SEKAI NO OWARI 初のドーム&スタジアムツアーが終了!/ライブレポート・セトリ
撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

■SEKAI NO OWARI/【SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017 「タルカス」】ライブレポート
2017.01.23(MON)at さいたまスーパーアリーナ
(※画像33点)

Fukaseが考案する絵本の世界に迷い込む! 幻想と示唆に富んだ、ライブ表現の新たな挑戦を目撃!!

昨年のツアー【The Dinner】で生楽器と見事なアンサンブルを実現し、「バンドに対する苦手意識を克服した」(Nakajin)SEKAI NO OWARI。海外では無名の若手バンドとして一から歩み出すかたわら、動物殺処分ゼロを目指す団体“ブレーメン”を設立するなど、彼らのチャレンジは広がり続ける一方だ。


そんな彼らが、今回のドーム&スタジアムツアーを前に、冗談ぽく「僕らはおまけみたいなもの」と笑った。アーティストが最も主役たりうるライブ……。一体、どんなものを魅せようとしているのか期待値は膨らむばかりだ。

スタジアムモードのさいたまスーパーアリーナには、常にサプライズに満ちたライブを目撃したい観客で埋め尽くされていた。アリーナ中央には巨木がそびえ立ち、そこが360度の円形型ステージの役割を果たすらしい。

いよいよ開演、かと思いきや大型ビジョンにはアニメーションのオランウータンやハシビロコウ(大型の鳥)、象、ムース鹿が映し出され、物語を語り始めたではないか。フロアには実物大と思しき動物たちがステージを囲むように四隅に配され(これが、また実によくできている!!)語りに合わせて動く。一気に、どこぞやの夢の国テーマパークに紛れ込んだような気分になった。

ツアータイトルでもある“Tarkus(タルカス)”は、物語の主人公の名前。とある王国に住むタルカスの身の上に起きた出来事を動物たちが伝え聞き、語る……という趣向だ。

語りに導かれて華やかなファンファーレが鳴り響き、「炎と森のカーニバル」のイントロでようやくメンバーが現れると会場からはわれんばかりの拍手がわき起こった。祝祭感に溢れたオープニングは、まさに架空の王国のキングやクイーンを歓待する光景に見えた。

SEKAI NO OWARI 初のドーム&スタジアムツアーが終了!/ライブレポート・セトリ
撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


華々しく現れたかと思いきや、緊張感のあるスパニッシュギターが鳴り響く「Death Disco」で、突如ダークな世界へ突き落とされた。アーシーなパーカッションが生々しく、より不気味さを駆り立てていた。

続く「虹色の戦争」では、虹色にペンライトが会場を彩る美しい光景へと一変。ポップでキャッチーなナンバーだが、歌詞に込められたメッセージは現代社会に問いかける痛烈さも秘めている。本編全体に言えることだと思うがセカオワが潜在的に有する、二律背反的な色彩がより濃厚に示されていたライブだったように見て取れた。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


数曲を演奏するごとに動物たちが物語を語り進め、そのストーリーに導かれるように楽曲が演奏される……というスタイルは、記憶する限りポップやロックバンドのライブで見たことがない。それどころか、今やライブの重要要素であるMCがほぼ排除されていたのには驚かされた。だが、愉快なトークはなくとも彼らの紡ぐ音と映像が織りなす寓話の世界は魅力的で、どんどんと引き込まれてしまうのだ。

そもそもセカオワは、仕掛けの巧みさや企画力に定評があるが、それを凌駕するほどにライブパフォーマンスの充実が素晴らしかった。近年、国内外で力を蓄えた彼らの表現力は、着実に分厚い筋肉となり、厚みと深みのある歌と音に結実していた。

ライブ筋力がついたからこそ、多彩なアレンジも冴え渡った。たとえば、祭囃子とディスコビートを掛け合わせた新鮮な「ムーンライトステーション」で、オーディエンスは自然と体を揺らしていたように。
ここでNakajinは三味線を披露したが、この日の彼はギターはもちろん東西様々な弦楽器に意欲的に取り組み、プレイヤーとしての進化をまざまざと見せつけていた。
SEKAI NO OWARI 初のドーム&スタジアムツアーが終了!/ライブレポート・セトリ
撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


また、Fukaseはボーカリストとして揺るぎない存在感で観客を物語の世界へと引き込んでいた。Saoriのシアトリカルなピアノとストリングスで厳かに始まる「Never Ending World」は痛みと希望を併せ持つ大きなメッセージを内包するバラードだ。それをFukaseは、大きな思いを丸ごと包み込むような包容力で歌い上げてみせ、その演奏と歌声のパワーに思わず肌が泡立ったほどだ。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


火柱が次々と打ち上がり「Monsoon Night」で主人公・タルカスの怒りや悔しさが頂点を極めた時、ライブは15分間の休憩を告げた。普通なら最高潮に達した勢いを借り、後半戦になだれ込むのが定石だろう。一見、常軌を逸しているかにも思えるが、だからこそセカオワのやることに誰もがワクワクするし、その先が気になって仕方がなくなるのだ。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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休憩タイムの後には、空中を泳ぐ新キャラクターの巨大クジラが、タルカスのアナザーストーリーを語り始めた。

その物語にそうように、壮麗なストリングスとバンドサウンドが見事に溶け合った「眠り姫」から後半戦がスタート。続いて演奏された「Love the warz ~rearranged~」では、暗がりの会場の天井に向けて何本もの赤い光の柱が貫き、楽曲の重厚さと照明の重々しさから、一瞬にして会場が監獄と化したように思えた。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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そうやってめくるめく演出で魅せながらも、確かに演奏者である4人が目立つシーンは最後までほぼなかった。アンコールのMCで明らかになったのだが、今回のライブの核をなす物語は、Fukaseが考えたものだという。
若いファンをことさらに大事に思うFukaseなりの、示唆に富んだメッセージを伝えるには、死や対立も隠すことなく描こうという決意に至らせたのかもしれない。元来、生死についても恐れずに歌ってきた、そして不可能な演出を実現してきた彼らだからこそ到達できたライブ表現なのだろう。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


楽しいだけで十分のライブに、意思を反映させ、見る者も共に考えようと提案する。ややもすると説教じみてしまうため、この試みはアーティストとして大いなる挑戦だ。それでも彼らは思いを伝えようとする。Fukaseという人、そしてSEKAI NO OWARIというバンドは、音楽という最良の翼を得た活動家のようだなと、ふと思った。

さて、小難しい話はこのくらいにしよう。重厚なメッセージが続いた後で「SOS」が奏でられた時、誰もがきっと救いを見たのではないだろうか。白い光に包まれながら鳴らされる、どこまでも澄み切った清らかなこの曲は、それまでの文脈のせいか鎮魂の歌のようにも聴こえた。流れるようなNakajinの冴え渡るアコギや、ファルセットで優しく歌い掛けるFukaseの姿は神々しくすら見え、わけもなく涙が溢れそうになった。

続く「Hey Ho」では、ケルティックのフォークロア感に人の奏でるぬくもりにホッとした。Saoriもアコーディオンを手にステージを歩き回り、ようやく4人が一堂に会した。
仲睦まじそうな姿を見たファンも皆嬉しそうに、“Hey Ho!”と叫んでいる姿が微笑ましく印象的だった。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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そして、本編ラストの「Dragon Night」へ。実は、ここに物語上の最大のトラップが仕掛けられていた。悲しいはずの物語のエンディングから転じ、すべての人が手を取り合おうと訴える前向きな物語に成った瞬間だった。

そう、それはまさに「Dragon Night」の歌詞そのもの。それまでの言葉にできないモヤモヤした気分を全て吹き飛ばすかのように、観客は大声で歌い、飛び跳ね、一つになった。タルカスの詳しい物語は、いつかFukaseが完成させるという絵本で確かめてみてほしい。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓


ファンが恒例の「スターライトパレード」の大合唱でアンコールをねだると、4人は嬉しそうに再びステージに戻り、ハートウォーミングな名曲「RPG」で応えた。

「アンコール、ありがとう! ライブ、楽しんでますか? やっとここでしゃべります(笑)。今回は初めてのことが多くて大変だったよね」とNakajinが笑うと、DJ LOVEは「やっと4人が見えるようになった」と応じる。それまでは、巨木がそびえる円形ステージ東西南北にそれぞれが分かれてプレイしていたため、それぞれがアイコンタクトを取ることも難しかったのだ。

「絵本を作ろうと思ったけど、なかなか進まなくて。
ほら、もともと絵を描く人じゃないし(笑)。みんなで海外に行った時もスタッフがすごい数の色鉛筆を用意してくれて。ここで何やってるんだろうって思った」と、“タルカス”の生みの親であるFukaseは、新しいチャレンジへの苦労を笑いながら吐露した。

「Fukaseから『絵本を作る!』って、いきなり(ストーリーを)グループLINEで送られてきたよね(笑)」と、Saoriが笑う。突然ひらめくFukaseのアイデアにこれまでも臨機応変に対応し、形にしてきた彼ららしいエピソードだなと思った。
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撮影 太田好治、アミタマリ、神藤剛、立脇卓

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「あと残り1曲ですが、最後まで心を込めて歌います」とSaoriが語り、パーカッシブなピアノを轟かせて「インスタントラジオ」へ。タオルを振り、ペンライトを揺らしてオーディエンスの全てがラスト1曲まで楽しみ尽くそうとしていた。

その一体感に溢れた光景を見ながら、彼らの成そうとしていることの凄さを改めて痛感した。確かに「僕らは脇役のようなもの」だったかもしれない。だが、人を少し脇に置いたことで、楽曲本来のパワーやメッセージにスポットライトが当たり、よりそれを深く知ることができたように思う。“曲に耳を傾け、心を震わせる”というライブ本来の姿を、今までにない形で見事に実現した彼らに拍手喝采を贈りたい!そんな気分にさせられた夜だった。
(取材・文/橘川有子)

≪セットリスト≫
1. 炎と森のカーニバル
2. Death Disco
3. 虹色の戦争
4. 死の魔法
5. ムーンライトステーション
6. 青い太陽
7. Never Ending World
8. マーメイドラプソディー
9. Monsoon Night
休憩
10. 眠り姫
11. Love the warz -rearranged-
12. Error
13. 天使と悪魔
14. SOS
15. Hey Ho
16. Dragon Night
<アンコール>
1. RPG
2. インスタントラジオ

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