清水翔太 アーティストの孤独というテーマをいちばん共感できるラッパーはSALU/インタビュー3
撮影/キムラタカヒロ

――【清水翔太】インタビュー2より

孤独があるからアーティストってカッコいい

――「alone feat. SALU」は、孤独をテーマにしているそうですが、この曲で歌いたかった孤独とは?

翔太:孤独があるからアーティストってカッコいいんだと思うんです。それに負けちゃう人もいるんだけど、孤独を背負い切るというか、俺はそういう気持ちでこの曲を書きました。
だから、“孤独で寂しいんだ、辛い、だけど頑張るよ”みたいなことじゃない。“だからこそ俺はこうなんだ。だから、その強さを歌うんだ”みたいな。そういうアーティストの孤独というテーマをいちばん共感できるラッパーは誰だろうと考えたときに、SALUだなと思ったんです。

――この曲では歌詞に「yao」(八尾市)が出てきますね。

翔太:そこはチャレンジでしたね。やっぱり自分にしか書けないことを書きたいから。アーティストの孤独というテーマで書き始めて、“本当にしんどいときに思い出すのは家族か? いや違う”……“恋人? それは誰でも言える”……“けど、八尾は俺しか言えないな”と思って。それがカッコいいかカッコ悪いかじゃなくて、それをカッコよくできるかがチャレンジ。

――そういうワードセンスは「踊り続けよう」にも見受けられました。<ついてきてほしいもん>の「もん」は翔太くんだから使える語尾だなと。

翔太:あはは(笑)。
「ほしいもん」も最初は違ったんです。もう少し普通の言葉だったんだけど、この曲は生々しい描写も入れてるから、どこかで“てへぺろ”的なニュアンスがないと、キャラとして面白くないなと。だから敢えてそこは「もん」にしたんです。

――「(I'm fine)」で、タイトルをカッコでくくった理由は? 「まずまずです」みたいなニュアンスを字面で表現したかったんですか?

翔太:ざっくり言えば「まあ、一応、体(てい)としてこう言っておきますよ」っていうだけで、本当はそうじゃなかったりしますよ、っていう感じかな。

――そんなふうに表記にも意味を込めるところにこだわりを感じる一方、逆にそういうところが今回の伝わりづらさに繋がるのかな、とも思いました。

翔太:「(I'm fine)」と「Rainbow」が特に歌詞は難解かも。ダブルミーニングどころかトリプルミーニングもあったりするから、これは伝わりきらないだろうなという気がしてる。

清水翔太 アーティストの孤独というテーマをいちばん共感できるラッパーはSALU/インタビュー3
撮影/キムラタカヒロ

――「Rainbow」の歌詞に出てくる「傘」は、1stアルバムの『Umbrella』と掛けてたりするんですか?

翔太:あぁー、なるほど。けど、全然掛かってないです(笑)。たしかに、いろんなところで、『PROUD』以降の今やってることが好きだという話をし過ぎて、SNSとかで「昔のことは好きじゃないんですか」「昔はイヤイヤやってたんですか」っていう受け止め方を多くされるようになってきて。でも、俺は自分で作ったものはどれも好きだし、昔の俺は本当の俺じゃないみたいな気持ちは全然ないんです。そういうことじゃないからってすごく言いたい。
これも「傘」を「Umbrella」とすると、昔の俺は全然ダメなんだ、みたいな意味になっちゃうけど、そういう意図は全然ない。とはいえ、歌詞はすごく難しいと思います。

――じゃあ、僕の「Umbrella」の線は消えたということで(笑)。それ以外の角度でみなさんに曲を考察してもらえれば。

翔太:ぜひ! 「Rainbow」と「(I'm fine)」は、ぜひ考察サイトをつくってほしいですね。

――最後に、今回のアルバムに『WHITE』と名付けた意図を教えてください。

翔太:いくつか意味があるんだけど、まずはピュアという意味です。僕自身のクリエイティビティがピュアなまま世に放たれてるということ。原点回帰のような感覚もあるし、どこが原点とするのかと考えたときにデビュー前の自分がやっていたことに近い気もするから。デビューしてからは、いろんな人が僕に色を付けてきたと思うんです。

――それこそ『COLORS』というアルバムも出してたし。

翔太:そう(笑)。
それがいかに美しい色だとしても、白じゃないのはたしかなわけで。白のまま勝負したいという気持ちはずっとあったし、怖いことでもあるけど、真っ白なまま勝負するっていう感覚がこのアルバムにあるんです。

――他の意味は?

翔太:あとは、それ以外のものが何もないっていう意味での「WHITE」でもあるんです。「なんかよくわかんなーい」で終わっちゃったりせずに、もうちょっと作品と向き合ってもらいたいという望みがあって。向き合ってもらうことがすごく大事だからこそ難解でもいいやと思ったし、そう考えたときに、それ以外何もない真っ白な空間でひとつのものと対峙するような感覚になってほしい。リスナーに真っ白な空間にいるような感覚を持ってほしいっていう思いを込めての『WHITE』でもあるんですよね。

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