でも現実は、助けを求めるほど、“厄介者”にされていった。
だったら、私が“証拠”になるしかない。
「その手、やめてもらえますか」
その音声には、
はっきりと、Nさんの声が録音されていた。
課長の笑い声。
「え〜? 冗談だよ、怖いな〜」という軽薄な返し。
でも、その“冗談”が何度も重なっていた。
飲み会のあと、無理やりツーショットを撮られたとき。
背中に触れられたあの廊下。
スマホの中に、証拠がいくつも積み重なっていた。
Nさんはそれを、
会社の社内ハラスメント相談室に持ち込んだ。
「自分の言葉で、言っていいですよ」
相談員の女性が優しく促す。
「…やめてって言っても、通じない人なんです。
だから、“聞いてもらうしかない”と思って」
手元のICレコーダーを再生した瞬間
部屋の空気が変わった。