勇気を出して伝えた“異常”に対し、返ってきたのは意外な言葉だった。
誰かに相談すれば、何かが変わると思っていたのに
私の声は、思った以上にあっけなく流されてしまった。

キャリーケースに残った、誰かの痕跡。
私はそれをスマホで撮影し、管理会社に連絡した。
「防犯上の問題です」と伝え、直接話すために管理室を訪れた。

事情を説明し、画像も見せた。



私は必死だった。誰かに“事実を認めてほしい”という気持ちが、もう限界だった。

管理人はしばらく無言でスマホを見た後、小さくため息をついた。

「うーん…でも、鍵の履歴にも異常ないですしねぇ」
「スマートロックに不具合はありません。気のせいじゃないですか?」

その言葉が突き刺さった。
“気のせい”――一番聞きたくなかった言葉だった。