ポルノグラフィティが今年で20周年を迎えた。2019年9月7日、8日には東京ドームで単独公演が行われたり、「ミュージック・サワー」などセンスの光るメニューで話題となったコラボレーションカフェ「喫茶ポルノ」も開催された。
さらに、デビュー20周年記念として唐突に「杵と臼」がグッズとして発売され、ファンにもファン以外にも大きな衝撃が走ったのをご存知の方も多いだろう。
そんな茶目っ気のあるポルノグラフィティは、1999年のデビュー以来、第一線で活躍し続けてきた日本のトップバンドのひとつでもある。「アポロ」「アゲハ蝶」「メリッサ」など多くのヒットソングを持つ彼らだが、いずれも詩的で独特の歌詞には定評があり、ポルノを好きな理由として「歌詞」を挙げるファンも多い。
というわけで今回は、アニバーサリーイヤーを迎え終わったポルノグラフィティについて、彼らの歌詞を分析したい。なお、今回取り上げるのは「ポルノグラフィティ、どこかで何かを探している説」と「ポルノグラフィティ、どこかによく旅立っている説」の2説とし、歌詞がUtatenにて公開されている248曲を対象として調査した。
ポルノグラフィティ、どれくらいどこかで何かを探しているのか
ポルノグラフィティの歌詞に「どこかで何かを探している」フレーズがどれくらいあるのかを見てみたい。
ポルノに限らず「探している」という歌詞はロック・ポップスでよく使われる言葉だが「独特の言い回しが多いポルノの歌詞であれば、かなり珍しいものも探しているのではないか?」というのが今回の調査の主眼である。
では、最初にポルノグラフィティの歌詞のうち、何かを探している曲がどれくらいあるのかを見てみよう。
どこかで何かを探している:13.3%
どこでも何も探していない:86.7%
結果を見ると、意外にもポルノはどこでも何も探していないケースの方が多く、個人的には意外である。今回は他のアーティストとの比較はしていないものの、10%強という数字を見る限りだと少なくとも「圧倒的に何かを探しているバンドではない」と言えそうだ。
では、その数少ない10%と少しの曲のなかで、ポルノは一体何を探しているのだろうか? 次は実際にポルノの歌詞を見て欲しい。
まずは「どこで何かを探している」曲について見てみよう。
目立つところでいけば、この場所で切れない剃刀を探している「ネオメロドラマティック」から、荒みきったCrazy townで何かを探している「Zombies are standing out」、ビルの合間で黄昏を探している「ラビュー・ラビュー」などが挙げられ、場所・探し物の種類ともにかなり多岐に渡っていることが伺える。
正直、調査前は「ここまで多くの曲があれば、内容が被っているものや、何度も同じものを探していたりするのでは?」と予想していたのだが、結果を見る限り、ほとんど探しものは被っておらず、メンバーである岡野昭仁と新藤晴一の豊富な語彙力を実感する結果となった。
特に、見上げた空で虹を探すという「Rainbow」のシンプルな歌詞から、もどかしく立ち往生するやるせない日々で何が大切かを探す詩的な「EXIT」の歌詞まで、曲によって書き分けられているのはさすがである。
では、次に「どこかはわからないが何かを探している」歌詞に絞って見てみよう。曲によってはどこかを判別できる歌詞もなくはないが、今回は場所が明言されていない曲はすべてこちらに含めている。
こちらの歌詞を見てみると、めぐりめぐる君を探している「ROLL」や、シンプルに君を探している「リンク」など、先ほどよりやや君を探している傾向が強いと言えそうだ。
また、よく見ると「敵はどこだ?」という曲では敵を探しており、「ニセ彼女」という曲では彼女を探している。複雑な歌詞もさることながら、タイトルと歌詞がリンクしたストレートな歌詞も多く作られている。
ポルノグラフィティ、どこかに旅立っている曲はどれくらいあるのか
探しものについて見たところで、旅立ちについて見てみよう。
ヒットソング「アゲハ蝶」の<旅人に尋ねてみた>、「愛が呼ぶほうへ」で<旅立つ君をただ黙って送った>といった歌詞が知られているポルノだが、実際そういったヒットソング以外の曲でも「旅立っている」ことは多いのだろうか?
<旅系:12.9%>
旅立ったり旅立つのを見送ったりしている:2.8%
旅人が出てくる:3.6%
その他の旅関連:6.5%
<非旅系:87.1%>
結果を見ると、ポルノはあまり旅立っていなかった。「旅人」「旅立ち」といった歌詞はそこまで出てきているわけではなく、先ほどの「探しもの」と同じく全体の10%強となっており、あまり旅立たないバンドだと言えそうで悲しい限りである。
具体的に旅立っていた曲の例としては<新たな旅立ちにMotorbike>から始まる「ハネウマライダー」、<旅は「未来」という名の終わり無いものだった>というフレーズが印象的な「音のない森」などがあり、以下に旅の過程ごとにまとめてみたのでぜひ参照して欲しい。
■旅の始まり(11曲)
あなたがここにいたら・オレ、天使・キング&クイーン・海月・前夜・ダイヤモンド・旅せよ若人・ナイトトレイン・ハネウマライダー・夕陽の色・メリーゴーランド
■旅の途中(12曲)
wataridori・アゲハ蝶・アニマロッサ・音のない森・俺たちのセレブレーション・今宵、月が見えずとも・旅せよ若人・デザイア・東京ランドスケープ・プリズム・ブレス・むかいあわせ
■旅の終わり(2曲)
ホール・むかいあわせ
■その他(10曲)
AGAIN・Montage・THE DAY・愛が呼ぶほうへ・うたかた・月明りのシルビア・バベルの風・ブレス・真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ・ワールド☆サタデーグラフィティ
最も多いのは旅の途中、反対に最も少ないのは旅の終わりの歌詞という結果になっており、ポルノの「旅はなかなか終わらないもの」という基本的な考え方が透けて見える結果となったと言えそうだ。
今回調査の中で見えてきたのが、メンバーそれぞれに歌詞の傾向の違いがあり、ボーカル・岡野昭仁は「前夜」「夕陽の色」など旅の始まりについての曲、ギター・新藤晴一は「愛が呼ぶほうへ」「THE DAY」など旅人の歌詞が多いという点である。“旅が始まるのは岡野昭仁、旅人なのは新藤晴一”という説はぜひここで提唱していきたい。
今回の調査はここまで。20周年を迎え、今もなお多くの人に愛されているポルノグラフィティ。アニバーサリーイヤーを超えても、ぜひ長く活動を続けていって欲しいと思う。20周年おめでとうございます。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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