夫のその一言が、何よりも深く、心に突き刺さった。
関係を壊したのは私。
それを、ようやく“自分の声”として受け止めた日だった。
病院からの帰り道。
私は自分の中の“壊れた部分”を直視しようと、家にあるレシピノートを開いた。
そこには、かつて必死で練習した「鶏肉のマスタードクリーム煮」の文字。
夫に「教えてあげようか」と言われて、
初めて自分の中の何かが壊れた、あの夜の味。
でも、不思議だった。
いま見つめるそのレシピは、あの頃と同じなのに、どこか違って見えた。
私が壊したのは料理じゃない。
彼を信じられなかった、私自身の“自信”だった。