
■flumpool/【flumpool 7th tour 2016「WHAT ABOUT EGGS?」】ライブレポート
2016.06.26(SUN)at 東京国際フォーラム ホールA
(※画像10点)
「もっと成長して、殻を破ってまた逢いに来る」
6月26日(日)、【flumpool 7th tour 2016「WHAT ABOUT EGGS?」】は、東京国際フォーラムホールAにてファイナルを迎えた。3月にリリースしたアルバム『EGG』は、メンバー各自のインディペンデント精神の高まりや、バンドとしてのグルーヴ感の見直しなど、大きな成長と自己検証の軌跡が刻まれた、後に振り返れば大きな転換点となるであろう作品。


開演は18時。卵の殻にひびが入り割れていく様や、雄大な自然の情景が混ざり合う美しいオープニング映像に見惚れていると、突如、ステージの中央に4人が出現。その瞬間、大歓声が沸く。巨大な楕円の球で卵を象ったセットにツアータイトルが映し出されるとアルバム同様「解放区」で幕開け、「逢いたかったぜ、東京!」と山村隆太(Vo&G)がシャウトした。仁王立ちで<ここで 生きて行く>と大きく両手を広げるアクションは、かつてないほどに雄々しい印象を与える。阪井一生(G)のリフでスタートした「Sprechchor」は四つ打ちで軽やかに、続けて「夏よ止めないで~You’re Romantic~」では、山村もアコースティックギターを奏で、爽やかな空気感で会場を包み込まれていく。
「今日は何といってもツアーファイナル! 昨日の晩から緊張して、なかなか寝れへんかったけど……」と最終日ならではの心境を山村が述べると、「一生、スベり倒してたよ?」と、阪井の笑いのクオリティーに難癖を付け始める尼川元気(B)。山村の補足説明によると、ステージに出る前に円陣を組んだ際、「卵の殻が割れた後、お前らどうなるねん? 俺はエッグ・ベネディクトになるけど?」と阪井が宣言した、とのこと。阪井は「お前らが緊張してるのをほぐしてやろう、と思っての一言や!」と主張していた。そんなメンバー間でじゃれ合うようなMCで和ませた後は、「DILEMMA」を披露。

深いリバーブの効いたSEから不穏な気配を漂わせると、「輪廻」を放ち、それまでとはムードを急変させた。阪井が手掛けるこうしたSEが全編において効力を発揮し、曲間の繋がりをなだらかにしていたことを特筆しておきたい。続く「絶体絶命!!!」では紗幕にモノクロームの映像を投射し、熱くもどこかクールな曲の世界観を表現。終盤の阪井のピッキング・スクラッチ、それに伴い荒ぶっていく小倉のドラミングに、観ているこちらも熱が上昇していく。一瞬の静寂の後ピアノの音色が響くと、「強く儚く」へ。洗練されたメロディー、尼川のグルービーなベース・ライン、華やかな音色を放つ阪井のギターソロ……改めて、名曲だなと感じる。『EGG』からの楽曲群の中に置かれることで、既存の曲がまた違った顔を覗かせるのも不思議だ。
MCではメンバー紹介を盛り込み、サポートメンバーの二人が遊び心を覗かせた場面も。磯貝サイモン(Key&Cho)は、“フランプール”であいうえお作文を綴ったメモを取り出し、「フ:不思議なぐらいすべてが楽しかった」「ラ:楽ではなかったけど、バンドが成長できたリハ期間」などと読み上げて会場を沸かせた。


「いくつになっても、人に想いを伝えるのは難しいことだけど、大切なこと。自分にとって大切な人であればあるほど難しい」と、山村は“伝えること”にまつわる想いを真摯に語ると、ラブソング「今日の誓い」を披露。
SEに乗せて赤ちゃんの泣き声が響き、阪井のアタックの効いたカッティングからスタートしたのは、尼川が初めて作詞・作曲を手掛けた「産声」。身体にビシビシと響いてくる小倉のバスドラム、山村の歌声はもちろん、阪井、尼川の渾身のコーラス(小倉も、オフマイクだがしっかりと歌っていた)、シンセで置き換えられたホーン・セクションのフレーズ、後奏の阪井のギターソロ、メンバーの清々しい表情……そのすべてが合わさって体現していたのは、迸るような生命力。セットリストに新しい風を吹き込む威力を誇る曲だ、と実感した。
留守番電話に残された伝言メッセージ、発信音などが鳴り響いた後、奏でられたのは「明日キミが泣かないように」。イントロでは尼川が鉄琴を弾くレアな姿も見どころだった。銀河やピンクの花々、緑の葉、紅葉といった映像が背後に映し出される中、男女の目線が交互に現れるこの歌をじっくりと、たしかな説得力を以て彼らは聴かせた。


ライブは終盤に向かい、火花を散らし合うようなエモーショナルなセッションを経て、「夜は眠れるかい?」を投下。山村は黒いフードをすっぽりとかぶり、エフェクトを施した機械的な歌声で攻撃モード全開。その背後で阪井、尼川は小倉のほうを向き、互いに見合って呼吸を揃え、音を刻んでいく。2番ではフードを脱ぎ去って顔を露わにした山村は、髪が乱れるのも厭わず、曲の世界に深く没頭。感情の篭った迫真の歌と演奏に、観客は皆拳を突き上げて応えた。
「まだまだ行けんのか、東京! 準備はいいか?」と山村が呼び掛けると、「Hydrangea」に雪崩れ込む。メンバーが順に歌い繋ぐことでお馴染みの、愛すべき曲である。まずは阪井が、続いて尼川が歌い(いずれも柔らかい美声だ)、やがて山村へとバトンを渡す。朗らかで明るいムードは「夏Dive」へと自然に引き継がれ、会場は開放感で満たされた。本編最後は『EGG』から、EDM要素を盛り込んだ「World beats」を放ち、タオル回しの旋風を巻き起こす。終盤にはカラフルな紙吹雪が舞い、会場全体が祝祭空間へと塗り替えられた。

アンコールではツアーTシャツに着替えて登場すると、「ステージ上も、客席とも呼吸が同じになって、気持ちいい。
山村は「このツアー、今日がファイナルで終わってしまうのがすごく寂しいし、音楽と向き合って、殻を破って新しい自分と向き合ったツアーだった」と振り返り、「初めて音楽に出会った時のような気持ち、初期衝動というか。この曲で僕たちと出会ってくれた人も多いかもしれない。そんな始まりの曲で終わりたいと思います」と、デビュー曲「花になれ」を披露。山村は、良い意味で無防備な、殻を破って素顔を曝け出した一人の生身の男性としてそこに立ち、歌っているように見えた。

最後は、今回のツアーをサポートした“7人目のメンバー”だと、神宮司治(Dr/レミオロメン)を紹介。昨年、負傷した小倉に代わりドラマーを務めた恩人をステージに招き入れ、互いにハグを交わし合った場面は、彼らが乗り越えて来た苦境を思い起こさせ、胸を打った。11月にはファンクラブツアーが開催されることを告げた後、「ツアーは終わってしまうけど、僕達flumpoolはもっともっと成長して、殻を破ってまた逢いに来るので。バイバイ!」と明るく山村が締め括り、Tシャツを脱ぎ上半身裸になった小倉がステージを降りて客席をダッシュ、およそ2時間半に及ぶステージは終了した。
渾身のアルバム『EGG』を携えたツアーは、山村の重大発表という忘れがたい一場面も盛り込んで、熱気に包まれて幕を閉じた。デビュー以来築き上げてきたバンドのイメージやある種の型を、彼らはこのライブでもたしかに打ち破り、新たな地平を垣間見せてくれた――そんな夜だった。
(取材・文/大前多恵)
≪セットリスト≫
1. 解放区
2. Sprechchor
3. 夏よ止めないで ~You’re Romantic~
4. DILEMMA
5. Dear my friend
6. 輪廻
7. 絶体絶命!!!
8. 強く儚く
9. 今日の誓い
10. 産声
11. 明日キミが泣かないように
12. 夜は眠れるかい?
13. Blue Apple & Red Banana
14. reboot ~あきらめない詩~
15. Hydrangea
16. 夏Dive
17. World beats
<アンコール>
1. 星に願いを
2. 大切なものは君以外に見当たらなくて
3. 花になれ
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