労働環境の厳しさや人手不足など、暗い話題がピックアップされがちな介護業界。そんな中、介護職の仕事を「時間」ではなく「業務内容」で切り分ける「介護シェアリング」を推進している企業があります。
――介護シェアリングとは一体どのような働き方なのでしょうか?
鈴木:従来の介護職は「早番」「日勤」「夜勤」のように、時間ごとのシフトで切り分けられていて、それぞれの時間を担当するスタッフが介護にまつわるすべての業務を担っていました。しかし介護職の業務内容は多岐に渡るので、ひとりひとりのスタッフがその全部をこなすことは高いハードルです。
たとえば40~60代のスタッフにはパソコンの入力が不得意という方が多いですし、入浴介助や重いものを持ち上げるような仕事は、体力面で不安のある方にとっては大きな負担でした。そこで、介護の仕事を時間で切り分けるのではなく、「送迎」「入浴介助」「レクリエーション」「清掃」など、業務内容を細かく切り分けて、それぞれを専門のスタッフにやっていただこうという業務形態が介護シェアリングです。
――実際にやってみて、どのような効果が出ていますか?
鈴木:採用活動においても、従来の介護職の場合は、有資格者であり、なおかつフルタイムで働ける方というのが募集の対象でした。ですが介護シェアリングの働き方であれば、「主婦の方が、調理補助専門のスタッフとして、子どもが幼稚園に行っているあいだに1~3時間だけ働く」「資格は持っていないが、清掃や見守り介助といった、資格を必要としない業務専門のスタッフとして働く」といった形で、これまで介護業界がアプローチしてこなかった人材にも働いていただけるようになりました。
――介護を仕事にしようと考えた時、これまでは介護にまつわる仕事を全部できるか否か、0か100かという選択肢しかなかった。その構図に変化をもたらしているわけですね。
鈴木:100のうち40だけ関わる、30だけ携わるという選択肢を作ったことで、「それなら自分にもできる。やってみたい」と思ってくれた方が現場に入ってくれるようになりました。
――介護シェアリングによって、これまで時間で切り分けて働いていた、従来の介護スタッフの働き方はどのように変化するのでしょうか?
鈴木:もちろん介護の業務をすべて切り取ることができるわけではありません。従来のように時間で切り分けた働き方をするスタッフもそのまま残ります。けれど以前は全部ひとりで行っていた送迎や清掃、配膳などの業務を、それぞれ専門のスタッフが担うことで、従来のスタッフは雑多な業務に忙殺されることなく、利用者さまの思いを叶えるための時間を多く持てるようになりました。
介護職の根底には「その人がその人らしく生きることを支える」という価値観があります。介護シェアリングの導入によって、その価値観に基づいた、より本質的な介護ができるようになったという声が、すでに現場からも多く聞こえています。
――介護の仕事に対しては、残念ながら「3K(きつい・きたない・危険)」といったマイナスイメージを持っておられる方が多いですが、実際の介護現場はどのようなものなのかお話いただければと思います。
鈴木:これについては、新卒から介護業界で働いていた中井からお話させていただきます。
中井:いわゆる「3K」の仕事、という側面はあります。そこを否定して、全てが綺麗な仕事だということはありません。そんなに優しい仕事ではないという点は確かに事実です。けれど介護の仕事を長く続けている方に、この仕事の何が楽しいかということを訊いてみると、真っ先に挙がるのは「ありがとう」と感謝してもらえることの多さですね。
――感謝されるのはどんな時でしょうか?
中井:たとえば左半身麻痺の利用者様が左側にスプーンを落としてしまった場合、左半身は動かないので自分では拾うことができませんが、その時そこにいたスタッフがそれを拾います。
――巷では介護職の問題点や、大変な部分を耳にする機会が多いですが、そういったエピソードを聞かせていただくと、きちんと魅力のある仕事なのだなと感じます。
中井:大変なことはもちろんあります。給料も基本的には高くありません。一方で、他者からの感謝をこんなにもダイレクトに受け取れる仕事もなかなかありません。
――最後に、今後、介護の担い手となっていくであろう20~30代の若い世代に向けて、何かメッセージをいただければと思います。
鈴木:働き方改革の一環として、副業が解禁されはじめています。メインの仕事に加えた、もうひとつの仕事を選ぶ際に、その選択肢のひとつとして「副業介護」というものを考えていただけたら嬉しいですね。
――短時間でも携われる介護シェアリングの働き方は、確かに副業との相性も良いような気がします。
鈴木:今後、介護シェアリングがより普及していけば、身近なエリアや自分の地元で暮らすおじいちゃんやおばあちゃんを、副業という形で支えていく選択肢が選びやすくなっていくかと思います。私たちとしても、その後押しをさせていただければ幸いです。
(辺川 銀)
リジョブ代表取締役社長・鈴木一平さんと、事業推進室の中井祐輔さんにお話を伺いました。

株式会社リジョブ 鈴木一平社長(左)
利用者の思いを叶える。本質的な介護を
――介護シェアリングとは一体どのような働き方なのでしょうか?
鈴木:従来の介護職は「早番」「日勤」「夜勤」のように、時間ごとのシフトで切り分けられていて、それぞれの時間を担当するスタッフが介護にまつわるすべての業務を担っていました。しかし介護職の業務内容は多岐に渡るので、ひとりひとりのスタッフがその全部をこなすことは高いハードルです。
たとえば40~60代のスタッフにはパソコンの入力が不得意という方が多いですし、入浴介助や重いものを持ち上げるような仕事は、体力面で不安のある方にとっては大きな負担でした。そこで、介護の仕事を時間で切り分けるのではなく、「送迎」「入浴介助」「レクリエーション」「清掃」など、業務内容を細かく切り分けて、それぞれを専門のスタッフにやっていただこうという業務形態が介護シェアリングです。
――実際にやってみて、どのような効果が出ていますか?
鈴木:採用活動においても、従来の介護職の場合は、有資格者であり、なおかつフルタイムで働ける方というのが募集の対象でした。ですが介護シェアリングの働き方であれば、「主婦の方が、調理補助専門のスタッフとして、子どもが幼稚園に行っているあいだに1~3時間だけ働く」「資格は持っていないが、清掃や見守り介助といった、資格を必要としない業務専門のスタッフとして働く」といった形で、これまで介護業界がアプローチしてこなかった人材にも働いていただけるようになりました。
――介護を仕事にしようと考えた時、これまでは介護にまつわる仕事を全部できるか否か、0か100かという選択肢しかなかった。その構図に変化をもたらしているわけですね。
鈴木:100のうち40だけ関わる、30だけ携わるという選択肢を作ったことで、「それなら自分にもできる。やってみたい」と思ってくれた方が現場に入ってくれるようになりました。
これによって働き手の不足も改善していけたらと考えています。
――介護シェアリングによって、これまで時間で切り分けて働いていた、従来の介護スタッフの働き方はどのように変化するのでしょうか?
鈴木:もちろん介護の業務をすべて切り取ることができるわけではありません。従来のように時間で切り分けた働き方をするスタッフもそのまま残ります。けれど以前は全部ひとりで行っていた送迎や清掃、配膳などの業務を、それぞれ専門のスタッフが担うことで、従来のスタッフは雑多な業務に忙殺されることなく、利用者さまの思いを叶えるための時間を多く持てるようになりました。
介護職の根底には「その人がその人らしく生きることを支える」という価値観があります。介護シェアリングの導入によって、その価値観に基づいた、より本質的な介護ができるようになったという声が、すでに現場からも多く聞こえています。

介護職は本当に「3K」なのか?
――介護の仕事に対しては、残念ながら「3K(きつい・きたない・危険)」といったマイナスイメージを持っておられる方が多いですが、実際の介護現場はどのようなものなのかお話いただければと思います。
鈴木:これについては、新卒から介護業界で働いていた中井からお話させていただきます。
中井:いわゆる「3K」の仕事、という側面はあります。そこを否定して、全てが綺麗な仕事だということはありません。そんなに優しい仕事ではないという点は確かに事実です。けれど介護の仕事を長く続けている方に、この仕事の何が楽しいかということを訊いてみると、真っ先に挙がるのは「ありがとう」と感謝してもらえることの多さですね。
――感謝されるのはどんな時でしょうか?
中井:たとえば左半身麻痺の利用者様が左側にスプーンを落としてしまった場合、左半身は動かないので自分では拾うことができませんが、その時そこにいたスタッフがそれを拾います。
スタッフにとっては、実際にやったのはスプーンを拾ったというただそれだけなのに、利用者様からすれば自分にはできないことをやってもらえたわけなので、ものすごく感謝してもらえるんですね。自分たちにとっては何でもないことをやっただけで感謝を伝えてもらえるということが本当に多いんです。
――巷では介護職の問題点や、大変な部分を耳にする機会が多いですが、そういったエピソードを聞かせていただくと、きちんと魅力のある仕事なのだなと感じます。
中井:大変なことはもちろんあります。給料も基本的には高くありません。一方で、他者からの感謝をこんなにもダイレクトに受け取れる仕事もなかなかありません。
感謝されること、必要とされることがモチベーションになる人にとっては、大変さを上回るだけの幸せがある、働いている実感を持つことができる、良い職場だなと思っています。

副業解禁の時代。「副業介護」を選択肢のひとつに
――最後に、今後、介護の担い手となっていくであろう20~30代の若い世代に向けて、何かメッセージをいただければと思います。
鈴木:働き方改革の一環として、副業が解禁されはじめています。メインの仕事に加えた、もうひとつの仕事を選ぶ際に、その選択肢のひとつとして「副業介護」というものを考えていただけたら嬉しいですね。
――短時間でも携われる介護シェアリングの働き方は、確かに副業との相性も良いような気がします。
鈴木:今後、介護シェアリングがより普及していけば、身近なエリアや自分の地元で暮らすおじいちゃんやおばあちゃんを、副業という形で支えていく選択肢が選びやすくなっていくかと思います。私たちとしても、その後押しをさせていただければ幸いです。
(辺川 銀)