育児に追われながらも、なんとか保育園の送り迎えをこなす日々。
そこにあるのは、ただ子どもを預けて帰るだけのはずの場所。
でも、気づいてしまったのです。
自分だけが、いつも輪の外にいること。
誰も悪くないように見える、けれど
“空気”という名の壁は、思った以上に高かったのです。
「じゃあね〜!またLINEするねー!」
保育園の門前に響く、明るい声と笑い声。
子どもを預けたママたちは、そのまま立ち話で盛り上がっていた。
Aさんは、少し距離を置いた場所で、息子の靴を直していた。
無意識にその輪に背を向けるようにして。
決して嫌われているわけじゃない。
でも“入れてもらってない”のは、なんとなくわかっていた。
Aさんは仕事復帰して1年。
送り迎えはいつもギリギリで、誰かとゆっくり話す余裕もなかった。
でも、最近気づいたのだ。
“たまたま”話せなかったわけじゃなくて、
“最初から入れない空気”がそこにはあったんだと。
「おはようございます」
そう言っても返事は曖昧。
「◯◯ちゃんママって誰?」って目をされたときもあった。
誰が悪いわけじゃない。
でも、“空気”が悪かった。
輪に入れない、じゃなく、“最初から輪の存在に気づいてもらえていない”感覚。
それが、Aさんの中に静かに重く、積もっていった。