「私ひとりで全部は無理だよ」
勇気を出して伝えたつもりでした。
でも、夫の返答は――あまりにも軽いものでした。
“俺なりに頑張ってる”
“手伝ってるつもりなんだけど”
その言葉の裏に見えるのは、“当事者”ではないという無関心。
夫婦なのに、どこか噛み合わない。
この違和感は、いつからだったんだろう――?
夜、子どもたちを寝かしつけた後。
Sさんは、思い切って夫に話しかけた。
「ねえ、最近ちょっと限界かも」
「朝も夜も、全部私がやってるって、わかってる?」
夫はソファでテレビを見ながら、視線だけこちらに向けて言った。
「え?でも俺、ゴミ出ししてるし、風呂掃除もやってるよ?」
――確かに、たまにやってる。
でも、それは“気が向いた時”だけ。
こちらが“お願いして初めて動く”ような、受け身の手伝い。
「それは“手伝い”であって、“分担”じゃないよ」
そう言ったSさんの声には、知らずうちに怒りと疲れが混ざっていた。
夫はため息をついて、リモコンの音量を下げた。
「なんでそんなにイライラしてるの?」
「俺だって仕事で疲れてるんだけど」
その言葉を聞いた瞬間、Sさんの中で何かが「カチッ」と音を立てて外れた。
私の毎日は、“休憩なしのフルタイム”なんだけど。
泣く子ども、洗濯物、食器、連絡帳、時間に追われて動きっぱなしの家の中。
それを「疲れてるから無理」と言えるのが、正直羨ましかった。