いつもと同じ朝。
…のはずなのに、視界に入った“違和感”が私の体を硬直させた。
昨夜、動かした覚えのない荷物。
ついに、“誰かの存在”が痕跡を残した。

目が覚めた瞬間、なんとなく部屋の空気が変わっている気がした。
夜のうちに何かがあったわけじゃない。
でも、ふと視線を移したクローゼットの前で、私は凍りついた。



そこには、普段使っていない黒いキャリーケースがあった。
1週間前に旅行用に出してそのまま置いていたのだが、その位置が“斜めにズレていた”。
昨夜はクローゼットにきちんと平行に置かれていたはず。
私はキャリーに触ってもいない

近づいて見ると、ファスナーの一部がわずかに開いていた。
私は使うとき以外は、必ずファスナーを閉じている。
“誰かが触った”――そうとしか思えなかった。