「なんで私だけが、こんなに頑張ってるの?」
Sさんは、ついに限界を感じていました。

子どもたちの世話、終わらない家事、夫の無関心――
誰かに話したい。でも、愚痴だと思われるのが怖くて、
これまで誰にも言えずに抱えてきた感情。

そんなある夜、思わずかけた実家の母の電話。



時計の針は21時を過ぎていた。
ようやく子どもたちが寝て、部屋に静けさが戻る。
その瞬間、Sさんの中に溜め込んでいた“何か”が、ゆっくりあふれてきた。

無意識にスマホを手に取り、「母」と表示された連絡先をタップしていた。

「…お母さん、今、話してもいい?」
「いいよ、どうしたの?」
「…私、ちょっと疲れちゃったかも…」

最初は涙が出なかった。
でも母の「うん、うん、大丈夫だよ」と静かに返す声を聞いているうちに、
張り詰めていた糸がプツンと切れて、言葉が涙になってあふれてきた。

「誰も助けてくれないの。私、家政婦じゃないのに」
「全部私がやるのが当たり前みたいで…」
「夫は、子どもが泣いててもスマホばっかりで…」

Sさんの言葉に、母は怒りも説教もせず、
ただただ「よく頑張ってるね」と言ってくれた。

“理解される”って、こんなに心が軽くなるんだ。
誰にも言えなかった気持ちを、誰かが受け止めてくれること。
それが、こんなにも救いになるとは思わなかった。