
■【TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016】ライブレポート
2016.05.21(SAT)at 新木場・若洲公園
(※画像8点)
写真提供:Metrock2016
今年で4年目、初の2都市での開催
【Tokyo Metropolitan Rock Festival】、通称“METROCK”が5月14日、15日に大阪、5月21日、22日に東京で行われた。4年目を迎えた今回から、東京と大阪の2都市での開催。
“METROCK”は、都内で開催される数少ない大型の音楽野外フェス。電車で行きやすいということもあってか、学生など、比較的年齢層の若い邦楽ファンが訪れているように感じた。このフェスは、レジャーシートの持ち込みが可能。芝生にシートを敷き、のんびり音楽を楽しむ人たちの姿も見られた。

この日、NEW BEAT SQUAREステージのトップバッターを務めたのはloveflim。無期限活動休止中のthe telephonesの石毛輝と岡本伸明を中心に、モデル活動などもしていた江夏詩織と高橋昌志(The Pat/PINK POLITICS)により結成されたバンド。今回のフェスが、実質初ライブとなる。
ステージには、the telephonesのTシャツを着たファンが集まっていた。観客の手拍子とともに現れたメンバーは、全員が白シャツに黒色のボトムス。
結成したばかりでまだミュージック・ビデオなどの動画はインターネットにはアップされていなかった。だから、この生演奏で初めて耳にする。透明感のあるポップな声の江夏(Vo.&Gt.)をベースに、ところどころ石毛が歌う、男女のツインボーカル。ダンスナンバーだったthe telephonesとは心機一転。日本語の歌詞で、メロディックな、大人な楽曲になった印象だ。聴いているだけで、さわやかな気分になれる。loveflimというバンド名なだけに、邦画の主題歌にもよさそうだ。
MCでは、江夏がフェス初出演であること、またフェスに来るのも初めてであることが明かされた。それに観客が歓声で迎えたところ「なんか頑張れる気がしてきた。


その後、WINDMILL FIELDステージに移動し、THE BAWDIESとTOKYO SKA PARADAISE ORCHESTRAを鑑賞。どちらもかっこよく、ほろ酔い気分で聴きたくなるバンドだ。時々コント要素を取り入れて、観客を盛り上げてくれる。この日は、5月だというのに真夏のような暑さで、日差しも強かったのだが、それ以上に熱いライブをしてくれた。
気づけば夕方の18時頃。あんなに暑苦しかったのに、空は曇り、肌寒くなってきた。続いて登場するのは、ゲスの極み乙女。だ。
ステージのオレンジ色のライトが映画のワンシーンのようにロマンチックに映る。川谷絵音(Vo.&Gt.)が一言一言ささやくようにやさしい声で歌う。ちゃんMARI(Key.)によるピアノソロは圧巻で、ロックフェスというのを忘れそうになる。

すると突然、大粒の雨が降ってきた。さっきまであんなに晴天で、天気予報では雨の予報はなかったのに、まさかの夕立。だから雨具は持っていなかったし、筆者同様、持っている観客はほとんどいなかった。雨に濡れながらも、観客たちは音に合わせて体をゆらす。
大ヒットソング「私以外私じゃないの」が始まると、雨はますます強くなる。
なんだか、これはもうなにか持っているとしか言いようがない。だって天気さえも演出の一部に変えてしまうのだから。筆者は、昨年秋にもステージを見たのだが、そのときよりもスケールアップしているように感じる。

エンディングが近づくと、雨は徐々に弱まり始め、「ロマンスがありあまる」を歌い始めたときは、雨は止んでいた。そして、休日課長(Ba.)とほな・いこか(Dr.)によるリズム隊のセッションが始まる。その間にパンダの着ぐるみに着替えてきた川谷が再びステージに現れ、「餅ガール」を演奏し始める。ミュージック・ビデオではうさぎの着ぐるみを着ているが、この日はパンダだった。アップテンポの曲で、さっきまで聞き入っていた観客たちは、再び熱気を取り戻して踊りだす。
ちゃんMARIの掛け声や、休日課長によるコール&レスポンス、S気を感じされるほな・いこかの煽りなど、メンバー4人の個性が強くて、全員がフロントマンのようだった。

これだけでも胸がいっぱいになったが、今日のヘッドライナーはサカナクション。見ないわけにはいかない。他バンドは大抵30~40分ステージなのに対し、サカナクションは60分の豪華ステージである。
バックの青いライトでシルエットのように映るメンバーがステージに現れ、テーブルに置かれたノートPCの前に、5人横一列に並ぶ。そして、打ち込みの音楽を演奏する「ミュージック」が始まる。
その後も「アルクアラウンド」「モノクロトーキョー」などを山口一郎(Vo.&Gt.)は淡々と歌い、メンバーも淡々と演奏する。だけど聴いているオーディエンスは踊りだす、このなんとも言えないクール感は、唯一無二のバンドだ。そして時々見せる、山口のはにかんだ笑顔を見ると、なぜだか幸せな気分になる。
「まだまだ踊れる?」と山口が尋ねる。「夜の踊り子」では、二人の舞妓がステージに現れて、踊りだす。不思議と、伝統文化の舞妓さえもロックにみえる。

さっきまでの淡々と歌う静止はなんだったのだろうと思うほど、今後は躍動感あふれるステージに変わる。何かとんでもないことが始まりそうな不吉さと、それを覗いてみたい好奇心が混ざり、サイケデリックな空気となる。「踊らないともったいないぞー!」と山口。両手で、ライトセーバーのように光る棒を持ち、上下に円を描くように振り始める。高速で円を描くと、スティックから文字が浮かび上がるのだ。そこには“METROCK”などの文字が出てきた。
実はこの演出は、昨年末のイベントでも拝見した。圧倒的なパフォーマンスに釘づけになってしまった筆者は、その後ワンマンツアーにも足を運んだ。だからこの演出を見るのは3回目なのだが、それでも毎回、迫力のあるステージに感極まってしまう。最後は大ヒットソング「新宝島」を熱唱した。
サカナクションのかっこよさを知るにはライブに行くのが一番。フェスのチケット代は少し高いと思っていたが、このサカナクションのステージを見れた上に、さまざまなアーティストも楽しめたと思うと、なんだかおトクな気がしてきた。今度METROCKに来るときは、レジャーシートを持ってこよう。
(取材・文/名久井梨香)
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