするハッピーなアレンジで。2組目は最上段に座っていた横浜在住の母娘が見事にボールをキャッチしたのだが、15歳のお嬢さんから、アイドルグループのファンだと聞かされると傷心の表情を浮かべ、さらに会場は笑いの渦に。リクエスト曲は安室奈美恵とのコラボも話題となった大ヒット曲「グロテスク」。スリリングでセクシーなナンバーを見事にアコースティック&モノローグで歌いきり、平井堅の歌パワーを証明していた。

続いて、世界中で大ヒットしたスウィートなラブソング、エド・シーラン「Thinkin'Out Loud」を披露。
リズミカルなピアノに合わせて軽やかに歌うエバーグリーンなナンバー「ON AIR」では、自然と手拍子がおこり、ライブ感も一層増してきた。「冬のラブソングを聞いてください」と言って歌い始めた、前半最後の「センチメンタル」はピアノの伴奏に乗せ、切ない歌声が胸に迫ってきた。
インターミッションを挟んで、ピアノのイントロで大きな拍手がわき起こった「瞳をとじて」から、大人のエンタテインメントショウは後半へ。


続く2曲はカバーをチョイスした平井。まずは、井上陽水の84年のヒット曲「いっそセレナーデ」を歌ったのだが、オリジナルのやわらかな世界観とは違い、ウッドベースの太くセクシーな音色を携えて歌われるそれは、まるで別の曲のような響き……より宿命的な恋を歌っているように聴こえ、心が震えた。
一方、ORIGINAL LOVE「朝日のあたる道」は、ウッドベースがリズミカルに鳴り、やわらかな白い光が会場を包み込んで一気にウォームな空気に。間奏ではスキャットを披露するなど、スキルの高さも十分に聴かせてくれた。
「2ndステージ、お待たせしました。この職業になって、よく尋ねられることの1つに『クリスマスの思い出は?』というのがあります。でも、僕は学生時代にギリギリ、バブルを体験できなかった世代なので、苺にシャンパンとか、バラと女みたいな華やかな思い出は1つもなくて(苦笑)。

切ない思い出がよみがえったのか、しばし沈黙が流れた後、急に背筋を伸ばして再び話し始めた。「さて、今年最後のコンサート。1つになろうぜ!」。普段のキャラにないセリフに、自らが大受け。すると、観客もつられて大笑いに。「1回こういうのやってみたいんですよ。例えば、モニターに足かけて(お客さんを煽る)とか。30周年までには、そういう曲も作ってみます(笑)」。冗談の中に、さらりとこの先の10年の約束も織り交ぜるあたりも、シャイな平井堅らしい。
「君の好きなとこ」では、ピアノの温かな音色とともに、大好きな人への溢れる想いを指折り数えるように優しく歌い、続く「ソレデモシタイ」では、道ならぬ恋で狂おしく燃える女心をラテン調のパーカッションに合わせて熱情を込めて歌った。ラストの「POP STAR」では、この楽曲の持つキラキラ感はそのままに生楽器ならではの温かなグルーヴで包み込んだ。曲の合間には、「今年はライブ三昧の1年で歌手冥利に尽きます。

熱心なアンコールの拍手に迎えられ、ダークグリーンのドレスシャツに着替えて再登壇するやいなや、アカペラで「Love Love Love」と歌い始めた。ソウルミュージックを愛する平井にとって特に大切な楽曲の1つであるこの曲は、ゴスペル風の香りをまとい、クリスマスイヴにぴったりだ。<君に届けよう この歌を>という部分では、より拍手が大きくなり、ファンとの絆の深さを垣間見た気がした。
伸びやかな歌声を響かせながら、メインステージから赤絨毯を歩いて中央ステージへと移動し、最終曲「half of me」をピアノを弾き語りながら歌い始めた。大切な人がふいにいなくなってしまった哀しみとぽっかり感を実にリアルに綴った曲は、ファンとの別れを惜しむ『Ken's Bar』のエンディングテーマのようになっている。
曲間では、「先ほどは、天才にはなれなかったと言いましたが、それじゃネガティヴだなと(笑)。ですから、天才を目指します! これで本当に今年は歌い納めとなりますが、来年3月からは全国のアリーナを回るツアーが決まりました」と発表。

最後の最後、マイクを外して生の声で「どうもありがとうございました」と謝意を述べ、深々と頭を垂れた平井。その真摯な姿勢と、この日魅せてくれたファンタスティックなショウへの賞賛は、スタンディングオベーションとなり、その拍手はいつまでも鳴り止むことはなかった。来る2016年、平井堅がどんな歌で魅了してくれるのか、今から楽しみでならない。
(取材・文/橘川有子)
≪セットリスト≫
■1st Stage
1. even if
2. Have yourself A Merry Little X'mas ※クリスマスソング(オリジナル:マイケル・ブーブレー)
3. 愛にこだわれ
4. お客さんからのリクエスト(1)「キミはともだち」
5. お客さんからのリクエスト(2)「グロテスク」
6. Thinkin' Out Loud(オリジナル:エド・シーラン)
7. ON AIR
8. センチメンタル
■2nd Stage
9. 瞳をとじて
10. いっそセレナーデ(オリジナル:井上陽水)
11. 朝日のあたる道(オリジナル:ORIGINAL LOVE)
12. 君の好きなとこ
13. ソレデモシタイ
14. KISS OF LIFE
15. POP STAR
<アンコール>
1. Love Love Love
2. half of me
≪オンエア情報≫
WOWOW
『Ken Hirai 20th Anniversary Ken's Bar X'mas Special!!』
2016年3月放送予定
収録日:2015年12月24日
収録場所:横浜アリーナ
≪ツアー情報≫
【Ken Hirai 20th Anniversary Special !! Live Tour 2016】
2016年3月26日(土)福岡県・マリンメッセ福岡
2016年4月13日(水)大阪府・大阪城ホール
2016年4月14日(木)大阪府・大阪城ホール
2016年4月23日(土)北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2016年5月3日(火・祝)愛知県・日本ガイシホール
2016年5月4日(水・祝)愛知県・日本ガイシホール
2016年5月7日(土)東京都・国立代々木競技場 第一体育館
2016年5月8日(日)東京都・国立代々木競技場 第一体育館
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