でも、ある日ふと「見られている気がする」と感じた瞬間から、私はこの空間に対して違和感を抱くようになった。
高層階の密室で起こる、不自然な“視線”の正体とは。
「お時間いいですか」と管理人に呼び止められたのは、ちょうど仕事を終えて部屋に戻ろうとしていたときだった。
エントランスのモニター室に案内されると、管理人は映像を再生した。
そこに映っていたのは、夜10時過ぎ、私が1人でエレベーターに乗っている映像。
私はスマホをいじりながら下を向いていて、特に異変はない――はずだった。
けれど、画面の隅に“何か”がいた。
私のすぐ後ろ、ほんの数歩後ろに、もう1人の人影。
顔は見えない。服装もはっきりしない。
それでも、そこに誰かが「いた」としか思えない。
私は確かに、あのとき1人だった。
記憶と映像が一致しない。そのことが、何より恐ろしかった。