Aが去り、バーには一瞬だけ静けさが戻った。
けれど母は言っていた「まだ全部じゃない」と。
その意味が、数日後にはっきりする。
私が“見てはいけないもの”を見つけたときだった。

あれは、偶然だった。

事務所の整理中、私は母の机の引き出しにあったファイルを何気なく開いた。
そこには、これまでの帳簿コピーやメモと並んでーー見覚えのある画像があった。

私が自室でスマホを使っている姿を、少し遠くから撮ったようなアングル。
スリープ画面には、父との昔のやりとりが表示されていた。



一瞬、息が止まった。