初めて言われたとき、何気ない一言に聞こえた。
でも、それが地獄の始まりだった。
新婚1年目のFさんは、夫の両親と同居中。
築50年の古びた一軒家、そして昭和の価値観を持つ義母。
生活のすべてに「正しいやり方」があり、
“嫁”であるFさんは、それに従うことを求められていた。
洗い方、掃き方、干し方――
「全部、教えてあげる」その言葉の裏には、
“あなたのやり方は間違っている”という無言の圧力があった。
「そこ、まだホコリ残ってるじゃない」
義母の声が背中から飛んできた。
Fさんは黙ってもう一度雑巾を動かした。
朝食の片付けが終わって、掃除機をかけようとした矢先のことだった。
義母は、掃除機よりも雑巾がけを好む。
なぜなら「自分の手で掃除するほうが、家に感謝できるから」らしい。
その価値観を否定することはできない。
でも、毎日、その“やり方”を強要されるのは、正直しんどい。
「新婚生活って…もっと違うものだと思ってた」
結婚して1年。
ようやく夫と落ち着いた生活を始められると思っていた矢先に、
義母の「この家に一緒に住んでほしい」という申し出があった。
夫は「少しの間だから」と言っていた。
“少しの間”のはずが、もう半年以上が過ぎていた。