そんなある日、私の“書き込み”が現実の形になって、夫の周りを揺らしはじめた。
遼が料理教室を開いてから、しばらくは順調だった。
SNSでも評判はよく、生徒もどんどん増えていた。
そんなある日、事件は起きた。
教室に来ていた生徒のひとりが、スマホを見せながら遼に詰め寄ったという。
遼は、何も言い返せなかったらしい。
そのまま、その日のレッスンは途中で打ち切られた。
夜、帰ってきた遼の目は真っ赤だった。
でも、何も聞いてこなかった。
まるで“何もなかったフリ”をするかのように、静かに風呂へと向かった。
私は、ひとりソファに座っていた。
胸の奥で、「やりすぎた」という言葉が、何度も反響していた。