経済産業省資源エネルギー庁が主催する「資源のない日本、将来のエネルギーの姿に関するシンポジウム」が、福岡(2月11日)、仙台(同19日)、大阪(同25日)の3会場で開かれた。日本におけるエネルギーの現状や将来の姿について、有識者による講演会、パネルディスカッションなどを実施。訪れた地域住民は熱心に耳を傾けていた。

■エネルギー構造の問題点とエネルギーミックス

各シンポジウムの冒頭では、資源エネルギー庁の小澤典明資源エネルギー政策統括調整官が登壇。「エネルギー政策の要は、安全性を大前提としたうえで、低コストで、環境に優しいエネルギーを安定的に供給することである」と述べ、「昨今エネルギー構造のアンバランス、発電コストの増大が大きな課題となっている」と問題提起した。
政府は2014年4月に「エネルギー基本計画」を閣議決定。2030年度に向けて、再生可能エネルギー22~24%、原子力20~22%、LNG27%、石炭26%の割合で、バランスのとれたエネルギー構成(エネルギーミックス)の実現を目指しているという。

資源のない日本は、未来のエネルギーをどうするべきか PR


有識者による基調講演に続いて開催されたパネルディスカッションでも、現状のエネルギー構造の問題点が議論された。話題に上がったのは日本のエネルギー自給率の低さだ。現在6%まで落ちており、これはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で下から2番目だという。
しかも電源の9割を化石エネルギーに依存していることから、「化石燃料の輸入増大が電気料金の上昇にも影響している」、「海外に依存した非常に脆弱なエネルギー構造である」といったコスト面、安定供給の面での問題点が登壇者から指摘された。

■再生可能エネルギーのコスト

エネルギーミックスの実現に向けて、政府は再生可能エネルギーの導入を進めているが、現状は「高コストなため国民負担が増えてしまい、それが課題となっている」そうだ。パネルディスカッションでは昨年、九州全体の半分の量を再生可能エネルギーで賄った(※瞬間値)という話題があがった一方で、「雨や雲などの日照条件によって発電量が小さくなる」といった安定供給における課題もあるという。また「固定価格買取制度(FIT)により、電気料金に加算される賦課金による電気料金の上昇」という問題点もあがった。料金面に関して国は負担抑制に向けて、2017年4月以降制度を改正し、買取価格の決定方法を見直すなど対策を進めているそうだ。

■エネルギーミックスにおける原子力発電

エネルギーミックスにおける原子力発電の役割もパネルディスカッションで議論に。小澤氏は「原子力は、電気の安定供給、コスト削減、CO2排出量の抑制を実現するためには欠かせないベースロード電源であるが、原子力発電所の再稼働に当たってはその安全性の確保が大前提。原子力規制委員会が新規制基準に基づいた審査を行っている」と発言した。
それに対し、「新規制基準の制定によって原子力発電所の安全性は高まったと思うが、それが一般の方々に伝わっているか疑問」という意見や、「我々世代のツケを将来世代に残さないためにも、課題解決を担っていく技術者の人材育成について真剣に考えるべき」という声もあがった。


■海外のエネルギーはどうなっているのか

日本の電気料金は国際的にも高いのが現状だというが、海外のエネルギーミックスの事情はどうなっているのか。登壇者の発言によると、アメリカではシェール革命により天然ガスの利用が拡大し、自給率は約90%に。イギリスは原子力発電所の新設と再生可能エネルギーの併用を推進しているが、割賦金などの影響で電気料金は高騰。ドイツは原子力の比率を下げ、再生可能エネルギーの導入拡大を進めているが、不安定な再生可能エネルギーが増えたため、バックアップ電源として火力発電を稼働させることで、CO2排出量が増加しているそうだ。

経済活動を展開する上で、いかにエネルギー消費を抑える工夫をするか、クリーンにエネルギーを使うか、というのは各国共通の課題であるとして、「日本が開発した技術で世界に貢献できるよう、強い気持ちで取り組んでいく必要がある」と未来のエネルギーをどうするか活発に議論されていた。

【提供:経済産業省資源エネルギー庁