
昨今、若者の飲み会離れがささやかれている。2013年3月に第一三共ヘルスケアが行った20代男性サラリーマンに対する「会社の飲み会」に関する調査では、「会社の飲み会が嫌い」と答えた人は56%と半数以上を占めた。
20代にとって、もはや終業後に飲みに行くスタイルは魅力的ではないのかもしれない。しかし経営層や上司からすれば、社員同士の交流は生産性向上のためにも欠かせない。
そんな時代の流れを追うように、古い慣習にとらわれない新しい「飲みニケーション」の形が登場している。ある会社の例を紹介しよう。
他部署メンバー3人以内で飲みに行ったら1人3,000円まで補助
クラウド名刺管理サービスを展開するSansan株式会社は、違う部署の人と3人以内で飲みに行ったら1人3,000円を上限に実費を支給する「Know me」制度を、2010年より開始。創業3年目、社員が50名を超えたタイミングだったという。
利用できるのは月2回まで。新入社員なら3回までOKだ。ランチの場合は1,000円まで会社が負担する。(ランチでは飲酒禁止)
この「Know me」を導入した目的と成果を、Sansanの担当者は次のように語る。
「弊社はクラウド名刺管理サービス事業のみを行っており、すべての部署が密接に関わりあっています。社員同士が意見交換を積極的に行いお互いのことをよく知ることで、日常のコミュニケーションを円滑にし、業務に役立ててもらうことが目的です。事業成長を加速させることに一役買っています」
「3人がお互いを知るのにベストな人数」
ところでなぜ3人以内なのか。また、同じ部署の人は複数人いてもいいのだろうか。
「2人だと少し誘いづらく、4人だと2:2に分かれてしまうため、3人がお互いを知るのにベストな人数だと考えています。3人中、部署の違うペアが1組以上いることが条件です」
実際、利用している社員はどれくらいいるのか。また、社員からの評判も気になるところ。
「現在の従業員300名ほどのうち、毎月100名程度が利用しています。社員からは総じて好評で、次のような声が上がっています」
・話したことない人、役員や上司相手でも「Know meいきませんか?」と誘いやすい。
・それぞれの部署のがんばりを知ることによって、自分の仕事のモチベーションも上がる。
・特に新入社員は、会社の文化や他部署が何をやっているのかを知るきっかけになる。
自ら誘うことで自主性が生まれ、会社から飲み代が出るからには意味のある飲み会にしたい。そんな心理が働きそうな制度だ。
「企業の戦略として」「採用時に」飲みを活用する企業も

こうした新しい飲みニュケーションは、部署間交流だけでなく、さまざまな角度から取り入れられている。
例えば、株式会社リビアスは「仕事の現場を離れて、半年に一度、部下の話を聴く場」を「飲みニケーション」と名付けて実施している。経営計画書にもその実施方針が記載されているという。
また、株式会社ココナラや金井重要工業株式会社は、採用の時点で「飲み」を取り入れているという。面接のかしこまった場とは異なる、ざっくばらんに話せる飲みの場での振る舞いや対話を通して、その人の本質を見抜くというわけだ。
いずれも、嫌われつつある「会社の飲み会」のいい側面を活用しようという意図を感じる例といえる。
(石原亜香利)
取材協力
Sansan株式会社
「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」ことをミッションに、クラウド名刺管理サービスを開発・提供。
法人向け「Sansan」https://jp.sansan.com 個人向け「Eight」https://8card.net