「ミニマリスト」という言葉を聞いたことがある人はいるだろうか。近年耳にする機会が多くなったミニマリストは簡単に言うと、最小限のモノで生活をしている人たちのことだ。最小限といっても貧乏だからモノが買えないというわけではない。今回はそんなミニマリストの概要や実態について紹介する。


ミニマリストとは


ミニマリストって一体なんだ? 最小限のもので暮らす人たち
画像はミニマリストしぶ氏のブログのスクリーンショット

まずは「ミニマリスト」という言葉の意味を理解しておこう。


ミニマリストの概要


無料ウェブ百科事典「コトバンク」では、ミニマリストとは「最小限綱領派と訳す」「持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人」「最小限のことしかしない人。最低限必要なものしか持たない人」といった説明が見られる。

表現こそ異なるが、持ち物をあまり持たず、必要最低限のモノで日常生活を送る人と理解することができる。普段の自身の生活を振り返ってみるとたくさんのモノであふれていると感じるかもしれないが、ミニマリストは自身の持つモノ自体が少ないのである。


ミニマリストはアメリカ発


日本においてもミニマリストとして生活している人が見られるが、このミニマリストという生き方はアメリカから生まれたものと言われている。

そもそもミニマリストという生き方は、ミニマリズムの考えが大きく関係していると考えられる。ミニマリズムとは最小限主義のことであり、主に美術や建築、音楽といった芸術分野において用いられる言葉で、1960年代のアメリカにおいて登場した。ミニマリズムの持つ最小限主義という意味からもミニマリストの生活様式と近いものであることが理解できる。

しかし、ミニマリストという生き方がメジャーなものになったのは比較的最近のことだ。アメリカで「ザ・ミニマリスト」という2人組がミニマリスト的生活を紹介したことがきっかけとなりそのような生活を送る人が増えていった。

ちなみに、このザ・ミニマリストの1人であるライアン・ニコデマスはもともと1,000万円以上の年収があり、モノに囲まれた生活を送っていたが、ミニマリズムを実践した生活を送っている人が幸せな人生を送っていることに気づき自身もミニマリストとしての生活を送るようになったそうだ。

このようにミニマリズムという考えがアメリカ発であり、ザ・ミニマリストによるミニマリストとしての生活もアメリカ発ということもあってか、アメリカにおいてはミニマリスト関連の話題も少なくない。

例えば、アンドリュー・ハイド氏は家を持っておらず、自身の荷物はパンツと靴下を除いて15個しか所有していない。ハイド氏は貧乏というわけではなく、企業のコンサルタントを行うほか、スタートアップ企業の創設者でもある。そういった人物であっても究極的にモノを持たない生活を送っている。

また、自身もミニマリストであるコートニー・カーヴァー氏はプロジェクト333というクローゼットの中身を減らす方法を展開している。
プロジェクトの内容は3カ月間を33のアイテムで過ごすというものだアイテムは服、アクセサリー、ジュエリー、アウターウエア、靴で、部屋着、下着といったものは含まない。ちなみに33のアイテムは3カ月が経過したら見直すことができる。
数を制限することで必然的にあまりものを持たなくなる仕組みになっているプロジェクトだ。


ミニマリストは断捨離から


ミニマリストって一体なんだ? 最小限のもので暮らす人たち
画像出典:Amazon.co.jp
人生を変える断捨離


この記事を読んでいる人の中にはミニマリスト的な生活に憧れている人もいるのではないだろうか。一方で憧れはあるものの何をすればミニマリストになれるのかわからないと悩んでいる人もいるはずだ。

ミニマリストは最小限のモノで暮らしていくことになるので、不要なものは捨てていかなければならない。つまり、断捨離をすることがミニマリストへの第一歩となるのだ。

断捨離とは、やましたひでこ氏によって提唱された考え方であり、不要なものを減らし日常生活における調和をもたらそうとするものだ。

「断(モノを断つ)」「捨(いらないモノを捨てる)」「離(モノへの執着から離れる)」という3つのステップから構成されていて、モノを断ち、捨てることでモノへの執着から離れ、豊かな生活を目指すことを目的とする。

やました氏はヨガにおける断行、捨行、離行に発想を得てこの断捨離という考え方を生み出している。

では、この断捨離を実行するにはどうすればいいのだろうか。
一例としては以下のようなものが挙げられる。

1:断捨離をする場所を決める
2:その場所にあるものをすべて広げる
3:いるものといらないものに分ける
4:捨てると判断したものを処分する

まず、ポイントとなるのはすべてを一気に行おうとしないことだ。一軒家に住んでいる人の場合、一気に断捨離をしようとするとそのモノの多さに圧倒されてしまうし時間もかかる。

そこで、断捨離をする場所を決め、少しずつ実行していることで、毎回の作業量は少なくなるのでとっかかりやすくなる。

場所を決めたら、そこにあるものをすべて出して広げてみよう。クローゼットを断捨離するのであれば、その中にある衣類すべてを取り出す。

広げたら、いるものといらないものにどんどん仕分けていく。この時大きなごみ袋や段ボールなどがあれば便利だ。また、仕分ける際には判断基準を設けることでより機械的に作業を進めることができる。例えば、「好きか嫌いか」「1年以内に使用しているかどうか」などである。

もし、仕分けていく中で判断できないものが出てきたら一度保留するという方法もある。保留したものは時間を少し空けて、あらためて判断する。

断捨離が終わったとしてもそのあとモノを大量に購入してしまっては意味がない。そこで、断捨離後にはルールを作ることをおすすめする。ルールとは例えば「モノを1つ買うなら今持っているものの中から1つ捨てる」などが考えられる。

そして、定期的に断捨離を行うことで、自分がモノをどれくらい購入しているのか、いないのかといったことが理解できるようになるはずだ。

ここで、注意してほしいのが断捨離すること=ミニマリストではないということだ。断捨離はあくまでも不要なものを捨てることで豊かな生活を目指すものであり、最小限のモノで生活することではない。ミニマリストと似ているように思うかもしれないが同じではない。


ミニマリストのメリット・デメリット


モノをあまり持たないミニマリストに対して、身軽な生活を送り人生を楽しんでいてうらやましいと感じている人もいるかもしれない。しかし、ミニマリストとして生活することにはいくつかのデメリットも伴う。そこで、続いてはミニマリストのメリットとデメリットについて紹介する。


まずミニマリストとして生活することのメリットとしては以下のようなものが挙げられる。


 ・掃除が楽
 ・物の管理が楽
 ・無駄遣いが減る
 ・生活にかかる費用が減る
 ・無駄な時間が減る
 ・フットワークが軽くなる


まず、モノがないので掃除が非常に楽になる。また、モノの数によるが自分が持っているモノをすべて把握することもできるので管理も簡単。「あれがない」「これはどこだっけ?」といった事態に陥る可能性が低いのだ。

さらに、買うモノが少なくなるので無駄遣いや生活費を抑えることができる。人によってはフルタイムの仕事をしなくても、週に何日かのアルバイトだけで生活ができるかもしれない。そうなると自分のための時間を確保することができ、日常生活における無駄な時間を排除することもできる。

モノが少ない分、持ち運ぶのも楽なので、フットワークが軽くなるはずだ。荷物がスーツケース1個分で収まる人であれば、いつでも好きなところに行くということも夢ではなくなる。

以上がミニマリストとして生活することのメリットだ。

続いて、デメリットには以下のようなものが挙げられる。


・人を家に招きにくい
・災害時に困る可能性
・モノを捨てて後悔することも
・お金の使い道がなくなる
・神経質になりすぎる恐れ


例えば、友人を自宅に招いたときに飲み物を出すコップがないかもしれないし、一緒にゲームを楽しむこともできないかもしれない。
もちろん自宅以外で友人と遊べばいいだけなのだが、自分の家で遊ぶとなるとつまらなく感じてしまう恐れがある。

モノをあまり持たないとなると、食料などのストックもあまり買わない可能性があるが、災害が起こった際などには食料や日用品が買えなくなる可能性があるので、注意が必要だ。

このほかにも、最小限を目指すあまり何でもかんでも捨ててしまい、捨ててから後悔してしまったり、モノを買うことに対して異常に神経質になったりする可能性もゼロではない。

デメリットに関しては工夫次第でクリアできるものなので、ミニマリストを目指すのであればこれらのデメリットを把握しておこう。


ミニマリストの暮らし


続いては実際にミニマリストがどのような暮らしをしているのか紹介していく。

どんな部屋に住んでいる?


ミニマリストがどんな部屋に住んでいるのか、というのはミニマリストを目指す人のみならず興味があるのではないだろうか。

しかし、当然ではあるがミニマリストといっても全員が全員同じというわけではない。
例えば、


 ・極限まで持たない人
 ・自分の気に入ったものを厳選して持つ人
 ・必要な物はすぐに買う、要らなくなったら捨てる人


などそのタイプはさまざまだ。

そのため、極限まで持たない人の中にはワンルームの部屋に机といすだけという暮らしをしている人もいれば、マンションや一軒家にある程度の家具を持って生活している人もいる。

ミニマリストというとほとんどモノを持たない人というイメージがあるかもしれないし、どうしてもそういった人のほうが目立ってしまう。しかし、人によって「必要最小限の物」は異なるため、一概に同じということはできない。

それでも、各ミニマリストは自分にとっての「必要最小限」を決め、無駄なモノを持たない暮らしを送っている点に関しては共通している。


財布も最小限にできる




ミニマリストの中には持ち物に関しても最小限のモノしか持たない人もいる。
例えば財布。財布というと小銭に各種カード、お札にレシートとパンパンになっている人も少なくないはずだ。

ミニマリストの場合、キャッシュレス決済が中心という人がおり、クレジットカードや各種電子マネー、スマホ決済など現金を持たなくても支払いをすることができるため、そういった場合はカードケースのみで済む。

しかし、すべてのお店がキャッシュレスに対応しているわけではないため、時には現金が必要になることもあるため、最低限の現金は持っておいたほうがいいだろう。

最近では、そういったケースを想定し、カードが複数枚入り小銭やお札を収納できるコンパクトなミニマリスト向けの財布も販売されている。


どんなファッション?



ミニマリストはファッションに関しても最小限を貫く。
例えば、着る服をあらかじめ決めていて同じ服を着るという人もいる。この場合、同じ服を着るので毎日服を選ぶ時間を費やすことがないため効率的でもある。私服を制服のように統一してしまうというわけだ。

また、制服化とまではいかなくても、アイテムの数を限定し、その中で着まわしているというミニマリストもいる。これは先ほど紹介したプロジェクト333と同じ考えだ。

モノをあまり持たないといっても、限られた服の中で組み合わせを考えることでファッションも十分に楽しめるはずだ。


本好きな人でもミニマリストになれる


本が好きで家中が本であふれているという人は、一見するとミニマリストから遠い存在に見えるかもしれない。愛着のある本などはなかなか捨てることができないはずだ。

しかし、本好きの人でもミニマリストになることはできる。しかも持っている本をすべて残したまま。

これを可能にするのが本の自炊だ。自炊とはスキャナーを使って本を電子データ化することで、電子化されたデータはパソコンやスマートフォンで見ることができる。

自宅にあるすべての本を自炊すればミニマリストも夢ではない。

また、自宅に本を増やさないために本を購入するのではなく、電子書籍を購入するのも一つの方法だろう。

技術の発展によって、本好きの人でもミニマリストになることができるのだ。


人気のミニマリストブログ


最後に日本でミニマリストとして活躍する人とその人が運営するブログを紹介する。これからミニマリストを目指したいという人は参考にしてみてほしい。

日本のミニマリストの先駆け:佐々木典士氏




佐々木典士氏は著書「ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ 」を通して日本にミニマリストという存在を浸透させた人物で、自身もミニマリストとして生活を送っている

ブログ
https://minimalism.jp/


主婦兼会社員が実践するミニマリスト生活:おふみ氏


ミニマリストって一体なんだ? 最小限のもので暮らす人たち
画像出典:Amazon.co.jp
ミニマリスト日和


ミニマリスト日和を運営しているおふみ氏は主婦兼会社員としてミニマムな生活を送っている。

おふみ氏のブログではミニマリストとしての生活や断捨離、自身の持ち物など、生活のさまざまな側面を公開している。特にファッションに関しては各シーズンごとに数パターンの着回しコーデを絵で公開しているので、女性は参考になるはずだ。

ブログ
http://mount-hayashi.hatenablog.com/


ものをとことん減らしたミニマリスト:しぶ氏




もともとフリーターだったしぶ氏は、家賃2万円、4畳半の家に暮らすミニマリストだ。

1人暮らしをする際初期費用を抑えるための方法を調べていくうちに、ミニマリストという生き方を知り実践している。また、ミニマリストの魅力を広めるための事業を展開する会社の代表も務めている。

しぶ氏の特徴はそのモノの少なさだ。ファッションに関しては同じ服を複数持っていて、毎日同じパターンの服を着る。また、家の荷物は洗濯機を除けばスーツケース1つに収まるそうだ。究極的にモノを持たないしぶ氏だが、ブログでは定期的に自身の持ち物を公開している。


ブログ
https://sibu2.com/


まとめ


最小限のモノで生活を送るミニマリストだが、その生活は決して特異なものではない。豊かな生活を目指すという点においては、従来と何も変わらない。むしろモノがあふれ、モノを持ちすぎるがゆえに悩みを抱えている人がいる現代においては、1つの選択肢となる生活様式だ。
(Kzy Shibata)
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