
キャンピングカーが流行っているらしい。
テレビ番組でも時折見かけ、YouTubeにはその紹介や、実際に乗り込んでアウトドアを楽しむ動画がたくさん出てくる。
キャンピングカーで半年間の家族旅行をした友人の話
そんな中、Facebookで、「キャンピングカーの旅を終えた」という友人の投稿を見た。え!いつの間に!と投稿文をよく読むと、半年間に渡って、奥さんと二人のお子さんといっしょに全国各地を回っていたという。世のお父さんたちはなかなかできないぞ、そんなこと。仕事もあるし、子どもの学校もあるし、そもそも奥さんの了解が…。そこで話を聞かせてもらうことに。きっかけこそキャンピングカーだったが、働き方や家族との過ごし方についてとても身になる話だったので、紹介したい。

6歳と0歳(!)を連れて全国各地へ、子連れキャンピングカーの旅。
筆者「投稿を見るまで全然知らなかったですよ、旅してたって」
小緑さん「あまりリア充っぽく見られないよう積極的に投稿はしなかったんです(笑)」
筆者「あーまーなるほど(笑)。半年ってことですが、どんな場所を回ったんですか?」
小緑さん「東北、北海道、北陸、東海、近畿、四国、九州…中国地方だけ都合がつかず行けませんでした」
筆者「半年間、ずっと出ずっぱりで巡っていった?」
小緑さん「家は東京にあるんですけど、2~3週間くらいの間隔で行っては戻ってを繰り返してたんです」
筆者「あ、なるほど!拠点のある国内ならできますね。

小緑さん「寝泊まりもキャンピングカーより外泊が多くて。ビジネスホテルから、ちょっと贅沢なホテルも、あとはゲストハウスやAirbnbを利用して民泊もしてました。車中泊は2割くらいでしたね」
筆者「キャンピングあんまりしてないじゃないですか!」
小緑さん「実はそうなんです。車には一応、テントに手洗い用シャワーやテーブルも付いていたんですが、結局一度も使わず、『車で旅してた』と言った方が正しいかもしれません」
筆者「当初は寝泊まりするつもりだったからキャンピングカーを買ったんですよね?なのになぜ」
小緑さん「長女がまだ0歳だったので、あやしたり、夜泣きのことを考えると、ホテルの方が快適で…」
筆者「0歳!?それで全国回るって、すごい冒険ですよね…?」
小緑さん「結果的にそうなったんですけど、今考えてもそのタイミングしかなかったなぁと思います」

もともと6歳の長男がいる中で、旅を決意したときに長女の誕生が判明。その状況を受けて旅には賛否両論あったというが、「そのタイミングしかなかった」と話す小緑さん。その理由、そしてそもそも旅を決めた背景に何があったのか。
理由は「子どもとべったり過ごす時間をつくりたかった」から
小緑さん「僕は、成長著しい子供の様子を間近で見たいという思いから、18時に帰宅できるように独立しました。その中で、子どもが大人になる前に、24時間ずっとべったりいられる時間をつくりたいなぁと思ってて、それをやるなら息子が小学生になる前の今しかない。と思ったんです」
筆者「キャンピングカーという手段を選んだ理由はなにかあったんですか?」
小緑さん「いろんなことを経験させたいので、移動しつつ宿泊もできるという手段を考えたときに、『これだ!』と思いついて。ブームになっていたことはあとで知りました(笑)」

筆者「そこで長女が生まれることが分かったと」
小緑さん「そうです。さすがに首がすわるまでは待ちましたが、予定通りやろうと」
筆者「赤ちゃんを連れての旅ってことですよね、周りの反対はなかったんですか?」
小緑さん「ありましたよ!でも、タイミングとしてはまさに今で。妻も育休が取れるし、息子も小学生になる前だったので」
筆者「そう言われると今しかない、ですね…。『いつか』にしちゃうと決まってずっとやらないし」
小緑さん「6年前に息子が生まれて独立するときも同じようなことは言われました。
筆者「生後すぐの赤ちゃんを連れて行く訳ですから、小緑さん以上にバイタリティに溢れていると言っていいかも…」

家族と過ごしたいから独立する、ということは合理的でもあるし、一方で「それで養っていけるのか」という不安も出てくるであろう話。きっと誰に対しても同様に勧められることではないとは思う。だからこそ、覚悟が必要であったことは前提の上で、いつでもそこに踏み出せるだけの環境や立場を小緑さんが築いていたことは確かだろう。
半年間、仕事はどうしていたのか。
筆者「息子さんは小学校に上がる前、奥さんは育休、ということは分かりましたが、小緑さん自身の仕事はどうしていたんですか?」
小緑さん「そこは一年くらい前から案件が入らないように調整していました。僕の仕事はプロジェクト単位なのですが、期間がキッチリと決まるよう、クライアントと健全な関係を築けていた面もありますね。たまにメールのやりとりはありましたけど、パソコンを開いてちょっとさわる程度です」
筆者「それって半年間ほぼ仕事しないってことですよね?大丈夫だったんですか、収入面とか…」
小緑さん「そもそも独立してからは、売上目標を達成したら無理に働かず、さっき話した通り家族との時間に充てるようにしていたんです。で、6期目になる年は4ヶ月で達成することができたので、あとはぜんぶその旅に使ったということですね」

筆者「4ヶ月で達成って、すごい!」
小緑さん「ありがたいことに。
「せごどん」「ブラタモリ」を見ながら目的地を決める
筆者「旅そのものの話に戻りますが、全国各地へ行かれたってことで、具体的な場所はどう決めました?」
小緑さん「そこは工夫しましたね。最初の方、北海道の富良野にある富田ファームへ行ったんですよ。花畑がキレイな場所なんですけど、そのときに息子から『お父さん、なんでここに連れて来たの?』と聞かれて、ウッと思って」
筆者「大人からすると有名なところだけど、子どもからすると『どこだここ?』という印象なんですかね」
小緑さん「そうなんです。息子は息子で、保育園にいれば友だちと遊んで楽しい時間は過ごせるんですよね。それを犠牲にして来ているのに、なぜここに連れてこられたのか分からない。それからしばらくはぐずるようになって、家族で来ているんだ、大人だけ喜んでも仕方がない、と思うようになりました」

筆者「それからの工夫、どんな場所へ?」
小緑さん「息子の価値観が広がる場所を意識するようになりましたね。うちの子、『せごどん』と『ブラタモリ』が好きなんですよ。番組の中で出てきた場所に行くと、『わーブラタモリで出てきた場所だ!へーこれがこうなってるんだ!』って喜んだり、神話を学んでから高千穂や伊勢に行ったり、幕末の動乱を学んでから高知や長崎に行ったり、子どもと大人が共通して楽しめる場所へ行くようにしました。オーディブルという、音声で聴く読書アプリが役に立ちましたね」
筆者「しぶい6歳児だ…(笑)」
小緑さん「かもしれませんね(笑)」

小緑さん「息子は人との出会いも楽しんでいたようです。古民家ゲストハウスのお兄さんお姉さんと話していると思ったら、気づけば2時間くらい経ってるんですよ」
筆者「大人と2時間話せる6歳児ってそうそういませんよ!」
小緑さん「そのほか、私のもともとの友だちとも。ありがたいことに、家族で旅をしていると言ったら、全国各地から『話を聞かせてほしい』って声を掛けてもらえるんですよね。その流れでシール工場を見学させてもらえたりなどいろんな経験が実現できました。小さい頃から多様な価値観に触れさせたかったのでよかったなーと思ってます」
筆者「いいですねぇ、それ。

筆者「話を聞いていると楽しそうなことばかりですが、大変なことはなかったんですか?」
小緑さん「ありますね。だいたいどこでも一日に多くて2箇所くらいしか行けないんですよ。あとは、食事、お風呂、宿泊場所、これを確保することで一日が過ぎてしまう」
筆者「あぁー、定住ってそもそも、それらを確保している状態ですもんねぇ」
小緑さん「それが醍醐味でもあるんですけど、おもに長女の世話をしていた妻にはさすがに負担があった場面もありました。0歳児と行く旅はやはり大変だということが分かりました…(笑)」
筆者「いや、想像するだけでも大変ですよ…(笑)」

半年の旅は、家族の「共通言語」を生んだ。
筆者「でも、話を聞いていると、息子さんはもちろん、ご家族全員にとって良い時間になったと感じますね」
小緑さん「はい。一番良かったのは、家族での共通体験、共通言語がたくさんできたこと。家族でテレビも見てても、旅で行った場所が映ると、ここ〇〇だぁーとみんなで盛り上がります。その他にも、あれ、体験した〇〇だ、〇〇産の野菜だ、〇〇さんがいる場所だ、など、旅で得た体験が、会話にたくさん出てくる。旅の体験から、家族全員の好奇心の輪が広がった気がしています」
筆者「すごく良い話です。家族といっしょに過ごすということにあらかじめ理由を求めたりはしないけど、結果としては、言われるように『共通言語をたくさんつくる』ってことなんだなと思います。半年かけて全国各地を回ったら、どこが映っても反応しそうですが(笑)」
小緑さんのような旅を実現することは、誰にでもできることではないかもしれない。冒頭でも書いたように、仕事、子どもの学校、奥さんや旦那さんの理解、少なくともこの3つは解決する必要がある。
(ネルソン水嶋)