でも、それでも諦めたくなくて。
勇気を出して、夫に久しぶりに料理を振る舞った。
返ってきたのは、たったひと言だった。
料理教室で何度も練習したレシピ
“鶏肉のマスタードクリーム煮”を、ついに夫に出す日が来た。
失敗もしたし、焦がした日もあったけど。
やっと「これなら…!」と思えたから、少しだけ期待していた。
「どう?」と聞くと、遼は少し笑って言った。

私の中で何かが弾けた。
「頑張ったね」じゃない。
「美味しいよ」でもない。
“俺のレシピでやった方がいい”って、まるで私の努力を一瞬で踏みつぶすみたいな言葉。
笑顔を浮かべたまま、心の中で叫んでいた。
「は? 教えて“あげる”?…誰も聞いてないんだけど」
でも口に出せない私は、また黙って笑うしかなかった。