誰にも言えない“違和感”が積み重なっていく。
きっかけは小さなすれ違いか、思い込みか。
でもある日、私の“プライベート空間”に入り込んだ何かが、静かに警告を告げてきた。

仕事帰り、いつものようにマンションのエントランスを抜け、自室のドアを開けた瞬間、空気に違和感を感じた。
ほんのわずか、誰かが中を歩いた後のような、空気の動き。
一歩踏み入れて、リビングに目をやった瞬間――私は立ち止まった。



いつも棚の端に置いているアロマディフューザーが、なかった。
掃除したわけでもないし、移動させた記憶もない。
棚の上は、ぽっかりと空いていて、不自然な空間だけが残っていた。

“気のせい”という言葉で片付けようとしたけれど、胸の奥がざわざわしていた。
何かがおかしい。明確な証拠はなくても、そう感じた。