「悪気はない」
「ちょっとしたストレス発散」
そうやって、自分を正当化しながら続けていたけれど
目の前の夫は確実に変わっていった。
そして私は、気づきたくない“結果”を目の当たりにする。

ここ最近、遼は明らかに元気がなかった。



以前のように軽やかに料理をすることもなく、
レシピの投稿も止まっていた。

「大丈夫?」と聞いても、「ちょっと疲れてるだけ」と笑う。
でもその笑顔が、あまりにも無理をしていて、見ていられなかった。

ある日、私は遼が見ていたスマホの画面をふと目にした。
そこには、私が書き込んだコメントが表示されていた。

“料理上手って、調子乗りやすいタイプですよね”

“奥さんに料理させないって、家庭の主導権を握りたいだけでは?”

自分の言葉を、遼が真剣な目で見つめている姿に、
胸が締めつけられた。

「ひとつひとつは小さいんだけど…地味にくるんだよね、こういうの」

そう言って、遼は俯いたまま、動かなかった。