病室の白いシーツに横たわる夫を見て、私は初めて自分のしたことと向き合った。
謝らなきゃいけない。
言葉にしなければいけない。
でもそれは“全部を壊すこと”でもあった。

遼の容態は落ち着いたものの、医師からはこう言われた。

「ストレス由来の疲労が限界を超えていた。しばらく精神的にも静養が必要です」

私は、もう逃げられないと思った。
このままでは、自分の中の何かが腐ってしまう。

ある日の面会時



その声は、責めるでも怒るでもなく、ただ“知ろうとしている”声だった。

私は、涙をこらえることができなかった。
「……私だった。
匿名で、あなたのことを書いてたの、私。
褒められるあなたを見るたびに、自分がちっぽけに見えて…止まらなかった…」

全部、言った。
言い切ったあと、頭の中が真っ白になった。

遼は、しばらく黙っていた。

そして
静かに目を伏せて言った。

「……そっか」