人材サービスのパーソルキャリアが運営する、転職サービス「DODA」の編集長を務める、大浦征也さんにお話を伺ってきました。

「意識高い系」は高評価、それとも低評価?
――「意識高い系」の人はどう転職市場でどう評価されていますか?
「ストレートにお答えすると、『意識高い系』であること自体が直接的に評価を左右することはないと思います。中途採用のマーケットにおいては、実態として過去にどのような経験や実績を積み、どんなスキルを保有しており、それをこの会社にどう活かせるのかという部分が評価項目となります。
――「意識の高さ」は関係ないということですか?
「正確に言うと、その意識の高さによりどのような行動をとったのか、どのような実績が出たのかが重要になります。その人の取り組んでいた意識高い系の活動、例えば『ある社会課題に対して問題意識を持ち、こんな取り組みをして、こんな価値を生み出した』、『復興支援に向けてこんな取り組みをして、こんな成果を出した』といったエピソードに、ある一定の尖りがある場合。そのレベルまで極めたからこそ見える風景があり、それをビジネスに応用できるイメージがあれば、ポジティブな評価を受ける場合もあります。ですがそのレベルにはないにもかかわらず、中途採用マーケットで一般的に評価される項目を差し置いて、『自分は意識が高いです』というようなことをアピールしてしまうと、当然ですが評価はされません」
――よほどの尖りがなければアピール材料にはならない。
「よほどの尖りという訳ではないですが、実際の業務での成功体験や実績に匹敵するだけのエピソードや、結果が必要ということですね。もうひとつ、すごくネガティブに捉えられがちなパターンとしては、意識高い系の取り組みの裏で普段の業務の部分がないがしろになっているケースです。
徹底的に極めれば評価される

「それでも意識高い系の活動を転職活動に活かしていくのであれば、評価せざるを得ないほど徹底的に極める、今やっている意識高い系の活動をもっともっとやり切ってみるというのはアリです。『中途半端に取り組んで本業がおろそかになったらネガティブに評価される』と先程いいましたが、尖りまくっていれば、何かがおろそかになっても評価される可能性はあります。『すみません、自分はこの意識高い系の取り組みに本腰入りすぎて、現職の仕事がおろそかになってしまいましたが、それでもこの取り組みではこのレベルまでやりました。こんな成果を残しました』と言い切れるのであれば、それはもはや意識高い系ですらなく、その意識によって結果を出しているので、ポジティブに評価される対象になります」
――どんな意識でやっていたかではなく、何を成し遂げたかということの方が大切ということですね。
「簡単に言えばそういうことですね。どんな意識だったかではなく、何をやったのか、何を実現したのか、何を果たしたかの方が重要。ですが、そのレベルまでいくには一定の尖りがなければいけない。
――評価項目に入れるほどの尖っている人と、そうでない人との境界線はどういったものでしょうか?
「いくつかありますが、分かり易く言えば、成し遂げたことを定量的に語れるか否かですね。復興支援でいえば、『現地でこんな新規事業の立案をして、現地で何人の雇用を抱えながらこれだけの収益が出ていて、もはや自分の出る幕はなくなっています』というところまでいけば、ひとつの実績となるでしょう。若者の就職支援ならば『学生の就活支援で100人の子たちと面談して、その人たちの就活を応援しています』ではなく、『実際に過去の一昨年の学生よりも入社先がこう変わって、その後の定着率がこう変わったんです』と結果まで話せるのであれば実例として言えます」
転職活動のために取り組んできたわけではないはず
――意識高い系の中でも、成果を定量化できるほど尖っている少数の人はポジティブに評価されるということですが、そうではない人はやはり前向きには評価されないのでしょうか。
「もうひとつ、本業の話をしていく中に、意識高い系の活動についての話を上手く練り込む方法もあります。つまり、学生時代にやっていた学生団体の活動内容を単に事実だけを語っても評価されませんが、『社会に対してこういう問題意識を持ちながらビジネスをやっています。ちなみに、そのきっかけは学生時代にこういう活動をやっていたことです』という言い方ができれば、意識高い系というよりも『本質的な人』と企業は評価します」
――「こんな取り組みをした」という事実だけでは評価されないが、そこから何を得たか、得たものを志望先の仕事にどう活かせるかということが大切なんですね。
「もうひとつ重要なのは、意識の高い取り組みが転職活動の成功を目的としたものではないことです。尖っていようと、そうでなかろうと、社会に対して何らかの問題意識をもって行動するのは素晴らしいことです。何年か前に芸能人が『カンボジアに学校を作る』と発言して、『偽善だ』などと批判を浴びましたが、その芸能人は『やらないよりはやった方が良い』とコメントしており、その通りだと思いました。ただしそれは、転職とは別の話です。転職活動に役立ててやろうと欲を出しすぎると、マイナスの評価につながることもあり得ます。
積極的にそうした活動をアピールするのではなく、例えば面接官からふと週末は何しているのか話を振られた時、『ボランティアしています』『実は学生時代からこういう問題意識を持っていて、今でも月に一度ぐらいこういうことをしています』と答えるだけで前向きに受け取られます。
(辺川 銀)