
小生、老骨に鞭打って1歳児と暮らしている。
意外な箇所が
この本が届いた日には、運よく午後に短時間ながらひとりの時間を得るチャンスが回ってきた。僥倖だ。さっそく、この本に紹介された48のメソッドから、いまの自分が必要としているストレッチやマッサージをやってみた。
「ずっと下を見ていた日にビリッと効くストレッチ」(64頁)。喉の気道の両脇を2本走ってる「胸鎖乳突筋」。こんなところが凝るのか? 聞いたことがないぞ。
〈両手を重ねて鎖骨をおさえます。
顔は斜め45度を向いて、
あごを上に向けます〉

シンプルだけど、けっこう刺戟がクル。まさか人体のこんな箇所が凝るなんて、いまのいままで知らなかった。
「左右の体のバランスがヘンだと感じたら」(76頁)。
〈あおむけになって片手を上げます。
それを逆の手で〔イラストを省略したので引用者註・上げた手の肘を曲げ、そこを〕引っ張ります。
伸ばしている側の足を逆の足で
引っかけて、さらに伸ばします〉
これは気持ちいい。体液が渋滞していたのだなあ、と、それが少しずつ解消に向かうことによってはじめてわかる。これは保育士さん向けにもいいのではないか?
その直後の短時間仮眠が深かった!
小生、夜は寝つきがいいほうだと思う。けど昼間は、強い眠気を自覚できるほどに午睡を求めるシグナルを体から受け取っているときでさえ、どうしても寝つけない。できるビジネスマンはみんな短時間仮眠を取っているというのにだ。だから自分はできないし、ビジネスマンでもないのか。
それがこの日、いくつかのストレッチを経て、ソファでスムーズに入眠し、20分弱でスッキリ目ざめた。これで小生もビジネスマンの仲間入りである。
これは効く──だけでなくかんたんに自分でできる。ここ大事。
そして症状にピンポイントに対応している。これも大事。
編集センスも快癒の条件
かんたん、とは、そしてピンポイント、とは、どういうことか。
本書の編集姿勢が当方のニーズに合致していたのだ。
そもそも育児に特化した「親用」のボディケア本て、意外にないようなのだ。少なくとも僕は知らない。
大型書店に行けばセルフボディケアの本やムックは汗牛充棟であり、そのなかには有用な情報を載せた良書も多かろうと思われる。けれど該当箇所にたどりつく動線がどうもかったるい。当たり前だが目次は字だらけで自分の症状に直結したイメージ湧きにくいし、といって画像を配した目次は眼がちらちらする。
それが本書はこうだ。 コラム頁を除く全頁が見開き1項目、右の奇数頁に文章が囲まれ、左の偶数頁はイラストでメソッドを紹介している。さっきの「左右の体のバランスがヘンだと感じたら」の向かい、75頁。

右頁右下の
〈頭首肩背腰腕足〉
のアイコン(タブ? タグ?)で黒字になってるところに効くメソッドだとわかる。これだとパラパラめくって視覚的に情報をキャッチできる。
編集方針は造本にも及ぶ。

カヴァーをめくると…

背表紙が貼ってなくて、綴じ糸が露出してる。経費削減かな、と思った小生が間抜けだった。
これだと、たとえ最初の頁であっても、手放しで開いた状態で置ける。

「体の疲れに効く!」と謳う、カラー写真入り大判のストレッチ本やDVDつきボディケアムックを、どうしても買う気がしなかった理由がわかった。柴田書店の料理本もこうしたらいいのに!
ベビーゲートを跨ぐな!
本書では「疲れない体の使い方」「できるだけしないほうがいい動き」も紹介している。
・下にあるものに手を伸ばすときは、逆の足に体重をかける(応用篇・包丁を使うときも、包丁を持ってる手と同じ側の足は半歩うしろに引き、逆側の足に体重をかける)
・床に座ってる状態から立ち上がるときは一度正座して「お辞儀」をすると腰や膝の負担が軽い
・チャイルドシートに子どもを乗せるときは車内に片足を踏み入れる
・スーパー帰りの手荷物は左右ひとつずつ袋に入れ、持っている手の甲が前に来るようにする
・ベビーゲートを跨いで越えない
また「時間があるときのケア」では、セルフボディケアだけでなく、パートナーの体を癒やすためのストレッチやかんたんな指圧のコツを紹介している。子育て中の親、とくにどうしても子どもとの接触時間が長くなりがちな母親は、腰や足がぱんぱんに張っている。ボディケアはおたがい支え合っていく方法のひとつかもしれない。
この記事を書くにあたって、本のタイトルをそのまま流用する以上にいい題が思いつかなかった。著者の斎藤さんは指圧師であると同時に、当『エキレビ!』はじめ多くの媒体で活躍中のライターでもある。
もし斎藤さんが本書の内容のお役立ち記事を自分で書くなら、本書と同じタイトルにしたのではないか。だったらそれがいちばんいい記事タイトルなはずだ!
(千野帽子)