the pillows「アウイェー」歌いすぎ問題を調査 最も多い楽曲の登場数は21回
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何十年にもわたってバンド活動を続けるのは簡単なことではない。「バンドは水物」との言葉もある通り、いくつかのバンドは数年、数十年経つと休止してしまったり、残念ながら解散してしまったりするケースもある。


そんななか、今年めでたく結成30周年を迎えたバンドがある。3人組のオルタナティヴ・ロックバンドthe pillowsである。

the pillowsといえば、アニメ「SKET DANCE」で登場した楽曲「Funny Bunny」や、「フリクリ」とのコラボなどで知られるベテランロックバンドだが、今回はそんなthe pillowsについて、知る人ぞ知る問題……そう「アウイェー問題」を取り上げたい。

アウイェー問題とは、その名の通り「the pillows、アウイェーと歌いすぎではないのか」という問いであり、その疑問の根深さたるや、Googleで「アウイェー」と検索すると結果がほぼすべてthe pillowsに関する記事で埋まるほどである。

というわけで音楽や映画について数字で見ていく本連載、今回はthe pillows結成30周年を記念して、このアウイェー問題を調査していきたいと思う。

なお、当初はthe pillowsのすべての楽曲を調査対象としたかったのだが、さすがに30年間活動しているバンドとなると楽曲の数が膨大すぎて、終わりがまったく見えない作業になってしまった。ゆえに、今回はベスト盤「Fool on the planet」「Once upon time in the pillows」「Rock stock & too smoking the pillows」収録曲とこれまでのシングル曲、計60曲を対象として、この長年ファンの間で語られてきたアウイェー問題に立ち向かっていければと思う。

the pillows、どれくらいアウイェーを歌っているのか


まずは、今回の調査対象とした全60曲について「アウイェーを含めた『イェー』『ウーウー』『イェイエー』といったコーラスがどれくらい入っているのか」を見てみよう。文字数の関係上、こういったコーラスの歌唱をまとめて以下では「アウイェーする」という言葉で表現させていただきたい。

併せて、計測方法としては以下の方法を取っている。

・息継ぎまでは1回とカウントする
・歌詞の語尾を伸ばすもの(「行こーおーぉー」のような歌い方)はコーラスではなく歌詞の一部とみなし、計測対象外とする
・the pillowsのボーカル・山中さわおが歌唱しているものに限る

では、結果はどうだろうか。
the pillows「アウイェー」歌いすぎ問題を調査 最も多い楽曲の登場数は21回
the pillows、どれくらいアウイェーしているのか(C)エキサイト

なんらかの形でアウイェーしている:40.4%
まったくアウイェーしていない:59.6%

「なんらかの形でアウイェーしている」楽曲は40%ほど。数としてはあまり多くなく、期待に反して「the pillowsはそこまでアウイェーしていない」という事実が浮き彫りとなっている。


今回調査を通じて知った事実であるが、the pillowsの楽曲ではアウイェーしそうな箇所に、コーラスではなくギターが入っていることも多く、ボーカルと同じぐらいギターが重視されているバンドであることもアウイェー比率を下げた一因といえる。

the pillowsのアウイェーを分類するとどうなるのか


次はこのアウイェーを細かく分類してみよう。今回は大まかにアウイェーを以下の2種類に分けてみた。

・アウイェー系:アウイェーに近いコーラス表現。アウイェーの他「オウイェー」「イェイエー」なども含む
・非アウイェー系:アウイェーからやや遠いコーラス表現。「フゥーウー」「トゥルルル」など

それでは、結果を見てみよう。
the pillows「アウイェー」歌いすぎ問題を調査 最も多い楽曲の登場数は21回
the pillowsアウイェーコーラス分類表(C)エキサイト

<アウイェー系>
アウイェー:53回
イェー / イェイエー:51回
オウイェー:4回

<非アウイェー系>
アー / アァー / アーアーアー:23回
ハ・ハ・ハ / ナ・ナ・ナ:16回
その他(ウーウーウー、フゥー、トゥルルなど):48回

コーラスのうち、最も種類が多かったのは「アウイェー」。流石というべきか、長年ファンの間で議論されてきたコーラスだけのことはある。

特筆すべきは「オウイェー」の少なさだろう。今回の調査曲のなかでは、「オウイェー」とはっきり発音されているケースは非常に少なく、the pillowsの楽曲においては「オウイェー」よりも「アウイェー」の方が圧倒的に優先されていることがこの数字から読み取れる。

非アウイェー系のコーラスは種類が極めて多岐にわたった。特に分類が難しかった楽曲が「Rock stock & too smoking the pillows」収録曲の「サリバンになりたい -Rock Stock Version-」で、こちらはサビのコーラスが「ハ・ハ・ハ」なのか「ア・ア・ア」なのか極めて分類が難しく、いまだに正解はわからない。今回は熟慮の結果「ハ・ハ・ハ」として分類しているが、歌詞などでも明示されていないアウイェーになるため、ぜひこちらは皆さまの耳で直に判別して欲しい1曲だ。


そのほか、調査する中でわかったのは「不意打ちのアウイェー」が多いという傾向である。その傾向が強かったのが21stシングル「その未来は今」や「Once upon a time in the pillows」収録曲の「I know you」などで、いずれも規則性が薄く、不意打ちでアウイェー・非アウイェーが楽しめる楽曲であった。こちらも聴いたことがない方は、ぜひ一度視聴してそのランダムさを体感して欲しい楽曲である。


アウイェーが多い曲ランキング 1位は「NO SELF CONTROL」


最後に「アウイェーが多い曲ランキング」を見てみよう。

今までと異なり、こちらは純粋な「アウイェー」のみを対象とし、「イェイエー」「オウイェー」などの派生型のアウイェーを除外した純度の高いランキングとなっている。
the pillows「アウイェー」歌いすぎ問題を調査 最も多い楽曲の登場数は21回
the pillowsアウイェー数ランキング(C)エキサイト

1位 NO SELF CONTROL:21回
2位 LITTLE BUSTERS:7回
3位 アナザーモーニング、その未来は今:6回
4位 Fool on the planet:5回
5位 Tokyo Bambi:4回
6位 Gazelle city:2回
7位 ノンフィクション、Ride on shooting star:1回

最も多かったのは13rdシングル「NO SELF CONTROL」。こちらはサビがほぼアウイェーのみで構成されている1曲であり、楽曲の見せ場を惜しみなく「アウイェー」に充てた点がほかの追随を許さぬ首位に繋がった。

特筆すべき楽曲は12ndシングル「アナザーモーニング」だろう。こちらは6回と決して多いわけではないものの、楽曲の終了後にささやくような2回のアウイェーがそっと入っており、調査している身としては非常に嬉しくなれる1曲であった。楽曲自体も1998年公開とは思えぬほどの不朽の名曲のため、ぜひこれを機に触れていただければ幸いだ。

また、the pillowsをよく知る方であれば疑問に感じるのが「Fool on the planet」かもしれない。こちらは自然に視聴するとアウイェーが6回楽しめる楽曲になのだが、2回目のアウイェーが限りなくオウイェーに近いアウイェーであったため、厳正なる審査として今回はオウイェーに分類している。


同樣に、27thシングル「Tokyo Bambi」でも「2回目のアウイェーはオウイェーなのではないか?」という葛藤があったのだが、「the pillowsの中では極めてオウイェーに近いかもしれないが、他のバンドならかなりアウイェーに近い歌い方では?」という結論に至り、今回はアウイェーとして分類させていただいた。

個人的に最もおすすめしたいアウイェーがベストアルバム「Fool on the planet」収録の「LITTLE BUSTERS」である。the pillowsはファンのことを通称「BUSTERS」と呼んでいるが、その語源となっている楽曲でもあり、ライブでもかなり演奏頻度の高い1曲となっている。あまりthe pillowsに触れたことがないという方にこそ勧めたい、シンプルなギターとメロディが魅力の代表的なアウイェー曲と言えるだろう。

では、今回の調査はここまでである。9月13日には30周年企画として、the pillowsボーカル・山中さわおが原作の映画「王様になれ」も公開されており、30周年はますます盛り上がりを見せている。映画「王様になれ」にはUNISON SQUARE GARDEN・田淵智也やa flood of circle・佐々木亮介なども出演しているとのことで、the pillowsをあまり知らないという方もチェックするといいかもしれない。the pillows結成30周年、心からおめでとうございます。

■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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