少々、ショッキングなタイトルを持ったこのアルバムと前年リリースの『BL-EP』収録曲から、彼らがインスパイアされた新旧のグルーブミュージックを、彼らとのインタビューに基づき、若干の妄想も込めてピックアップしてみよう。

■ナイル・ロジャース+レッチリのインスパイア系
まず、『NO MORE MUSIC』収録の『90'S TOKYO BOYS』。オカモトコウキ(Gt)の確かな16ビートのカッティングとハマ・オカモト(Ba)の弾きすぎないラインは、ダフト・パンクのコラボレーターとして復活した印象もあるディスコ、ブギーの巨星、ナイル・ロジャースのアーバンなファンクネス、そしてオカモトレイジ(Dr)のヒップホップへの傾倒、どこか哀感漂うオカモトショウ(Vo)の歌メロも相まって、デイヴ・ナヴァロが加入していた時期のレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)フレイバーも漂う。90年代に生まれた彼らが、90年代の音楽を客観的かつリアルに感じていることがよくわかる1曲だ。哀感が持ち味のレッチリの同時期で言えば『NO MORE MUSIC』収録の『SAVE ME』にもそんなムードがある。
■シュガー・ベイブもしくは80sシティポップサウンドのインスパイア系
コウキが書くメロディや彼の歌声も相まって、大先輩、山下達郎や大瀧詠一にも似たテイストの多幸感のあるポップチューンがアルバムやEPに1曲はあるのが最近のOKAMOTO'S。『NO MORE MUSIC』収録の『WENDY』を始め、6thアルバム『OPERA』収録の『ハーフムーン』もスウィートでメロウなグルーヴを堪能できる。ちなみに、大瀧詠一へのもっともダイレクトなリスペクトは5thアルバム『Let It V』収録の『虹』で、あのナイアガラサウンドのアレンジメントを聴くことができる。
■80年代のアーバンポップ、安全地帯、寺尾聰、鈴木茂のインスパイア系
意外なインスパイアでいうとEP『BL-EP』収録の『Phantom(By Lipstick)』も面白い。メランコリックでマイナーのエレクトリックピアノのイントロ、ショウの書くメロディ、抑えめのボーカルに、そこはかとなく寺尾聰の『ルビーの指輪』を想起してしまう。
もちろん、いずれのテイストのボトムにもハマの太いファンクネス溢れるベースや、レイジのヒップホップ経由のシンプルなビートが存在していることが、OKAMOTO'Sの強みであり、ライブで自然と体が動くバンドアンサンブルの強度は4人全員の表現力あってこそ。さらに様々なインスパイア源をイメージすると、このバンドは何倍も味わい深い。そんなOKAMOTO’Sの懐深い音楽性を自身初のホールワンマンライブとなった、10月7日の中野サンプラザ公演『90'S TOKYO BOYS IN HALL』から感じ取ってほしい。
Writer:石角友香
(提供:ヨムミル!Online)