
■コブクロ/【KOBUKURO LIVE TOUR 2017 “TIMELESS WORLD”】ライブレポート
2017.11.26(SUN) at さいたまスーパーアリーナ
(※画像8点)
2017年7月の新潟公演から約5ヶ月をかけて全国を回ってきたコブクロ。全30公演、のべ25万人を動員した大規模ツアーも、さいたまスーパーアリーナ2Daysでついにファイナルを迎えた。
360度どこからでも丸見えのステージは、彼らの自信と決意の表れだろう。四方に延びた花道は、少しでも観客の側に行きたいという2人の願いに違いない。ツアータイトルでもある「心」というフレーズを既存曲から繋いだオープニング映像が流れ始めた。いかに彼らが「心」を大切に歌ってきたか改めて気づかされた。


花道の両端に立つ2人がスポットライトに浮かび上がると、2万人は大きな歓声をあげた。小渕の「行くぞ、さいたま!」の掛け声とともに新曲「君になれ」でライブはスタート! 小渕のパワフルなギターと深みのある黒田の歌声に乗せ「負ける意味を知る時だ」と語りかける。単に慰めるのではなく、自分の今を知ることで本当の自分になれる。のっけからなんとも重みのあるメッセージだ。
2人のハーモニーが美しく響く「虹」では、ナチュラルでオーガニックなバンドサウンドがなんとも贅沢。疾走感のある甘酸っぱいナンバー「君という名の翼」では、このツアーで初導入されたリストバンド式のライトが一斉に青に変わり、幻想的な空間を作り上げた。続くごきげんなナンバー「tOKi meki」では、赤いライトで埋め尽くされた。小渕が「踊ろう、さいたま!」と呼びかけ、さらにホットなムードが満ちていった。
コブクロのライブといえば、良質の楽曲と心に寄り添う言葉と歌声に加え、軽妙な掛け合いによるMCも見どころ。1発目のMCで、小渕がサンシャイン池崎のマネをしたことはすでにニュースになりご存知の人も多いだろう。「長かったツアーも今日で最後。その思いを歌で届けたい」と黒田が珍しく(?)真顔で言うと、小渕がすかさず「アイドルにでもなったの?」と突っ込む。そんな肩のこらないやり取りからも、彼らの濃密な19年の歴史がかいま見えるようだ。


「心はいつまでも未完成。21130人、全員がここに違う心で集まってくれました。(それぞれ違う心が)何にも縛られない自由なライブをしたい。皆さんの最高の楽器である手拍子と笑顔で、僕らを指揮してください」
小渕の心にしみる言葉を受けて、「紙飛行機」の演奏が始まった。恋の戸惑いとときめきを歌う爽やかなナンバーに乗せたくさんの紙飛行機が舞い降り、ウォームな空気で会場がいっぱいになった。
深みのあるアコギのストロークに導かれるように「SUNRISE」へ。赤い2万余のライトと濃いオレンジの光に包まれながら、スケールの大きなバラードを歌い上げる様は圧巻だった。

「のんびりとてくてく歩くようなナンバーです」と小渕が紹介した「LIFE」や、風鈴の音から始まるノスタルジックで胸がきゅんとする「夏の雫」など、セットリストの多くが新曲で占めているのも紛れもなく挑戦である。「このツアーは新曲ばかりです。リリース前に聴いてもらえるのもライブの楽しみなんですよね。ライブで聴いて少しでも覚えてもらえたら嬉しい」と小渕は言った。ストリートで磨いてきた耳に残るメロディと言葉、歌声が彼らの原点であり宝物。それをアリーナライブを行えるまでになった今も大切にしていることに胸が熱くなる。
笑いあり涙あり。後半のMCで小渕はこんなことを語り始めた。

「98年に僕らはストリートでスタートしました。あるとき、今の会長のミノスケさんが『屋根のあるところでライブをやらないか』と声をかけてくれました。その頃にはたくさんの人が足を止めて聴いてくれるようになったので、ノートには(ライブを見てくれた人の)連絡先が2000人ほど集まりました。その人たちに会長はライブへの誘いの手紙を書いてくれました。だから、150人ほどのキャパのライブは簡単に埋まると思っていたんです。でも……、実際に集まってくれたのは68人だった。その体験が僕らの原点です」
コブクロが誠実に、真摯に歌を作り届け続けられるわけが分かった気がした。
「この曲を届けたくてツアーをしてきた」と小渕が明言する新曲「心」は、そんな彼らの真髄が遺憾なく発揮されていた。青い薄暗がりの中で、切々と歌われる言葉は手放しで楽しいものではない。心をないがしろにしたり、時には心を偽って生きる自分への戒めのようにも聞こえ、大人ほど耳が痛いと感じるかもしれない。だが、その重厚なメッセージをあえてコブクロはライブの核に据えた。単に浮かれるだけではなく、何かを投げかけ考えるきっかけを与える。
「心」が佳境に入ると、奇跡のような瞬間が訪れた。なんと、2人は完全にアンプラグドで歌い始めたのだ。「傷だらけになったけど、ずっとここにいるよ」と歌う、裸の声による心の叫びに思わず肌が泡立った。そしてその歌声は21130人の心に染み入り大きな感動の渦となった、歌い終えた瞬間、この日一番の大きな拍手と歓声が贈られたのだった。「30公演歌い続けてきて、やっと今日完成したなと思います。一生歌い続けたいです」と感慨深げに語った小渕。彼らの新しいスタンダードソングが生まれた瞬間だったかもしれない。

神聖な空気をぶち破るように、黒田はステージにへたり込みながら「俺も30公演の集大成と思って歌ってるよ。なのに、『夏の雫』の大事なところで急にくしゃみですよ。そんなことある? 今までライブで歌ってる途中で、くしゃみなんかしたことあった?」と小渕に泣きつく。その瞬間、会場の空気も一気に解け、笑いに包まれた。
和気あいあいとした空気の中、重大発表がなされた。2018年春から開催する全国ツアーでは、バンドメンバー無しの2人だけによる弾き語りに初めて挑戦するというのだ。そのチャレンジに観客は、大きな声をあげて歓迎の意を示したのは言うまでもない。
「ここからは最高に盛り上がっていきます!」と小渕が宣言し、怒涛の終盤へとなだれ込んだ。ロマンチックでわくわくするアップテンポな新曲「白雪」では、きらめく雪のように紙吹雪が舞った。続く「memory」ではキャノン砲から銀テープが放射。パワフルなロックチューン「神風」では、花道の最先端まで走って行き歌とエネルギーを隅々にまで届けた。小渕は切れ味鋭いカッティングギターをかき鳴らしラストの「ストリートのテーマ」へ。軽快なナンバーをコール&レスポンスで歌い合い、2万人が心を1つにした。

主役がステージを去った後も、2人を呼ぶ歌声はいつまでも止むことはなかった。その声に導かれるように再び登壇。「白いライトを光らせましょう」と小渕が呼びかけ、ゆったりとして夢見るようなナンバー「未来」を歌い始めた。
オールラストは、彼らにとってもファンにとっても大切な曲であろう「轍 -わだち-」で締めた。手拍子と大合唱に包まれて温かで深い絆を感じた3時間半だった。何かを投げかけ、そして受け取る。見えないキャッチーボールはきっと次の20年も続いていくのだろうな……、ふとそんな2人の姿が見えた気がした。
(取材・文/橘川有子)
≪セットリスト≫
1. 君になれ
2. 虹
3. 君という名の翼
4. tOKi meki
5. 紙飛行機
6. SUNRISE
7. HELLO, NEW DAY
8. LIFE
9. 夏の雫
10. 流星
11. Starting Line
12. 蒼く 優しく
13. 心
14. 白雪
15. memory
16. 神風
17. ストリートのテーマ
18. 未来
19. 轍-わだち-
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