
■リリースがない間、10-FEETは何をしていたのか?
前作アルバム『thread』がリリースされたのは、2012年9月のこと。それから今に至るまで、彼らはほとんど止まっていなかったと言っても過言ではない。自身が企画するフェス『京都大作戦』を毎年欠かさず行ってきただけではなく、東北地方を中心に廻る『東日本大作戦』ツアーや、『ONE-MAN』ツアー、『どこ行く年!どないすん年!』ツアーなど、毎年ツアーを慣行。そして2015年には『ARABAKI ROCK FEST.』トリ、『VIVA LA ROCK』2日目トリ、『FUJI ROCK FESTIVAL』GREEN STAGE2日目トップバッター、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』大トリ、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』大トリ、『COUNTDOWN JAPAN』カウントダウン役など、多くの大型フェスにおいて注目のステージを担うこととなった。
もちろん「フェスを制覇すること=バンドの価値」と簡単に結び付けてはいけないが、この年の彼らの偉業に関しては、彼らが積み重ねてきたライブ・パフォーマンスがオーディエンスに評価され、フェスを動かした結果だと言っていいと思う。そして、新曲をリリースすることがバンドの全てを左右するわけではない――と、世の中に向けて証明したようにも見えた。
■初期から揺るがぬ「ライブ中心」の活動
とは言え彼らの「ライブ中心」の活動は、近年にはじまったことではない。彼らが結成されたのは、1997年。まだまだCDはミリオンセラーが頻発するほど売り上げがあり、フェスといえば『FUJI ROCK FESTIVAL』の初回が開催された黎明期。今と音楽シーンの状況は全く異なるものだった。
■ニューアルバム『Fin』に高まる期待
2010年代になってから、彼らはぐっと寡作になった。その少し前から「CDが売れない時代」「若手バンドの夢は大型フェスに出ること」など、当時の音楽シーンの通例とは異なるような言葉が飛び交いはじめた。彼らの「ライブ中心」のスタンスは、時代とシンクロすることとなったのだ。彼らが時代を予見していたのかどうかは定かではないが……彼らが目の前にいる人に言葉と音を届けるという、基本中の基本を大切にし続けてきたことは確かだ。ここからはあくまで想像だが、そういったことを大切にするがゆえに、どんな言葉を届けるか、どんな音を届けるか慎重になっていったのではないだろうか。
そんな月日を経て完成した『Fin』。きっと今作には、彼らがこの5年間で出会った人や感じた喜怒哀楽など、音楽にまつわる時間のみならずすべての日々で得たものが詰まっているはずだ。
Writer:高橋美穂
(提供:ヨムミル!Online)