Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

“僕たちAqua Timezは2018年の活動をもって解散する道を選びました”(太志/Vo)

2018年5月8日。Aqua Timezがバンドの解散を発表した。
4月25日に8枚目のオリジナルアルバム『二重螺旋のまさゆめ』をリリースし、そのアルバムを引っさげてのツアー『Present is a Present tour 2018』の初日を目前に控えてのことだった。

新しいアルバムがリリースされて、ツアーがいよいよ始まるという時期は、ファンにとって一番ワクワクする瞬間のはずだ。あの曲はどんな風に聴かせてくれるんだろう――そんな期待に胸を膨らませていたところへのこの報告は、ショックも大きかったに違いない。

ただ、ラストライブとなった『Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」』を観終えた今、そして15年の彼らの活動のほんの一端でしかないけれど、取材という形で関わらせてもらい、そこで感じた彼らの人柄を省みると、あのタイミングしかなかったのかなとも思う。ここではAqua Timezのこれまでの歴史を振り返りつつ、11月18日に横浜アリーナで開催されたラストライブの模様をレポートしたいと思う。

「決意の朝に」「千の夜をこえて」数々のヒット曲を送り出す


Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

太志とOKP-STAR(Ba.)が出会い、そこから大介(G.)、mayuko(key.)らが合流して2003年に結成。2005年にミニアルバム『空いっぱいに奏でる祈り』でインディーズデビューを果たし、2006年、メジャー1stシングル『決意の朝に』のリリースと同時に、サポートメンバーだったTASSHI(Dr.)が正式加入して、現在の形となった。楽曲としては、『空いっぱいに奏でる祈り』に収録されていた「等身大のラブソング」が注目され、当時、インディーズ作品としては異例のオリコンウィークリーランキングで1位を獲得。続く「決意の朝に」、「千の夜をこえて」(2006年リリース/2ndシングル)とヒットを飛ばし、その年のおみそかには、『第57回NHK紅白歌合戦』に初出場した。2008年にはその後のAqua Timezの代名詞的存在となる、ドラマ『ごくせん 第3シリーズ』の主題歌としても注目された『虹』をリリース。以降もコンスタントにリリースとライブを重ね、唯一無二のロックバンドとして、15年の日々を駆け抜けた。

そんな彼らの最後を飾るライブは“last dance”と名付けられ、バンド史上、ワンマンでは最大規模となった横浜アリーナで開催された。最後に彼らの夢のひとつでもあったアリーナ会場でのライブが出来たことは嬉しくもあり、言い方が難しいのだが、バンドの絶頂期ではなく、最後に最大動員を記録できるくらい、彼らが多くの人たちの中で愛され続けてきたということが誇らしくもなった。


“ここにいる全員”で作り上げるラストライブ


Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

ステージ背面の大型ビジョンが5つに分割されるとその間から、OKP-STAR、大介、mayuko、TASSHIの4人が現れる。あとのMCで暴露されるのだが、この時点でOKP-STARとmayukoはすでに泣いていたらしい。そして最後に太志がポップアップで登場すると、「OKPとここまで来た、大ちゃんとここまで来た、mayukoとここまで来た、TASSHIとここまで来た、みんなで来た!」とラップを刻み、1曲目は『空いっぱいに奏でる祈り』に収録されている「上昇気流」からスタート。デビュー前から演奏されたきたアップテンポな楽曲で明るい幕開けとなる。

「みんながAqua Timezっていう気持ちでここを作り上げたい。ここにいる全員で作り上げましょう」(太志)

そんなMCを挟みながら、前半は彼らのエポック・メイキングとなったシングル曲を中心にプレイ。最初は太志も言っていたように緊張感が張り詰めていたような会場も、1曲積み上げるごとにこれまで彼らが行ってきたライブの感覚を取り戻すように、いつものメンバーと観客との一体感が半端なくあるAqua Timezらしい空間が出来上がって行く。「みんなに歌います。一人ひとりに」(太志)と言って歌われた、5曲目「生きて」。この頃にはメンバーの表情にも笑顔が見え、観客も真っ直ぐなメッセージソングをしっかり受け止め、手拍子で応えていた。

「下手くそでも歌っていいって思えたし、下手くそでも生きて行った方がいいってことはAqua Timezの活動の中で教わりました」「音楽って聴いてくれる人がいないとなんでもないものになってしまうけど、みんながいたからAqua Timezの音楽は報われた。だからそういう今までの曲を一曲ずつ丁寧にやって行きたいと思います」(太志)

明け方近くの薄青い空をイメージさせるような、シンプルな青い照明がステージを照らす中で、柔らかく語りかけるように歌われた「千の夜をこえて」、ステージ背面の大型ビジョンに歌詞を投影しがなら、その歌の世界を表現した「LOST PARADE」など、1曲1曲、その曲に込めた想いを演出も交えて“丁寧に”伝える。

そして、デビューからこれまでの日々を振り返るダイジェスト映像のあと、ビジョンに“back to 2005”という文字が映し出されると、アリーナ席後方の小さなステージにメンバーが登場。
歌うのは「等身大のラブソング」だ。Aqua Timezの名を世に大きく広めた楽曲であり、多くの人がこの曲で彼らとの出会いを果たしてであろう大切な1曲。メンバー同士、それを囲む観客がすごく近い距離で、Aqua Timezがこれまで守ってきた聴いてくれる人とおなじ目線で歌い続けるという姿勢が目でも確認できるような場面でもあった。歌い終えると、太志は笑顔で「ホントに2005年から今日まで“強くなれる”気がしました!」と言った。サブステージではもう1曲、「Aqua Timezとファンがお互いに支えあって行くという曲です」(太志)と紹介された「ヒナユメ」も披露し、演奏を終えたメンバーは客席の間を歩いて再びメインステージへ。この日のライブも折り返しを過ぎていた。

「俺たちは時を止めることはできないけど、一緒に生きたっていう証は残せる」


Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

ライブ開始前の気合い入れの時点でOKPが泣き、mayukoももらい泣きして始まる前にバタバタしてしまったこと、解散する日に太志がTwitterを始めたこと、OKPが中学に入るまでお母さんと一緒にお風呂に入っていたことなど、5人で会話をしながらのいつもの和気あいあいとしたMCも行う。最後だからと言って過剰に煽ったりしないのも彼ららしい。そこから、「星の見えない夜」「一瞬の塵」「きらきら」のメドレーに、アウトロでメンバーそれぞれのソロプレイも見せた「Fly Fish」、観客がタオルを振りまくった「自転車」など、アグレッシブな楽曲を畳み掛ける。「because you are you」ではメンバーと観客が一緒になって何度も“I love you”“because you are you”のフレーズを繰り返す。この日だけでなく、これまで何度となく観てきたAqua Timezのライブで感じていたことだが、観客の発する熱量がとにかく高い。太志がライブ冒頭に話していた“ここにいる全員で作り上げましょう”という言葉が実現されているのを目の当たりにする。

一瞬、会場が暗転し、この場所に1万人以上の人がいるの? という静けさのあと、太志の歌声から始まった「last dance」。
今回のライブタイトルでもあり、事実上、彼らのラストアルバムとなった『二重螺旋のまさゆめ』の最後を飾った曲。ビジョンには5人が想い込めてこの曲をプレイする姿が映し出される。まだこんなに素敵な曲が書けるのに、終わりにしなくちゃいけないの? というどうしようもない想いがこみ上げてしまった。
Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

「俺たちは時を止めることはできないけど、一緒に生きたっていう証は残せるから。一緒に残したいって思いました」

太志がこう観客に語りかけると、ステージ全体が星空になったような演出の中、本編ラストは「銀河鉄道の夜」。先ほどまであんなに大きな声で叫び、踊っていた観客たちがその動きをピタッと止め、食い入るようにステージを見つめている。演奏を終えると、太志が短く「ありがとう」とだけ言い、メンバーは静かにステージを去った。

「最後思いっきり明るい虹をかけましょう」


Aqua Timez、15年間の活動に幕を閉じた“ラストライブ”を振り返る
Photo by 折田琢矢、アナスタシア

アンコールに応え、グッズのTシャツに着替えたメンバーが笑顔でステージに戻って来る。恒例の観客との記念写真も済ませ、「しおり」から再開。歌う前に太志が「みんなにサビを歌ってもらいたいな」と言っていただけに、サビでは大合唱が起る。

ここでメンバー紹介を兼ねて、一人ひとりが今の想いを語る。OKP-STARは「まさかアリーナに来れると思っていなかった」と、最後にたくさんの人が来てくれたことへの感謝を伝える。大介は実は「小さな掌」を演奏した際、制作していた当時のこと思い出して泣きそうになっていたことなどを明かす。
mayukoはその大介の話に涙腺が崩壊してしまい、泣きながらデビュー前の辛かった話などをしながら、「今は幸せだなと思います」と話す。ここまで淡々と話してきたTASSHIも「ごめん、急に来た」と、涙をこらえながら「今日は一つの終わりであるけど、一つの始まりだと思う」と語った。そして最後の太志は「俺は泣くと歌えなくなるの歌わせてください」と言い、「真夜中のオーケストラ」を歌う。

「最後のアルバムで伝えたかったことは、この曲に詰まっているかなって思います」(太志)

ラストは「over and over」を披露。“音楽を聴こう歌を歌おう 思ったよりこの星は淋しくないはず”と歌いきり、メンバーはステージをあとにした。が、誰もが思ったはず、まだあの曲を今日、聴けていないと。再びの、本気のアンコールに呼ばれ、ステージに戻って来た太志は「Aqua Timez、やり抜きます」と宣言。「決意の朝に」を歌う。ところどころ声が震える場面もあったが、最後まで渾身の歌を届け、「みんなに会えて良かったです。最後の『決意の朝』でした」と、締めた。続いて、ファンへの想いが詰め込まれた「手紙返信」。涙を堪えながら歌い演奏する5人の姿に、観客から大きな拍手が送られた。


「またどこかで、元気な顔で会えるように、最後思いっきり明るい虹をかけましょう」(太志)

ラストライブのラストは「虹」。彼らのヒット曲のひとつでもあるが、やっぱりAqua Timezは涙より笑顔が似合うバンドでもある。思い切り明るいこの曲が最後になることを誰もが望んでいたようにも思う。メンバーも観客も涙を流してはいても笑顔だ。涙を流したくなるような悲しい、辛いときでも、Aqua Timezの曲がそばにあれば笑顔になれる。そのことを強く感じさせてくれる最後だった。

私の知っているAqua Timezのメンバーはいつもお互いを敬いあっていた。作詞・作曲は太志ではあったが、曲の話を聞くとほかの4人もしっかりとしたその曲に対する想いを持っていて、Aqua Timezへの強い愛情が感じられた。そんな5人だからこそ、終わりを決めたとき、自分たちと同じようにAqua Timezを愛するファンたちと一緒に、想いを共有し、Aqua Timezを終わりにすべきだと思ったのではないのだろうか。最後までみんなのAqua Timezであることを全うしてくれたメンバーに感謝し、またどこかで、元気な顔で会える日を願っている。

取材・文/瀧本幸恵

<セットリスト>
Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」
1. 上昇気流
2. MASK
3. ALONES
4. Velonica
5. 生きて
6. つぼみ
7. 千の夜をこえて
8. 歩み
9. LOST PARADE
10. カルペ・ディエム
11. 等身大のラブソング
12. ヒナユメ
13. 小さな掌
14. メドレー(星の見えない夜 ~ 一瞬の塵 ~ きらきら)
15. Fly Fish
16. 自転車
17. because you are you
18. last dance
19. 銀河鉄道の夜
En-1. しおり
En-2. 真夜中のオーケストラ
En-3. over and over
W-En-1. 決意の朝に
W-En-2. 手紙返信
W-En-3. 虹

リリース情報


Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」
Blu-ray/DVD/CD
2019年3月27日(水)リリース決定

・Blu-ray  ESXL-168  ¥9,800(tax in)※総再生時間約5時間
・DVD[2枚組]  ESBL-2558~59  ¥8,800(tax in) ※総再生時間約5時間
・CD[3枚組]  ESCL-5210~12 ¥4,800(tax in) ※オールカラーフォトブックレット付
※各初回仕様はPlayPASS対応。スマホでも楽しめる。

Aqua Timez official web site


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