冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載してから10週目。今回は10巻に出てくる左利きの話を中心に、作中の4人の左利きを振り返る。



お前おとといあの子供と腕相撲して負けただろ

ウソだよ いくらアタシでも子供には負けないよ

いやその時お前右手でやったから

なんで? あたし左利きだよ

…………いやいい オレの勘違いだった


「HUNTER×HUNTER」4人の左利きキャラ
ゴンと延々と腕相撲し続けるノブナガが印象的な巻。子どもいびりを楽しんでいたのだが…。26ページには幻影旅団腕相撲ランキングが載っている

9巻でゴンと腕相撲をしたシズク。HUNTER×HUNTER史上、数少ない左利き。うっかり右腕で組んでしまったため、子ども相手に敗北してしまった。
『テニスの王子さま』の越前リョーマや『巨人の星』の星飛雄馬など、スポーツ漫画ではけっこう頻繁に左利きが出てくることが多い。が、スポーツ以外の漫画、アニメでも左利きの人物がさりげなく登場することがある。ただ、シズクが言われたような、左利きに関する一連のやり取りがあるのはちょっとだけ珍しい。
「HUNTER×HUNTER」の世界では、シズク以外にも3人左利きが登場する。

あっさり死んだアゴン


3・4巻に登場したハンター試験の受験生。小柄でポニーテールの男。サーベルで戦う。
4次試験で、欲情したヒソカに襲い掛かられる。
「淵!? い、いや ヒ…ヒソカ!!」
ヒソカの普段とは違う表情を見て、ほんの一瞬、別の人と誤認。淵というのは伊藤潤二の『ファッションモデル』に出てくる登場人物である。

交戦を決意して右肩から抜いたサーベルを左手で構えるが、トランプで切り裂かれて死亡した。

左利きでも上手な筆遣いのバショウ


単行本8巻が初登場。西洋人のような風貌で野性味のある男。ジャポンの伝統文学である俳句を念能力に組み込んで戦う。
ノストラードファミリー採用試験の時には、札を取り出し、左手で筆を執る。
「オレ様が 殴ったモノは みな燃える」
という俳句(日本では川柳扱い)を披露。スパイのあぶり出しに一役買った。
殴る時はまず右手。殴る前のしぐさで指をボキッと鳴らすのも右手。殴る時には右利きなのかもしれない。

人気お笑い芸人とそっくりで利き手も同じゴレイヌ


16巻でゴンたちの仲間になる男。その名の通り、ゴリラにそっくり。白いゴリラと黒いゴリラの2体を具現化する能力(ゴリラたちは右利き)の使い手。
グリードアイランドで、一緒にドッジボールに参加してくれる。
敵チームの雑魚キャラ2体からアウトを奪った。序盤でしっかりゲームを作ってくれた頼れる左腕。
ゴレイヌにそっくりなお笑い芸人・ガレッジセールのゴリも左利きである。


シズク、ゴレイヌ、バショウは今もどこかで苦労している


人というのはあんまり利き手のことを気にしない。みんな右利きだろうと高を括っているからだ。
ハンター×ハンターは、バトルシーンでお互いの心理描写がものすごく丁寧に描かれ、読むのに時間がかかる漫画。しかし、「む、あいつ、左利きか…」というような観察描写は今のところは描かれていない(左利きの戦闘描写がそもそも少ないため)。
はさみがうまく使えない、ボールペンのインクが詰まる、スープ用おたまが使えなくてギクシャクする。ラーメン屋で隣の人と肘がぶつかれば、箸先の麺が滑り落ち、スープがほっぺにはねる。シズク、ゴレイヌ、バショウは今もどこかで苦労しているんじゃないか。
スポーツでは有利とされることが多いサウスポー。念能力バトルでもアドバンテージがあっていいと思う。

(山川悠)

参考→『HUNTER×HUNTER1』10巻。拷問尋問を一蹴した男たち
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