
5月2日(木)、『hide Memorial Day 2019~春に会いましょう~』が開催され、会場のCLUB CITTA'には、「献花式」「hide FILM ALIVE!」に3000名のファンが集まった。また、hideが眠る三浦霊園には4000人のファンが訪れ、墓前には多くの花が手向けられた。
1998年のこの日、日本のロックシーンに多大なる影響を与えたミュージシャンhide(X JAPAN、hide with Spread Beaver、zilch)の突然の訃報に、日本中が大きな衝撃に包まれ、葬儀が行われた築地本願寺には5万人のファンが訪れ社会現象ともなった。ファン同士が集うことのできる場所として、開催が続けられてきた『hide Memorial Day』。今年で21年目を迎え、日本のみならず海外からも世代を超えた多くのファンが集まり、hideへの想いを馳せながら、それぞれの時間を過ごした。
毎年、hideをより身近に感じてもらえるようにと趣向を凝らし開催されるこのイベント。今年はファンが花を手向ける「献花式」と、「hide FILM ALIVE!」と題したhideの軌跡とソロライブの醍醐味を体感できる特別編集映像によるフィルムライブが行われた。



献花式開始前の会場では、祭壇を前に関係者による法要が行われ、hideマネジメント事務所(株)ヘッドワックスオーガナイゼーション 代表取締役 松本裕士が挨拶。献花式を待つファン達と共に1分間の黙祷を行った。
会場内のステージ中央に飾られたのは、hideの愛車『(ジャガー)ダイムラー ダブル シックス』。この車はhide自らが注文し、職人の手作業によって作られたもの。通常この車種のカラーはグリーンとされているが、hideのこだわりからブラックカラーが塗装された特注品で、その後、生産が中止になったことから歴史的にも貴重な1台だ。それを囲むようにhideが実際に着用してきた、X初期から年代を追った彩り鮮やかな数々の衣装や、愛器のギター・コレクションが特別展示され、春を思わせる華やかな花に囲まれた花畑のような祭壇と献花台が設けられた。



ステージ上に設置された大型スクリーンには、様々な表情をみせる約100枚にも及ぶhideの写真やヒストリー映像がスライドショーとして上映され、来場者はスクリーンの映像に映る衣装やギターたちを実際に目の前にしながら祭壇に花を次々と手向けていった。
献花会場の中央には、永眠から20年を迎えた昨年から、最高最強の「音楽」を作るために妥協を許さず、「音」こだわり続けたhideの想いを形にすべく、1年間の開発期間を経てついに完成した『VDSRスピーカー』が初お披露目され、ここから発信するサウンドをBGMに献花式を行われた。表面がスケルトンの筒型スピーカー内には、hideが実際に愛用していた「衣装」や「パソコン」など遺品の一部を収めたキューブ型のオブジェが設置されており、多くのファンがhideの体温を間近に感じとろうと、涙ながらに熱心に食い入るように見つめていた。





チケットが完全SOLD OUTとなった第二部の「hide FILM ALIVE!」は、1964年に生まれたhideの人生を振り返るヒストリー映像からスタート。約120分にもおよぶこの作品は、ミュージシャンhideの活動を年代順に追体験できるように、イベントのために新たに編集された特別映像で、音響や照明も実際のコンサートと同じ迫力で展開。会場に集まった観客は実際のライブを観ているかのように、身体を動かし、ステージ上を縦横無事に走りまわるhideの姿に大きな歓声を上げていた。
歴代のメモリアルイベントを映像で振り返りながらhideへのメッセージが流れ、松本がステージに登場し、いつも支えてくれるファンへ感謝の言葉を伝えた。
続いて松本の呼び込みで、hide楽曲の共同プロデューサーでありhide with Spread BeaverのメンバーであるI.N.A.が登場。さらに松本の「X JAPANのPATAさんって今日、来られていませんでしたっけ?」という呼び込みで、アコースティックギターを持ったX JAPANのギタリストであり盟友のPATAがサプライズゲストとして登場! hideのヴォーカルと共に、「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」を披露した。
この音源は、2018年に全国で上映されたドキュメンタリー映画『HUURRY GO ROUND』のI.N.A.のインタビュー撮影で、「HURRY GOROUND」のデモ音源が初公開された際、監督から「この音源を映画に使用したい」と涙ながらに切望されたものの、あくまでもデモ音源であるため作品にすることは不可能と判断。改めてデモ音源データを見直した際に奇跡的に発見されたもの。20年間、誰にも聴かれることなく眠っていたhideの未発表ヴォーカル音源は急遽映画の主題歌となり、同時期に制作が進められていた10組のアーティストが参加したトリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』にも収録された。


hideが導いてくれた偶然は必然となり、このヴォーカルトラックは2018年に開催された『LUNATIC FEST.2018』でYOSHIKIのピアノ演奏と共演。
続いて、1996年当時hideに見出されたバンドZEPPET STORE、TRANSTIC NERVE(現defspiral)、SHAME(現SPEED OF LIGHTS)より木村世治、TAKA、CUTTが登場。会場に集まった約1500名のオーディエンスと共にhideの名曲をアコースティックライブで熱唱。最後の曲「TELL ME」では、再び松本に呼び込まれたPATAが突如登場。楽器を持たずに登場したPATAはステージに飾られていたhideが実際に使用していたギターFERNANDES MG-X 通称“PAINT”を手に取った。hide自らペイントを施したこのギターはhideの代表的なギターで、ステージで演奏されたのは94年以来、なんと25年ぶり。客席からは大歓声が上がった。「いずれこういう時が来るかもしれない」と、継続的にメンテナンスされていたこのギターを通して、hideの想いとPATAの久しぶりの共演が実現した。献花式から10時間におよぶ『hide Memorial Day 2019~春に会いましょう~』は幕を閉じた。


なおこの日、1998年、当時hideが発足したファンクラブ“JETS”が、hideを愛する方々のコミュニティーとして再度活動を開始することも発表された。永眠から21年経った今もなお、hideのストーリーは色あせることなく、形を変えながら、現在進行形として脈々と語り継がれている。
※写真提供:HEADWAX ORGANIZATION CO., LTD. / photo by Hitomi Katada (nonfix creative)
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