GACKTが翌2月12日にリリースとなる44枚目のシングル『P.S. I LOVE U』発売記念イベントを原宿・アイア シアタートーキョーで開催した。イベントはファン700名を招待して行なわれ、『P.S. I LOVE U』制作までの過程や、“涙活”プロデューサー寺井広樹氏監修によって作られたエピソードをスクリーンで紹介し、それぞれのエピソードで触れられたテーマについてGACKTが自分の考えをコメントする形式で進められた。


『P.S. I LOVE U』のテーマは「愛する人への最期の言葉」。GACKT自身が「自分の遺言として届けたい作品」と称する作品となり、それだけに制作には苦労したのだとか。楽曲を作り終え、レコーディングし、ミュージック・ビデオも撮影したあと、作品に対して納得できず、すべてを一度白紙に。実質8ヶ月を要し、その期間はどこにいても本曲の制作に取り掛かり、何をしてもこの曲のことが頭を離れず、精神的にも相当きつかったようだ。だがそれも、すべてに妥協を許さないGACKT故。「曲が出来上がった時には本当にやってよかった、ここまでこだわって作って良かったと心から納得できた」と、笑顔を見せた。

「P.S. I LOVE U」の歌詞を書きながら、GACKTは「究極の愛情の示し方とは何か」を探すべく、たくさんの映像や手紙であらゆるエピソードをかき集め、その度に“愛情”と向き合ったという。そして、その中で出会ったエピソードを、事前に自身のFacebook、LINE、Twitterで紹介、「オマエたちの意見を聞かせてくれ」と、ファンにも一緒に“愛情”に向き合ってくれるよう呼びかけていた。イベントでは、その中から2つのエピソードをピックアップし、改めて自身の想いを話した。

一つ目のエピソードは「手紙に託された想い」という、この世に残される側としての想いを綴った作品。GACKTは「誰かを愛するには覚悟が必要。人を好きになることは難しいことじゃないけど、好きっていう気持ちから愛っていう気持ちになる時は大きな覚悟が必要で、その覚悟がないと相手にもやさしくなれない。
その人についていくっていう覚悟、その人を支えるっていう覚悟、その人を守っていくっていう覚悟。別れを告げる覚悟、告げられる覚悟。でもその覚悟ができていれば、どんなにつらい別れでも、出会ってよかったという思い出に変えてくれる。自分自身の死に対してもそう。自分が死ぬことが怖いというのは、覚悟ができていないからであって、その覚悟ができるようになると、大切なのは自分に関わってくれた人たちの心の中に生き続けることなんじゃないかなって感じるようになった。それが覚悟ってことが導き出してくれたボクの中の結論かな」とコメント。さらに、「若いうちはその覚悟って意味さえもわからないけど、それを意識して生きていくと未来が変わる。自分の周りの人たちの自分に対する態度も変わる」と続けた。

二つ目のエピソードは「どうか私の事を忘れないで~五年後に届いた手紙」という作品。GACKTはこのエピソードを見ながら、「愛するひとの未来について考えてみた」という。亡くなった妻から五年後に手紙が届くというエピソードに対し、「本当に相手のことを想っていたら、手紙など残さないって意見もあるけど、僕はそうは想定できなくて。手紙を読んだ瞬間はいろんなことを思い出して胸が苦しくなるかもしれないけど、そこまで自分を思ってくれる人と出会えたことにもう一度感謝できるし、出会ってよかったって、その人がいない時間の中で思い出すことができる気がするんだ。
相手がいる時にそうやって感謝できることは難しいことだけど、相手がいなくても思えるっていうのは自分の成長にもなる」と自身の考えを語った。

そして、彼が尊敬してやまなかった、俳優の故・緒形拳さんの話にも言及。「一緒に仕事をして、彼からいろんなことを教わって、自分の父親のように思い、彼の喜ぶ顔が見たいという想いだけで仕事をしていた時もあった。その頃には癌がかなり進行していて、すでに撮影の現場にいられるような状態じゃなかった。でも、そんな様子は一切見せないんだよ。苦しいって言葉を絶対に言わないし、いつも笑顔だった。そして、『自分が病気になって初めて人の痛みがわかるようになった。本当にありがたいことだ』とさえ言っていた。亡くなった彼に会いに行って彼の顔を見たら、本当にいい顔をしていた。その時、この人、最後までカッコいいなって」と、彼への想いを吐露した。また、GACKTが音楽をやりながら、今も舞台や映画に出ることに関しては、「あの人が自分に残してくれた大切な部分だから、教えてくれたことをなくさないように、時間を作ってやっていこうって誓ったんだ。彼から届けてもらったものがすごく大きかったから、それを忘れないように、自分もまた誰かにバトンを渡していこうって。
そういうバトンリレーなんじゃないかな、人生って」と語った。

トークパートの最後には、「今っていろいろな意味で時代が殺伐としていて、どんどんデジタルになって、熱がなくなってしまって、人の温度とか想いとか、そんなものが届きづらい、見えづらい、わかりづらい時代になっているんじゃないかな。昔は不便だったけど、そこに至るまでの過程には熱があった。今ってその熱がわかりづらいし、忘れやすいし、人を傷つけやすい時代になっているよ。でもこういう曲があって、曲を聴いて少しでも自分のそばにいてくれる人に対する感謝を思い出せるきっかけになってくれたら、僕はこの曲を作った意味があったんじゃないかな」と、改めて楽曲に対する想いを口にした。

そしてGACKTがステージをあとにしてから、ある映像が流された。それは、GACKTがかつて所属していたバンド“MALICE MIZER”の元ドラマーで、1999年6月にくも膜下出血で亡くなったKamiの墓参りに行く様子だった。彼が亡くなってから15年が経つが、GACKTがKamiへの想いを肉声で語るのは初めてのこと。「メンバーの中で一番仲がよくて、兄弟のようだった」というKamiの墓前で、GACKTは長い時間手を合わせた。その後GACKTは「ただいま」とKamiの実家を訪問し、ご両親と抱擁。そして仏壇に向き合った。Kamiの命日と誕生日の2回、Kamiのお墓と実家に足を運んでいるというGACKTは「『いい曲書けたよ』とか『もうすぐ舞台が始まるよ』とか報告している」と告白。
そして、「年に2回だけど、『おかえり』って言ってくれる場所があるのは嬉しいこと。15年経って、事実としては(Kamiがいないことは)わかっているんだけど、自分の中では、まだ気持ちが整理しきれない」と複雑な想いを語った。また、「お父さんやお母さんにとって僕がKamiの代わりになるわけじゃないけど、少なくとも勇気や希望とか前に向かって歩くことを届けることができるし、喜んでくれるし、だったら頑張ろうって。ここに来るたびにそう感じる」と静かに話し、映像の最後には「(亡くなった人たちの)たくさんのやりたかったこと、やり残したことを受け継いで、一つ一つやっていくことが彼らに対する生きるってことの喜びや感謝の表わし方なんじゃないのかな」とメッセージした。
(取材・文/田上知枝)

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