学校では“明るくて優しい子”。
誰にも迷惑をかけないように。
誰にも嫌われないように。
でも、
誰にも本音を言えなかった。
だから私は…
Tさんには、もう1つの顔がある。
それは、
“裏アカ”の中のTさん。
「親に夢を否定されました」
「スマホ監視されてます」
「“普通”の生活って、何ですか?」
投稿には、顔も名前もない。
でも、そこには確かに自分の声があった。
本当の気持ちを言えるのは、SNSだけ。
現実で出せない涙も、怒りも、怖さも。
全部、このアカウントに置いていく。
いい子の仮面は、裏で泣かないと保てない。
ある日、母にその裏アカがバレた。
きっかけは、
Tさんがアカウントを切り替え忘れて投稿した1つのポエム風ツイートだった。
「母親に“生き方”を握られたままじゃ、心臓止まりそう」
母は、それをプリントアウトしてテーブルに置いていた。
「これ、あんたでしょ?
本当に親を悲しませたいんだね」
怒鳴るでもなく、ただ静かに言われた。
Tさんは言葉を返せなかった。
罪悪感と絶望感だけが、のしかかってきた。