母の部屋にだけ二重鍵がついていた。
しかもそれは、中からも外からもロックできる異常な構造だった。
私はそれを“隠すための鍵”だと思った。

日記を読み返すと、
あるページにだけ赤い線が引かれていた。

「午前3時。今日も音がする」
「彼女の部屋から、何かが“動いている音”がする」



「私はもう、この家で眠れない」
「この音を聞いていると、背骨が冷たくなる」
「彼女は寝ているはずなのにーー音は、止まない」

私は息を止めた。
父が亡くなる1年前の記録だった。