
近年、「人工知能」という言葉を耳にする機会が多くなった。人工知能について、詳しく知らない人でも、機会が何かを自動的にやってくれるもの、というくらいの認識は持っているかもしれない。
人工知能とは一体何?

まずは、人工知能が一体なんなのか、ということについて紹介する。人によって作られた知能なの? ロボットとは何が違うの? といった疑問を解消しよう。
人工知能の概要
人工知能とは簡単にいうと、頭のいいコンピューターだ。コンピューターというと、これまでは設計者によってが設定したプログラムに応じて決められた判断や処理をひたすら繰り返すだけのものだった。しかし、人工知能は頭がいいので、判断や処理の過程の中から学習し、予測や判断能力を成長させることができる。
つまり自分で考えて判断することができるコンピューターが人工知能というわけだ。人間が頭を使って学びを得るように、人工知能も学びの中から成長していくことができる。
ただし、この説明はざっくりとしたものである点には注意してほしい。人工知能に関してはその定義がまだはっきりとしておらず、立場や研究者によってその定義が異なる場合もある。総務省が発表している情報通信白書においても「人工知能(AI)について特定の定義を置かず」と書かれており、人工知能に関しては「知的な機械」「知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」といった説明にとどめている。
もしかしたら、AI関連の書籍やインターネットサイトをみていると異なる定義が出てくるかもしれないが、それには定義がはっきりしていないという背景があることを覚えておいてほしい。
人工知能は英語でいうとAI

人工知能という言葉と共に耳にする機会が多いのが「AI」という言葉だ。AIは人工知能を英語で表したもので正式には「Artificial Intelligence」という。Artificial(人工的な) Intelligence(知能)で人工知能というわけだ。
人工知能とロボットとの違い

自分で判断できるコンピューターと聞いて、もしかしたら人工知能のロボットをイメージした人もいるかもしれない。人工知能とロボットは同じものなのだろうか。
この点に関しては考え方が難しいと言える。
例えばロボットが決められた作業をひたすら繰り返すだけのものであれば、ロボットが自ら学んで判断能力や予測能力が成長することはないため、人工知能とロボットは別のものとなる。
しかし、近年ではロボットに人工知能技術が駆使されることによってロボットが状況を判断し、最適な対応をするようになるなど、自ら学習し、成長するようにもなっている。このようなロボットであれば人工知能とは別物ということはできないかもしれない。
従来の決められた作業をこなすロボットと学習し成長する人工知能の違いを述べるのであれば成長するかどうか、という点になるが、今後はロボットとAIが融合していくことでその違いは無くなっていく可能性がある。
人工知能の種類

ひとえに人工知能といっても実は、その機能や目的によっていくつかの種類に分かれている。そこで、続いては人工知能の種類について確認してみよう。
人工知能には以下の通り2つの種類がある。
・特化型人工知能
・汎用型人工知能
特化型人工知能とは、ある目的のもと決められた作業を遂行するのに用いられる人工知能のことだ。特定の分野に関しては、人間と同等かそれ以上の驚異的なパフォーマンスを発揮する。代表的な例としてはプロの棋士と対局し勝利を収めたGoogleの「AlphaGo(アルファ碁)」があげられる。また、近年実用化に向けての研究が進む自動運転技術や画像を認識する技術もなども特化型人工知能に該当する。
一方の汎用型人工知能は、特定の作業に縛られることなく、幅広い分野のさまざまなタスクに対応できるものであり、人工知能は自身の能力を駆使して問題を解決する。
現在行われている人工知能関連の研究の多くは、特化型人工知能に関するものであり、汎用型人工知能に関する研究は特化型に比べるとまだまだだ。また特化型はすでに少しずつ実用化されつつあるが、汎用型の実用化はもう少し先になりそうである。
ちなみに、この特化型人工知能、汎用型人工知能のほかにも「弱いAI」「強いAI」と分類されることもある。
これは人工知能の能力の強弱を示しているのではなく、より人間に近いかどうかという点を示している。
弱いAIは人間のような意識を備えておらず、自ら考えることはできないが、強いAIは人間のような意識を持っていて、人間がこなすように仕事をこなすことができる。
つまり、先ほど紹介した特化型人工知能が弱いAI、汎用型人工知能が強いAIに近いというイメージだ。
人工知能がもたらす未来

人工知能に注目が集まるようになって議論が起こっているのが、人工知能が人間にどのような影響を及ぼすのか、という点だ。そこで、続いては人工知能が人間に与える影響について確認してみよう。
AIが人類を超えるシンギュラリティ
「人工知能は人間を超えるか」という本があるように、人工知能によって未来がどうなるのか、人工知能が人間の能力を上回ってしまうのではないか、という点は多くの人の関心事ではないだろうか。
この点に関しては「シンギュラリティ」という言葉が用いられている。シンギュラリティとは日本語にすると「技術的特異点」であり、研究家で発明家のレイ・カーツによって発表された概念だ。これは、簡単にいうとAIが人間を超えるということであり、2045年頃にはそのような時が訪れるとされている。
シンギュラリティが訪れると、人工知能は人間以上の知性を手に入れることとなり、それまで二限では答えることのできなかった問題を人工知能が解決するほか、人間以上の発想力を備えることになると考えられる。
カーツはシンギュラリティによって後戻りできないくらいに人間の生活が変わっていくとしてしている。
人間の仕事はどうなる?

シンギュラリティの訪れや汎用型人工知能が登場することによって予想されるのが、人間の仕事を人工知能が行うようになることだ。
人間の仕事が人工知能に奪われる、と考えている人もいるかもしれないが、実際のところはどうなのだろうか?
野村総合研究所は2015年にオックスフォード大学の研究者らとともに行った共同研究の結果を発表している。この研究は、人間の仕事が人工知能などに代替される確率を明らかにするものだ。
この結果によると、日本の労働人口の約49%が従事している職業が人工知能などによって代替される可能性があるとされている。
では、代替される職業とはどのようなものなのだろうか。
これはひとえに断言することはできないが、例えば、定型的な仕事、コミュニケーションが発生しない仕事、創造性の低い仕事などがあげられる。具体的には事務職や銀行の窓口係、運転士、警備員、製造業、カスタマーサポートなどだ。また、弁護士やホワイトカラーの仕事も代替されるとも言われている。
逆に代替される可能性が低いとされるのが、芸術家などのアーティストや交渉術が求められる仕事、コンサルティング、インテリアデザイナー、雑誌編集者、外科医などだ。
ここまで読んで、仕事選びに悩んでいる人もいるかもしれないが、人工知能に代替される可能性があるというだけで仕事を選んでいると、社会はめちゃくちゃになる。例えばみんながアーティストになったとしても需要があるわけでもない。
実際には人工知能をうまく活用しながら、人間が得意な部分は人間が行い、苦手な部分は人工知能に任せるといった形で仕事に取り組み、より生産性を高めていくというのが現実的なところではないのだろうか。
ちなみに、大手広告代理店の博報堂の社内組織である生活総合研究所では、未来を予測した記事やレポートを参考に「未来年表」という未来の出来事を示した年表を公開している。
これによると、2025年にはスポーツの審判を人工知能がこなすようになること、2030年には人工知能が自然な会話ができるようになること、2045年には人工知能が知的労働をするようになるなど、さまざまな未来が予測されている。
実際にどうなるかはその時代が訪れてみなければわからないが、このような未来になる可能性も十分にあるのだ。
人工知能の歴史は意外と古い

人工知能というと、つい最近出てきた言葉のように感じるかもしれないが、実は世界で初めて人工知能という言葉が出てきたのは1956年と60年以上も前のことだ。
日本においても人工知能学会という組織があり、学会自体は1986年に設立されさまざまな研究論文をまとめた学会誌も1990年代の時点ですでに出版されている。
日本でも数多くの研究が行われており、関連論文も数多くあるなど、実はその歴史はそれほど浅くはないのだ。
人工知能の導入事例
人工知能に関する研究がたくさん行われていることもあり、すでに人工知能を用いたサービスなども提供されている。ここではその導入事例を紹介する。英会話ができるナンナ
オンライン辞書などでおなじみのweblioでは「AI英会話ナンナ」を運営してる。これは人工知能と英会話をすることができるサービスで、人工知能が利用者の英語レベルに応じて会話をしてくれる。
AI英会話アプリ「TerraTalk」
ジョイズ株式会社が運営しているAI英会話アプリ「TerraTalk」は英会話アシスタントとして、人工知能との会話を通してスピーキング能力を磨くことができる。人工知能によって発音や表現を分析することで、利用者の苦手な分野などを特定することが可能だ。このアプリは、山梨県の県立高校の総合学習の授業に導入されている。
りんな
日本マイクロソフトが開発したサービスであり、女子高生のりんなと会話ができるというもの。同サービスはLINEのほかTwitterなどでも利用することができる。
ロボットが俳優として映画に主演
人工知能を搭載したロボットを主演に起用する映画がアメリカで製作される。演技法を人工知能に学習させるという。
AGENT_TRAVIS
人工知能とビッグデータを駆使して、おすすめの映画を紹介してくれるサービス。利用者はTwitterのアカウントを入力すると、人工知能が分析を行い、数秒でオススメの映画が提示される。
コンビニの出店判断を行う人工知能
大手コンビニエンスストアのファミリーマートは、福岡県のデータ分析に関するスタートアップ企業「グルーヴノーツ」が提供する人工知能サービスによって新店舗の出店可否を判断する。これは、出店を考えている地域の人口や小売店の出店状況などのデータを分析し、売上高を予測するというもの。
このように、すでに人工知能はさまざまな場面で実用化されている。今後研究が進むことで私たちの身近なところでも多くの人工知能が実用化されていくだろう。
まとめ
今回は、人工知能についてその概要や人間に与える影響などについて紹介してきた。人工知能は人間にとっての脅威だと考えている人もいるかもしれないが、うまく使いこなすことで、今まで以上に生産性を高めることもできるはずだ。そうなれば、余暇時間が生まれ、今まで以上に豊かな生活を送ることができるようになるかもしれない。